●領空 りょうくう
AD 【概要】国家が領有する空間であり、領土と領海上の空域をいう。1944年の「シカゴ国際民間航空条約」第1条は、〈締約国は、各国がその領域上の空間において完全かつ排他的な主権を有することを承認する。〉と規定している。他国の航空機による領空の飛行は、すべて領域国の許可を必要とするとされており、事前の許可を得ていない飛行は「領空侵犯飛行」として取り扱われる。国家領域外および無主地の上空は公空であり、あらゆる国の航空機の飛行やミサイルの実験にも開放されている。「シカゴ国際民間航空条約」によると、上空は無限に国家の領域となるが、1967年の「宇宙条約」は、国家による宇宙空間の領有を認めないとしている。したがって、領空の垂直的な限界についての明確な基準はないが、地球をまわる人工衛星の最低軌道以上の空間は宇宙空間であり、それ以下を領空とするのが通説になっている。
【領空主権の確立】ライト兄弟による航空機の発明(1903)以来、航空機の急速な進歩発達によって、第一次世界大戦(1914〜18)では航空機がはじめて主要な兵器として登場し、たとえばイギリスは34回もドイツ空軍の攻撃を受けた。このような兵器としての航空機の出現によって、第一次世界大戦が勃発してから、交戦国も中立国も外国航空機の自国上空の飛行を禁止するようになった。第一次世界大戦が終わると、1919年10月にパリで国際航空会議が開かれ、「国際航空条約」(パリ条約)が結ばれ、1922年7月1日から〈締約国は、各国がその領域上の空間において、完全かつ排他的な主権を有することを承認する〉(同条約第1条)として、領空に対して国家の領域主権が及ぶことが明確にされた。その後に締結された国際条約や、各国の制定した航空法などでは、1944年の「シカゴ国際民間航空条約」と同じように、このパリ条約第1条の領空主権説をそのまま受け入れており、領空主権は国際法の原則として確立された。
【領空主権の絶対性】パリ条約第1条およびシカゴ条約第1条は、領空主権を〈完全かつ排他的な主権〉であると規定している。これは領空において行使される国家の主権は、他のいかなる制約をも受けない絶対主権であることを、明確にしたものであると解されている。領空主権が絶対主権であることによって、領空主権はどのような一般国際法上の制約をも受けない。したがって、領海についてみられるような無害航行は、特別な条約や協定がない限り領空の場合には認められない。領空主権はこのような絶対主権であることによって、(1)他国の航空機が許可なく1国の領空を侵犯すると、領空侵犯という不法行為が形成される。(2)商業航空においても、外国機の進入着陸は、主権国の許可がない限り許されないことになっている。
【領空侵犯】領空侵犯が法的に問題とされるようになったのは、主として1919年のパリ条約成立後、各国が航空法などの国内法を整備してからである。いわゆる領空侵犯とは、外国の航空機が国際法規または当該国の法令に違反して、1国の領空に侵入することをいう。
1.航空機の分類:領空侵犯の主体となる航空機は、「国の航空機」(軍用機、郵便用・税関用・警察用の航空機)と「民間の航空機」に分けられる。「軍用機」は、(1)所属国の軍務について、正当に任命された者の指揮下におかれていること、(2)乗員は、もっぱら軍務に服するものであること、(3)航空機には、国籍および軍事的性質を示す外部標識がつけられていること。(4)乗員が制服(戦闘服・飛行服でもよい)を着用していることを要件とする。つまり軍人が指揮し、軍務に従事する航空機である。「軍用機」は、特別の許可がなければ、他の国の領空を飛行し、その領土や領海に着陸(水)することはできない。特別の許可があったときは、特に規定がない限り、外国の軍艦と同じように臨検・捜索・捕獲などを免がれる特権を有する。ただし、着陸のやむなきにいたったか、着陸を求められたか、それを命じられた軍用機は、この特権を失なう(国際航空条約31条、32条)。「国の航空機」のうち軍用機、税関用・警察用以外の航空機は、「民間の航空機」として取り扱われる(国際航空条約30条、国際民間航空条約3条)。「民間の航空機」は、その保護と取り締まりのために、登録されいずれかの国の国籍をもつ。国際航空に従事する「民間の航空機」は、国籍と登録の記号を掲げる。