●労働と日々 ろうどうとひび
BC700
前700年ごろのボイオティアの詩人ヘシオドスの作として,『神統譜』とともに伝えられている叙事詩。作品全体はまとまりがなく,さまざまな要素が混合しているが,だいたい四つの部分に分けられる。第1は,父の遺産をめぐる係争中の兄弟ペルセスへの勧告から始まり,すべての者にとっては生きるためには働くことが必要であると説いている。有名な金・銀・青銅・英雄・鉄の5時代を並べて,理想的な金の時代から堕落した鉄の時代へとむかう,というヘシオドスの強いペシミズムを読み取ることができる。鉄の時代,ヘシオドスの時代には徳義心は失われ,強い鷹は弱い夜鶯を襲う。ここから第2の,この叙事詩の本質的部分に入る。農業の教訓のなかでは,勤勉こそが人生における成功のもとであることが教えられている。農業に関して,適当な時期・季節などが説かれている。第3は商業について,最後に,事を行うためには,吉凶の日を判断して正しい日を選ぶべきことが説かれている。『労働と日々』は,貴族政時代の小農民の状態を克明に記しており,彼らの生活の実態・人生観を述べた作品として,ホメロスの叙事詩とは異なった意味で,きわめて貴重である。“労働は恥にはあらず,正義は神とともにある”という観念は,強度のペシミズムにもかかわらず,後世に大きな影響を残した。