●ロケット
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日本語のロケットということばは、英語の rocket をそのまま用いたものであり、英語の rocket はイタリア語の rocchetto に源を発している。イタリア語の rocchetto は“紡錘”という意味で、16世紀のころ、イタリアで盛んに打ち上げられた花火の形が、はた織り機械の紡錘に似ていたところからつけられた呼称である。
【ロケット開発の歴史】ロケットが、いつ、誰によって発明されたかは必ずしも明らかでないが、1230年ごろチンギス=ハンの第3子オゴタイが宋の都市開封を攻撃した際、守備軍が矢の先に黒色火薬を塗りつけた“火箭”という武器をもって攻撃軍を悩ませた記録が残っていて、これがロケットの始まりとみなされている。のちに蒙古軍はこの技術を覚え、元寇の際にわが鎌倉武士を大いに悩ませた様子が「蒙古襲来絵詞」に描写記述されている。
このロケット技術は、インド、アラビアをへて西欧諸国に伝わり、兵器として、また発火信号用や打ち上げ花火として用いられた。上述のロケットの語源もイタリアにおける打ち上げ花火に由来している。兵器としては、イギリスのコングレーブ大佐の改良したものが有名で、ナポレオン戦争のブローニュ港攻撃に戦果をあげた。また、アメリカ独立戦争の際には、イギリスの軍艦からの攻撃に用いられ、その凄まじい状況が現在のアメリカ国歌のなかにも歌われている。
同じころ、日本の佐藤信淵が火薬を用いたロケット推進船を実験した(1809)記録があり、1846年には、イギリスのヘイル技師がロケットにスピン(回転)を与えて姿勢を安定させる術を発明し、アメリカ軍がこれをメキシコ戦争に採用した記録も残っている。しかし、その後は、急速に発達した大砲の技術に押されて、兵器としてのロケットははなはだ影の薄い存在となった。ところが、19世紀末から20世紀初めにかけて、ソヴィエトのツィオルコフスキー、アメリカのゴダードなどが現れ、いずれも孤独な研究のなかから、ロケット独得の推進原理に着目し、これを使えば宇宙飛行も可能となることを発表した。もっとも、彼らの推奨したのは、上述のような火薬を主成分とする固体ロケットではなくして、液体推進薬を用いるロケットであった。いずれにせよ、それ以後は、“宇宙開発”の項で詳述するように、ロケットは宇宙開発の主役をつとめ、その進歩に大きく貢献しながら、今日にいたっている。
【ロケットの推進原理と種類】後述するように、ロケットには多くの種類があるが、推進原理はだいたい同じであるので、代表例として化学ロケット(固体、液体ロケットなど)を取り上げる。
固体ロケット=エンジンも液体ロケット=エンジンも推力発生の原理は同じで、固体あるいは液体推進薬が燃焼して生ずる高温度のガスを、ノズルを通して加速し、勢いよく外部後方に排出する、その作用の反作用として前方への推進力を発生する。その際、作用・反作用の関係は、排出ガスとロケット本体で構成される質点系に対して成り立つもので、外部に空気が存在しても、しなくても、まったく関係がない。このゆえに、ロケットは、周囲にまったく空気の存在しない宇宙空間をも飛行することができる。実は、この推力発生の原理は、ジェット=エンジンの場合もまったく同じであるが、ジェットの場合は、あらかじめ燃料のみを用意し、それを燃焼させるのに必要な酸素(または酸化作用成分)は外部の空気中から採取するので、ジェットは空気の存在しない宇宙空間を飛行することができない。それに反して、ロケットは、あらかじめ燃料とともに酸化作用成分をも用意し携行するので、空気の無い宇宙空間をも構うことなく飛行できる。
さらに、ジェットの場合は、排出ガスの反作用として計算される推力から、外部(すなわち飛行前方)より取り入れる空気の運動量より計算される逆方向の力を差し引いたものが、正味の推進力となる。そのため、プラス推進力の得られるのは、排出ガスの速度が飛行速度よりも大きい場合に限られ、飛行速度のほうが排出ガスの速度よりも大きい場合はマイナスの推力となる。つまり、ジェット機の飛行速度は、最大限、排出ガスの速度に等しいところまでで、それ以上の速度で飛ぶことはできない。それに対して、ロケットにおいては、外部から空気を採取する必要がないので、ジェットにおけるマイナスの要素がなく、排出ガスのある限り、必ずプラスの推進力を発生し、それに応じて、ロケットの飛行速度も、理論上はどこまでも加速される。このことから、たとえば多段式ロケットなどを採用すれば、その飛行速度は、人工衛星の実現可能な第1宇宙速度(秒速7.9km)、地球引力圏を脱出可能な第2宇宙速度(秒速11.7km)を超えることもできる。上記の理由から、現在の技術では、ロケットのみが宇宙飛行に使用される。
次に、上述のような固体および液体推進薬のもつ化学エネルギー源の代わりに原子力エネルギーや電気エネルギーを利用し、またノズルを用いて、ガスを加速排出する流体力学的方法の代わりに電磁的加速手段を用いるロケット推進もある。原子力ロケットや電気推進ロケットなどであるが、いずれも空気の存在を必要とせず、排出ガスのある限り推力を発生し、加速を続ける点は、まったく化学ロケットと同じである。ただし、固体ロケットや液体ロケットが、数 KN から数千 KN にもおよぶ非常に大きな推力を発生しうるのに対して、電気推進ロケットなどでは、単位質量当たりの推力(比推力)は非常に大きな価を出しうるが、発生推力そのものの絶対値は数 N 以下の微小なものであり、また、原子力ロケットは、理論的には化学ロケットと同様の大推力を発生しうるが、安全性などの点で、不安要素を拭い切れない。以上のようなことから、現在、地上からの打ち上げに用いられるロケットは固体ロケットや液体ロケットに限られている。しかし、将来は、比推力の大きい電気推進ロケットなどが惑星間飛行などに用いられるようになることも、十分に期待される。