本国の領域にある時は本国の、他国の領域にある時は他国の主権のもとにおかれるが、他国の領域において不法・不当な取り扱いを受けた場合は、外交的手段によって本国の保護を受ける。武力紛争において、敵国の「民間の航空機」をどのように取り扱うかについては、一般に次のように解釈されている。(1)軍事目的(たとえば兵員・武器の輸送)に使用されている場合は、国の航空機として攻撃の対象となりうる。(2)軍事目的に使用されている民間の航空機を攻撃するかどうかは、政治的・地理的・軍事的要素を考慮して決定される。(3)民間の航空機が確実な軍事目標であると視認できる場合(たとえば作戦地域への進入)には、緊急の軍事的脅威に該当するものとして、攻撃の対象となることがある。(4)民間の航空機が、作戦地域の周辺を飛行する場合は、民間の航空機であることが確認される前に攻撃される場合がある。(5)民間の航空機として、通常の航空輸送に従事していることが判明しているときは、攻撃を加えてはならない。
2.領空と防空識別圏(ADIZ―Air Defense Identification Zone):領空を侵犯された場合に適切な措置がとれるように、各国は航空機を識別するため領空の外側に防空識別圏を設定している。1950年にアメリカは防空識別圏を設定し、圏内を飛行するすべての航空機を正確に識別し、これに対応できるシステムを確立した。カナダ・イギリス・フランス・ソヴィエトの諸国が相次いで同じように防空識別圏を設定した。わが国では1969年以来、日本列島を内側では約100km、外側では約400ないし600kmで取り巻く防空識別圏が設定されている(「防空識別圏における飛行要領に関する防衛庁訓令第36号」1969年8月29日)。1972年からこれに沖縄方面が追加されている。この防空識別圏内は、常時航空自衛隊の航空警戒管制用レーダーで監視されており、運輸省航空管制部から送られてくる飛行情報と照合して航空機が識別され、不明機の場合はスクランブル(要撃戦闘機の緊急発進)が行われるシステムになっている。この防空識別圏は、航空機を適時適切に識別するためのものであり、公海上に設定されているので、領空主権の及ぶ範囲ではない。
3.領空侵犯に対する措置:領空に許可なく侵入した航空機に対しては、領空を侵犯された国(下土国)は、領空侵犯機に対して、着陸を強制するか、領空からの退去を求め、いずれの命令にも従わない場合は、必要があればそれを武力で強制することができるとするのが通説である。しかし領空侵犯に対する措置は、航空機の種類・任務・気象状態、故意か不可抗力かなどによって、状況に適した妥当なものであることが必要であり、一般的には次のような考え方で具体的な措置がとられている。(1)平時において国際間の緊張が少ない場合は、国の安全に重大な危害が及ばない限り、国際緊急周波数による無線連絡や追跡機が翼を振るなどの視覚信号によって警告し、進路の変更や着陸を命ずる。(2)侵犯機の行動が敵性を帯びたものであるか、あるいはその意図が不明確な場合には、警告を発して着陸を命じ、その命令が無視された場合は攻撃することができる。(3)侵犯機が非武装であるときは、信号射撃による警告にとどめることが望ましい。(4)侵犯機は下土国の指示に従わなければならないが、侵犯機が故意または敵対行為(たとえば写真・電子偵察)のために領空を侵犯し、下土国の指示に従わずに逃亡する場合には、公海上空の空域まで追跡することができる(いわゆる追跡権の行使)。(5)逃亡者・叛乱者などによって不法に奪取された航空機の場合は、当該航空機の乗組員および乗客には不法侵入の責任はない。(6)非友好国の軍用機または識別不明機の行動に疑問があり、上級司令部が敵性を帯びるものと判定した場合、または当該航空機が敵性行動をとったことが確認された場合は、自衛権の行使による反撃措置がとられる。わが国では〈防衛庁長官は、外国の航空機が国際法規または航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、またはわが国の領域の上空から退去させるための必要な措置を講じさせることができる〉と自衛隊法第84条に明示してある。「軍用機」のうち、スパイ目的あるいはその他の敵対的意図をもつ領空侵犯機については、非常にきびしい措置がとられている。