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●ワジール

アジア AD 

 イスラーム諸国で行政の最高責任者を表すアラビア語で,通常「宰相」と訳され,現在では転じて「大臣」を指す。ワジールは元来「補佐」や「重荷を負う者」の意味をもっていたが,これが公的な肩書となったのはアッバース朝に入ってからで,アッバース家運動を推進してきたアブー=サラマが革命軍のホラサーン軍から「ムハンマド家のワジール」という尊称を送られたのが最初である。その後カリフ体制の集権化を図るうえから,ワジールはカリフの単なる補佐役からしだいに代務者の役割を果たすようになり,やがて9世紀末近くなるとほぼ全行政機関の統括者になるとともに,時には各州の総督や税務長官・法官の任命権をも掌握し,カリフに代わって国政の全般を指揮した。10世紀半ば,イスラーム世界に軍事政権が成立してカリフ権が弱体化すると,ワジールもカリフの単なる書記となったが,セルジューク朝時代にはスルタンを補佐する宰相職の意味に復した。オスマン朝のワジール(ウェジール)はセルジューク朝のそれを引き継いだものであったが,14世紀後半になるとこの称号は複数の人物に与えられ,その第一ウェジールに当たる者を大宰相とする制度が生まれた。