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●労働組合 ろうどうくみあい

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 ウェッブ夫妻の有名な定義によると,「労働組合とは,せまく雇用条件だけでなく,広く労働者の生活諸条件の維持改善を目的とする賃金労働者の自主的な恒常的団体である」。この定義には,わが国でも支持者が多く,またわが労働組合法もその第二条において同様の定義を下している。とはいえ,労働組合の本質のとらえ方にはさまざまのものがあり,たとえば,マルクス主義流の見解−−当面は労働条件擁護のための闘争組織としつつ,長期的には,資本主義体制の廃絶へと労働者を組織・訓練・統一する場となるべき組織−−にたてば,上記の定義は狭すぎるとしてしりぞけられることになろう。

 労働組合の組織形態は,基本的には労働関係のあり方に規定され,歴史的に変化してきた。欧米諸国では,一般に職業別組合から産業別組合への発展過程をたどった。職業別組合は,産業資本主義の時代に基幹的位置を占めた熟練工が同一職業または職種単位で地域的に結集したものである。“熟練”を武器に排他的・特権的な労働力独占販売の組織を構築する。しかし19世紀末になると,技術的変化を背景に,従来の“熟練”が解体され,一方,大量の半熟練労働者が形成されてきた。こうして,熟練工の職業別組合は事態に対応できず破綻し,かわって半熟練工を中心とする産業別組合が登場するにいたる。今日,欧米諸国で優勢なのは依然としてこの産業別組合である。

 労働組合の機能もまた歴史的に変化をとげてきたが,主要なものとして次の三つの機能があげられる。第1は,使用者との団体交渉による労働条件の維持改善である。労働組合がほぼかわることなく,またどこでも果たしている最も基本的な機能である。第2は,共済活動による組合員相互間の相互扶助である。しかし,共済活動が有効に働くためには,なによりその基金が潤沢でなければならず,それには相当高額の組合費の醵出が不可欠ということが前提となる。特権的地位にあり相当の賃金を得ていた熟練工には可能であっても,必ずしも賃金の高くない半熟練工たちにはたえがたいことであった。かくて,職業別組合の衰退=産業別組合の登場とともに,この機能の重要性が薄れていったのも当然といわねばならない。労働組合は,これにかわるものとして,一方で,失業保険など社会保険制度,他方で企業内福利厚生施設の創設・拡充をめざして行動することとなる。第3は,政治活動である。労働組合は,誕生当初から法的承認を求めて政治活動に取り組まざるをえなかったが,“混合経済”あるいは“国家独占資本主義”ということばが示すように,政治と経済の癒着が著しくすすんだ現代社会では労働条件維持改善一つとっても政治活動への取り組みが避けられない。加えて多数の労働者を組織し大きな影響力をもつにいたった今日の労働組合には,欲すると否とにかかわらず,戦争と平和・民主主義の問題など,政治全般につき態度を明らかにし,影響力を行使することを求められれることが多くなっている。このように,現代社会では労働組合の政治活動は必要であり避けられぬことでもあるが,なんといっても本来,政治団体でないだけに,政党との関係も含めて適切な政治活動のあり方を工夫しあみだすことが必要である。思慮なき政治活動は,労働組合の分裂をまねき,かえってこれを停滞させるだけである。