たとえば、1960年5月1日にアメリカの長距離・超高空偵察機U2型機が、ソ連国境を約2,000km以上侵入したとき、ソ連防空部隊(ロケット部隊)は無警告でこれを撃墜し、パワーズ飛行士は禁錮15年の判決を受けた。平時において領空を侵犯した「民間航空機」が撃墜された例として、いわゆる「大韓航空機事件」がある。1983年9月1日午前3時半ごろ、ニューヨーク発アンカレッジ経由ソウル行きの大韓航空機(乗員29人、乗客240人、うち日本人28人)が管制当局との交信を絶ち、その後行方不明となった。日本政府は、大韓航空機はソ連軍用機のミサイルによる攻撃を受け、午前3時38分ごろ、樺太沖海馬島(モネロン島)近辺で撃墜されたものと判断したが、ソ連政府は、当初撃墜の事実を認めようとしなかった。日本政府は防衛庁が収集したソ連機の交信内容の一部を9月6日公表し、9月7日には日米共同で国連緊急安全保障理事会にその全文を提出した。このような経過をへて、ソ連政府は9月9日にいたりようやく撃墜の事実を認めた。
4.着陸した侵犯機や乗員の取り扱い:着陸した侵犯機や乗員の取り扱いは、侵犯国と被侵犯国の関係、侵犯の状況、被侵犯国の国内法によってさまざまである。中国と台湾、北朝鮮と韓国のように体制の異なる国のあいだで生起する軍用機による政治亡命を目的とする領空侵犯については、亡命者に賞金が与えられ機体も返還されていない一方、1976年9月6日函館に強行着陸したミグ25事件の時は、ベレンコ中尉のアメリカ亡命が認められ、機体は10月15日に返還され日立港からソ連船によって運び出されている。国際法上または国内法上必ずしも明確にされていないこの分野についてわが国ではミグ25事件の際に次のような政府見解(1976年9月10日)が明らかにされている。(1)国際法上、本件のような領空侵犯機については、被侵犯国が全く自由にその機体を処分し得るわけではないとしても、被侵犯国が、その管轄権の下に、当該機体の取り扱いに係る最終措置をとるまでのあいだ、その保管を行い、領空侵入および強行着陸の背景状況、なかんずく、当該飛行に当該国の安全を侵害する意図とその事実があったか否かの解明のための機体の調査を行うことは許容されると考えられる。(2)右のような領空侵犯機の保管の権限と責任が国内法上いずれの行政機関に属するかは、明確な定めがあるわけではないが、その保管を必要とする事情は、いわばわが国の安全にふれる、軍用機による領空侵犯に伴って生じたものであり、他にかかる機体の保管を行う権限を行使し、その責任を果たすべき適当な行政機関があるとも認められない以上は、〈領空侵犯に対する措置〉と密接な関連を有する事項として、右のような保管の権限と責任が防衛庁に属すると解するのが合理的である。(3)機体の調査についても、その機体の保管についても同様の根拠により、領空侵犯に対する措置にかかわりを有する調査として、防衛庁設置法第5条第20号に規定する〈所掌事務の遂行に必要な調査〉に含まれるものと解される。領空を侵犯した航空機の機体については、第二次世界大戦が終わるまでのあいだ、多くの国は「国の航空機」と「民間の航空機」を区別せずに取り扱ってきたが、最近においては特に「軍用機」と「民間の航空機」を明確に区分して取り扱う傾向にある。これは、「軍用機」の速度や突破力が大きくなったことによって、従来よりもいっそう厳密に「軍用機」による領空侵犯に対する措置を徹底させる必要がでてきた反面、飛躍的に拡充されてきた国際民間航空の国際間における安全を確保することが要請されるようになったためである。わが国においても、「軍用機」と「民間の航空機」を明確に区分した国内法の整備が望まれている。
【商業航空と領空】1944年の「シカゴ国際民間航空条約」は、第二次世界大戦中における航空機および航空技術の進歩発展に応じて、国際民間航空の発達のため、連合諸国と中立国の代表を集めて開催された国際民間航空会議で作成されたものである。この会議では、(1)シカゴ国際民間航空条約、(2)国際民間航空に関する暫定協定、(3)国際航空業務通過協定(二つの自由の協定)、(4)国際航空運送協定(五つの自由の協定)が作成された。「シカゴ条約」が発効したことによって、1947年4月4日、カナダのモントリオールに、国際航空の原則および技術を発達させ、国際航空運送の計画および発達を助長するため、「国際民間航空機関(ICAO)」が設立された。