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●レダ

ヨーロッパ ギリシャ共和国 AD 

 ギリシア神話でアイトリア王テスティオスの娘,スパルタ王テュンダレオスの妻。白鳥に変身したゼウスと情を通じてヘレネを産んだことで有名であるが,これには異説も多く,古い伝承の変遷をうかがわせる。レダの子供とされるのはクリュタイメストラアガメムノンの妃),ディオスクロイ(カストルとポリュデウケスの双生児),そしてヘレネ以外に3人存在する。子供の数や子供の父親について諸説ある。ホメロスはディオスクロイテュンダレオスの子,ヘレネをゼウスの娘とする。ところが一説には,ディオスクロイもゼウスの子である。ピンダロスによれば,レダはゼウスによってヘレネとポリュデウケステュンダレオスによってカストルとクリュタイメストラを産んだ。しかしまったく別の系統の伝承では,ヘレネはネメシス(夜の神の娘)とゼウスの娘になる。ネメシスはゼウスを避けて次々と魚,獣,ガチョウに変身するが,ついに白鳥の姿のゼウスによって身籠り玉子を産む。その玉子を見つけたレダは,中から出てきたヘレネを自分の娘として育てたというのである。ところがエウリピデスの『ヘレネ』にいたると,レダ自身が白鳥に変身したゼウスの訪問を受けることになる。やがてレダは,ヘレネだけでなくディオスクロイの玉子をも産んだと伝えられるようになった。古代の旅行記作者パウサニアスによれば,スパルタの神殿にはレダの玉子が大切に保存されていたようである。このように時代をへるにつれてネメシスはしだいに遠ざかり,レダと白鳥がしばしば芸術に登場するようになったのである。その代表例は狩人に追われた白鳥を外套で蔽いかくそうとするレダの像である。レダという名前が小アジアのリュキア語の lada(“女”または“妻”)にさかのぼるとすれば,この説話もまた先ギリシア文明の残存物なのである。