 次に日本の労働組合について概観する。わが国の労働組合の組織と活動を特徴づけるのは,戦後労働組合に支配的な組織形態,企業内組合ということである。企業内組合の主要な特質は,組合員の範囲が特定の企業ないし事業所の従業員,普通は常用の従業員にかぎられていること,そして従業員であれば,職員・工員の区別なく一括組織していること,自ら独自の規約・財政・役員をもち,独立して労働三権を行使するなど自立した活動を展開していること(産業別組織など上部団体に加わっている場合もかわらない,このため上部団体は統制力を欠いた緩やかな連合組織となるのがふつうである)などである。このように,従業員だけで構成される企業内組合は,容易に企業と一体化する傾向があり,これは,一方では,経済成長を成し遂げ不況をきりぬけた原動力として称賛され(日本的経営のいわゆる“三種の神器”の一つ),他方では,企業エゴにとらわれたもの,労使癒着=御用組合として厳しい批判の対象とされている。ところで,わが国の労働組合がなぜこのような企業内組合の組織形態をとるようになったかについては,いくつかの見解が示されている。そのおもだったものとして,(1)日本資本主義の後進性に起因する出稼型労働にもとづくとする説,(2)年功的労使関係ないし熟練による本工の企業帰属意識に原因を求める年功的労使関係説。このように特殊日本的事情に原因を求める見解に対して,(3)資本主義の独占段階では,各国共通して,基幹的労働の技能は企業年功的性格をおび,これに対応して労使関係も年功的労使関係化するポテンシャルをもつとし,これが現実化するかどうかは労働者の抵抗の強さなどにかかるとする独占段階論などがある。わが国の組合員は,1983年(昭和58)6月現在で,約1,250万人,組織率は29.7%である。歴史的にみてみると,戦前の組合員数・組織率の最高はおのおの,約41万人(1935),7.5%(1930)であるから,戦後,組織勢力が格段に伸長したことは明らかである。しかし,戦後についてみると,組織率は1949年の55.8%をピークにその後は後退ないし横ばい傾向にあり,1983年には久しく維持していた30%台もついに切ってしまったし,組合員数も近年は経済活動の停滞,産業構造の変化もあって停滞状態にある。量的にみるかぎり近年わが国の労働組合は伸び悩みの状態にあるといえよう。労働組合の組織状況を少したちいってみてみると,業種別・企業規模別でアンバランスが目立つ。よく組織されているのは公務・交通業などで,製造業は平均値より若干高く,一方,サービス・卸売・小売など第3次産業の組織率は著しく低い。企業規模別では,大企業ほどよく組織されていて,規模が小さくなるにつれて組織率は落ちこみ,従業員数99人以下の小・零細企業では一割に満たない労働者が組織されているにすぎない。ところで,日本の労働組合は前述のようにそのほとんどが企業内組合であるが,これらの多くは全国的な産業別組合に結集し,さらにこれを通じて労働組合のナショナル=センターに結集している。現在,わが国のナショナル=センターは,労働組合観・政治イデオロギーの違いなどにより,日本労働組合総評議会(総評),全日本労働総同盟(同盟),中立労働組合連絡会議中立労連),全国産業別労働組合連合新産別)のいわゆる労働4団体に分立している。労働組合員全体については,総評がなお他を引き離して第1位を占め,官公労働者についてはその大部分を組織するなど優勢であるが,民間労働者にかぎると,すでに同盟が総評を抜き去り,総評は中立労連と第2位を争う状態にある。注意を要するのは,4団体いずれにも属さない労働組合の組合員が4割ちかく存することである。なお,1982年末の全日本民間労働組合協議会の結成にみられるように,近年,ナショナル=センター統一の動きが活発である。

 労働組合は,その当初から,活動が自由にできたわけではない。むしろ,国家・使用者の厳しい抑圧の対象とされ,その存在さえ許されない時代もあった。しかし,このような状態は,欧米諸国では,全面否定から放任そして保護奨励へと段階的に改善され,1930年代までには全面的法的承認をうけるにいたった。これに対し,わが国では,労働組合とその活動に対する法的承認はおくれ,これが完全な形で実現をみるのは第二次世界大戦後のことである。

 現在では,憲法28条および労働組合法によって,労働組合は保護され,その活動が奨励されている。すなわち,まず,国家等公権力に対し憲法28条の労働基本権保障によって枷がはめられ法令等により濫りにこれを制限することは憲法違反としては,不当労働行為制度などにより組合の結成や活動に介入することが禁止されているのである。