日本は1953年9月8日、シカゴ条約に加入することによって ICAO の加盟国となった。「シカゴ条約」は、「不定期航空」については、下土国の着陸要求に従うことを条件として、締約国の領域内への飛行または無着陸横断飛行と運輸以外の目的で着陸する権利を他国に認め、また不定期航空については、旅客・貨物・郵便物の積込・積卸を認めている(第5条)が、その後加盟国の多くは、不定期航空についても、「事前の許可」を第5条2但書によって要求できるとの態度をとるようになってきている。「定期航空」については、シカゴ条約でなく「国際航空業務通過協定」と「国際航空運送協定」にもとづいて、国際間の取り決めが行われている。「国際航空業務通過協定」(二つの自由の協定)は、(1)締約国領域を無着陸で横断する権利(無害航行の自由)、(2)運輸以外の目的で着陸する権利(テクニカル=ランディングの自由)を定めており、この二つの自由は多くの国が承認している。「国際航空運送協定」(五つの自由の協定)は、前述の二つの自由に加えて、(3)自国で積み込んだ旅客・貨物・郵便物を他の締約国で降ろす自由、(4)他の締約国で自国あての旅客・貨物・郵便物を積み込む自由、(5)第3国からの、または第3国への旅客・貨物・郵便物を、他の締約国で積み込み・積み降ろす自由の五つを定めているが、各国の利害がからむため、まだ国際的に広く認められていない。二国間航空協定では、国内の出発地点や相手国の乗り入れ地点・便数などを取りきめているが、相手国の国内地点とそれ以遠の第3国への乗り入れ地点間の運輸権を「以遠権」という。各国とも自国の航空企業を保護するために、「以遠権」を外国の航空企業に認めることを制限しており、航空交渉ではこの点が問題となることが多い。第6の空の自由として、(6)外国内における国内運航の自由(カボタージュの自由)といわれるものがある。しかし、開発途上国で自国の航空輸送力が無いような特別の場合を除き、一般には外国内における国内運航の自由は認められていない。
航空機の安全な航行を保障するために、(1)航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約(1963年9月14日、東京)、(2)航空機の不法な奪取(ハイジャック)の防止に関する条約(1970年12月16日、ハーグ)、(3)民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(1971年9月23日、モントリオール)、が締結されているほか、国内法としては、(1)航空機の強取等の処罰に関する法律(1970年、法律第68条)、(2)航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約第13条の規定の実施に関する法律(1970年、法律第112号)がある。
【宇宙空間】国家の上空に対する管轄権が及ぶ限度をこえる広大な宇宙に広がる空間を「宇宙空間」あるいは「大気圏外」という。領空のさらに外側に、国家の管轄権が及ばない宇宙空間が存在することは、現行国際法で認められているが、領空と宇宙空間の境界、つまり領空の上限が地表からどれだけの距離にあるかという点については、まだ明確な規則はない。領空の限界を定めようとする学説としては、(1)科学・技術の発達に応じて、国家が実効的に支配できる限度までとする実効的支配説、(2)物を投下してその国の領域に落下する高度範囲とする重力説、(3)空気が存在する限度とする大気説などがある。科学技術が発達して、人工衛星の打ち上げや宇宙飛行が行なわれている今日においては、(1)の説は領空と宇宙空間を区別する標準となりえない。(2)の説は地球を離れても重力自体は無限に及んでいるため不適当である。また(3)の説は空気の状態は固定的でなく、大気圏の外側に近い部分(拡散層)では、非常に密度のうすい空気の分子が広く拡散していることを考慮すると、この説で領空の限界を定めることも困難である。しかし大体の基準として、(4)空気の抵抗により通常の航空機が飛行できる程度に濃厚な空気が存在している空間を領空とする説(濃厚大気説)、(5)宇宙機器が空気の摩擦抵抗によって焼失せずに、最小限地球を一周しうる程度に空気分子が微量なところを宇宙空間としようとする説(宇宙機器周回可能限度説)が有力である。
