●労働基準法 ろうどうきじゅんほう
アジア 日本 AD1949 昭和
労働者が人たるに値する生活を営むために必要な労働条件の最低基準を定めた法律。1949年(昭和22)4月公布。最低賃金法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法など,数あるわが国の労働保護法の中心をなす。労働基準法の先駆としては,わが国では1911年(明治44)公布の工場法がある。工場法は制定当時,強力な労働運動が欠けていたことを反映して内容的にも貧弱で慈恵的性格が強い。これに対し,第二次世界大戦後制定された労働基準法は,勤労権を保障し,人たるに値する労働条件の基準を定めることをうたう憲法27条にもとづくもので,労働者に権利として労働条件の最低基準を保障し,その内容も格段に豊かで高いものとなっており,国際的にも十分通用するものであった。ところで,労働基準法は,先進諸国の労働保護法にはまずない一つの特徴をもっている。それは,労働保護法本来の課題(近代的労使関係のなかで明らかになってきた経済的弱者としての労働者の保護)と合わせて前近代的労使慣行の払拭という労働保護法以前の課題(たとえば,強制労働・貯金の禁止)をも果たそうとしていることである。いうまでもなく前近代的性格が根強く残る当時の労使関係の実情を意識してのことである。その後,労働基準法は,今日まで,最低貸金・安全衛生に関する規定がおのおの,最低賃金法(1959)・労働安全衛生法(1972)として拡充・独立したほかは,制定当初の規定が大した変更をうけることもなく続いている。現行労働基準法のおもな内容は次の通りである。(なお,同法の内容を正確に把握するには,上掲ほかの関連立法や細則を定める膨大な施行令・規則などを参照することが不可欠である)。(1)労使関係の基本的あり方として,労働条件は労使対等の立場で決せられるべきこと,信条・性などによって労働条件に差別があってはならないこと,労働条件は人たるに値する生活を営むにたるものでなければならないことなどを明らかにする。(2)労働契約の締結にあたって労働者が不利な契約を結んだり,使用者に不当に拘束されないよう,労働条件の明示を求め,また強制貯金・損害賠償の予約などを禁止する。(3)唯一の生活の糧である賃金の保障のため,通貨・直接・全額・定期払の賃金支払原則などを定める。労働時間・休憩・休日・有給休暇の定めをおき,労働者の健康・生命を維持し,また文化的・社会的活動の時間を保障する。(4)職場における安全・衛生に関する定めをおき,労働災害の発生の防止につとめる(今日では,労働安全衛生法の規定にゆだねられている)。(5)女子および年少者(18歳未満の男女)が生理的・社会的に特別の地位にあることから,危険有害業務への就業制限・労働時間,深夜業の制限・母性保護を規定する。(6)技能者養成に名を借りた労働者の酷使が行われないよう規定する。(7)労働災害にあった労働者に使用者の責任で療養・休業・障害・遺族補償などを行わせる(今日では,労働者災害補償保険法による保険給付によってまかなわれるのがふつうである)。(8)いわば“職場の労働法”として,個々の企業・事業所の労働条件を決める上で重要な役割を果たしている就業規則につき,その内容・作成手続などを定める(9)寄宿舎に生活する労働者の私生活の自由・安全な住環境を確保する定めをおく。(10)労働災害・産前産後の休業中などの解雇の禁止,解雇予告期間・手当制度の設置などによって解雇に規制を加える。(11)上記を含む労働基準法の定めは労働条件の最低基準であり,これを下まわる労働条件は無効とし,加えて多くの場合,違反に対しては刑罰を課している。(12)本法の施行のため監督機関として労働基準監督署などを設け,ここに労働基準監督官を置く。おおよそ,このような内容をもつのが労働基準法であるが,制定されてから40年近くを経過して,社会状況の変化・国際的な労働条件基準の向上といった事情のもとで,さまざまな欠陥・問題点が明らかになってきている。男女雇用平等法案に関連して最近,論議されている女子の保護規定見直し論は,そのほんの一例でしかない。