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●臨海工業地帯 りんかいこうぎょうちたい

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 海岸すなわち港湾に牽引されて立地する工業を核にして,大規模に工業生産の集積するところをいう。ただ港湾は,臨海のみならず,外洋へつづく河川や湖,そして運河など,海岸から離れた内陸地方にでも存在し,類似する工業立地を見せる場合もある。臨海工業は,国内外を問わず,原則として船舶を利用して,原料・製品を搬出入することによる利益に牽かれて立地する工業といえる。日本における一部の工場のように,海岸にあるが,ただ安い埋立工業用地に立地する例は,必ずしも臨海工業とはいえない。次に,工業地帯について示す。工業地帯は,工業の集積において,一つか二つの工場の立地する工業地点が,さらに数を増して工業地区になり,いくつかの地区を合わせて,かなりの集積をもって工業地域,さらに空間的なひろがりをつけて工業地帯化するという,集積の量的・空間的ひろがりのみではない。工業地帯の条件として,業種構成の多様化や加工の高度化など質的な構成も重要な意味をもつ。すなわち,原材料を加工して一次製品を生産する素材加工段階から,それらを使って最終製品へしだいに高めてゆく,いくつもの加工段階が存在するといえる。臨海工業地帯は,背後に大都市を発達させるのが一般的であるから,素材加工から,高度な消費財を加工する都市型工業までを内包するといえよう。

 さて,上記の意味を踏まえて,世界の臨海工業地帯の分布と特徴を概観しよう。ヨーロッパでは,イギリスやオランダなど域外から原材料を入れる場合に臨海部に発達する。西ドイツ・フランス・チェコスロヴァキアなどいずれも内陸にあるが,しかし,ルール工業地帯など,河川や運河によって外洋につながり,必ずしも内陸立地とはいえない。アメリカでは,五大湖沿岸と東部海岸に巨大な臨海工業地帯を発達させるし,西部カリフォルニアや南部にも興ってきた。しかし,農作物加工や機械工業は内陸立地である。ソ連では,ウクライナやバルト海岸に臨海工業地帯があるが,ほかは,コンビナート方式による内陸工業地帯である。中国の東北・武漢(ウーハン)・インドのダモダールなどは,河岸の武漢を除いて内陸である。これらから,計画的な地域開発に沿う工業拠点や特定の原材料産地や市場を志向する場合に内陸地域ヘ,域外の原材料や市場志向をとる場合に臨海地域へそれぞれ地帯形成を見たといえる。

 日本では,昭和に入ってから,表日本の四つの臨海地域で工業地帯が形成された。最も早かったのは,阪神工業地帯で,軽工業の上に,機械金属工業などを積み重ねたが,素材加工部門が小さく,第二次世界大戦後,日本の経済中枢機能の東京1点集中のなかで停滞をつづけている。北九州工業地帯は,大陸資源と結びつき,素材加工型工業の集積によって地帯化をみたが,第二次世界大戦後,大陸と離れ,中央日本とも離れていることから,高次加工工業を付加しないまま今日に至っている。中京工業地帯は,繊維・窯業・機械を柱に,比較的単純な業種構成であり,かつ臨海型工業が少ない。京浜工業地帯は,阪神より遅れて地帯化したが素材型工業を東京湾東部へひろげる一方,関東内陸にまで機械工業をはじめ各種の都市型工業を立地させて,質・量ともに,日本最大の工業地帯となった。なおこれらの工業地帯の地域的拡大によって,とくに瀬戸内沿岸には,臨海型の工業が多数並列立地する。こうして,日本の臨海工業地帯は,第二次世界大戦までに四つの地方で形成され,戦後の高度経済成長期に,さらに高度化し,拡大して,四つの地帯間をうめ,一つの「太平洋ベルト」となってきた。ただ,日本でも欧米でも,臨海といわず内陸でも,従来の工業地帯が将来とも,工業核ではないかもしれない。これからの高付加価値工業は,従来の工業地帯から離れて,しかしそこであげる以上の工業生産をあげるようになるかも知れない。