●労働争議 ろうどうそうぎ
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労働者の地位の向上に関係ある事項に関して労働者の団体とその相手方とのあいだに生じた紛争。これは,わが国の労働省が労働争議統計の調査確定のために設けた定義であるが,労働関係調整法もその第6条で,〈労働争議とは,労働関係の当事者間において,労働関係に関する主張が一致しないで,そのために争議行為が発生している状態,又は発生する虞がある状態〉とほぼ同様の定義を下している。これらの定義によると,労働者個人と使用者との労働条件をめぐる紛争,政治ストのように労使関係の枠を越えた紛争が含まれないことになる。しかし,日常的な用法では,これら2者をも含めて労働争議と呼ぶことがあるし,労働法学などにおいても,労働者の団体が関与する後者については,少なくも労働争議として扱うべきとして主張されることがある。労働争議の原因は多岐にわたるが,最近のわが国の場合について,労働省による労働争議の主要要求事項調査によってみると,群をぬいて多いのは賃上げなどの賃金紛争であり,これに比すと他の労働条件や組合保障をめぐる紛争は著しく少ない。むしろ統計上,「その他」としてあげられている政治スト・支援ストが,公務員の人勧完全実施要求闘争などがここにいれられることもあって賃金紛争に劣らぬほど多いのが注意を引く。(1983・昭和58年度の調査結果を示しておく,なお,数値は総争議件数に対する要求事項の百分比。要求事項は二つまでの複数回答となっているので百分比の合計は100を超える。(1)賃金および手当
90.4,(2)その他 52.0,(3)経営および人事 8.2,(4)組合保障および労働協約 5.8,(5)賃金以外の労働条件 3.6。)
労働争議において,労使双方の当事者が主張を実現する手段として用いる争議行為は,労働者の組織状況・争議行為に対する法的規制のありようなどに規定され,これまた多種多様である。労働者側の行う争議行為のおもなものとしては,ストライキ・サボタージュ(怠業)・生産管理・ピケッティングなどがある。もっともストライキといってもその態様は変化に富み,部分スト・指名スト・山猫スト・波状ストなど枚挙にいとまがない。加えて,わが国のように組合勢力が弱かったり,争議行為が法的に禁止されているなどの事情があるときは,順法闘争・リボン闘争等,法的には必ずしも争議行為といえない行為(労調法7条参照)によって,争議行為の実質をあげようとする場合もでてくる。これに対し,使用者の争議行為としてはロックアウトがほとんど唯一のものである。
わが国の労働争議の実情についてはすでに1,2触れたが,ここで,そのほかの目立つ特徴をあげておく。第1は,争議行為の継続期間が著しく短く,国際的にもこの点では1,2を争うということである(とくに近年は,4時間未満のストが増加しているが,これを除き,半日以上のストにかぎって集計してみても1963年以降,平均継続日数は3日をきっている)。外国の観察者から,日本のストは儀式にすぎない,と指摘されるのも当然である。第2は,1970年代半ばの不況以降,争議行為,とくに半日以上の争議行為そのものが著しく減少し,その意味で労使関係はきわめて安定した状態にあるということである。すなわち,1970年代前半には,半日以上の争議行為の件数は毎年2,000件は優に超え,参加者も150万人を越えていたのに,ここ数年は,件数は1,000件を割り,参加者は20万人台を推移する事態になっている。
ところで,労働組合の争議行為は,久しく法的に抑圧の対象とされてきた。それでも欧米諸国では1930年代までには法的承認が得られたが,わが国ではようやく第二次世界大戦後になって争議権の確立をみた。今日,憲法28条・労組法は,争議行為を理由とする解雇等差別待遇を禁止し,争議行為に対する民事・刑事免責を定めるなど手厚い保護を加えている。しかし,争議権も絶対不可侵の権利でなく,ほかの諸権利との調和という観点から制約があるのは当然である。また,争議行為は当事者のみならず第三者や公衆に多大の影響を与えるため調整制度が設けられている。