1.字宙条約:いかなる国家も宇宙空間に対して、排他的管轄権を主張できないことは、国際法上確立されている原則である。国連は第13回総会で、1958年12月13日「宇宙空間の平和利用問題」について決議し、「宇宙空間平和利用委員会」を設置した。第18回総会では、1963年12月13日「宇宙空間の探査及び利用における国家活動を規律する法的原則の宣言」が満場一致で採択された。この宣言は1967年1月27日「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)」となり、同年10月10日発効した。宇宙条約は、(1)すべての国は自由に字宙活動を行ないうる(宇宙活動自由の原則)、(2)宇宙空間・天体の探査・利用は、無差別・平等にすべての国に開放される(無差別原則)、(3)国家は宇宙・天体に対して主権の主張・占拠などによりそれを取得してはならない(領有禁止原則)、(4)宇宙・天体に核兵器その他大量破壊兵器を配置してはならない(平和利用原則)、(5)宇宙活動は、国際協力と相互援助により行ない、他国の宇宙活動上の利益に妥当な考慮を払わなければならない(国際協力原則)、(6)国家は、宇宙・天体で行なう自国の一切の活動について、直接に国際的責任を負う(国家責任の原則)、という諸原則を定めている。第6の原則については、「宇宙物体より生じた損害の国際的賠償責任に関する条約(宇宙損害賠償条約)」が締結されている(1972年9月1日発効)。
2.宇宙の開発・利用宇宙の開発・利用がすすむにつれて、「宇宙平和利用委員会」などを中心にして、その規制についての検討が進められ、前記の条約のほか、(1)「宇宙飛行士の救助・送還及び宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定」(宇宙救助返還協定、1968年)、(2)「宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約」(宇宙物体登録条約、1975年)、(3)「月及びその他の天体における国家活動を律する協定」(月協定、1979年)が作成されている。宇宙物体の打ち上げにあたっては、それを登録し、一定の項目については国連事務総長に通報すべきことを、「宇宙物体登録条約」は定めている。宇宙物体の登録国は、その物体と乗員に対し、それらが宇宙空間と天体にあるあいだは、管轄権・管理権を持つ。「月協定」は、月およびその他の天体とその天然資源が人類の共同財産であると定め(11条1)、この協定の当事国は、月の天然資源の開発が実行可能となったときには、適当な手続きを含め、月の天然資源の開発を律する国際制度を設立することを約束すると定めている(11条5)。そして、設立される国際制度は、月の天然資源の秩序ある安全な開発、合理的な管理、利用機会の増大、月の天然資源から得られる利益のすべての当事国による公平な分配をめざし、その際、この分配については、開発途上国の利益や月の探査に貢献した国の努力に、特別な考慮を払うべきものとしている(11条7)。宇宙条約第4条は、〈条約の当事国は、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと、並びに他のいかなる方法によっても、これらの兵器を宇宙空間に配置しないことを約束する。月その他の天体は、もっぱら平和目的のために、条約のすべての当事国によって利用されるものとする。天体上においては、軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は禁止する〉と定めている。しかし非核兵器を宇宙軌道に乗せることは禁止されていない。また平和利用を非軍事的と理解せずに、非侵略的・非攻撃的と解釈して、偵察衛星や軍事衛星が多数打ち上げられているのが実情である。宇宙空間の通信利用も活発に行なわれている。1964年8月20日に設立された「世界商業通信衛星組織インテルサット」や1979年7月16日に設立された「船舶通信のための世界海事通信衛星組織インテルサット」は広く利用されている。また各国は、固有の通信衛星を静止衛星軌道に打ち上げて利用している。宇宙に関する法秩序は、1957年のソ連のスプートニク1号、1958年のアメリカのエクスプローラーI号の打ち上げによって宇宙活動が始まってから、短いあいだに急速に形成されてきたが、今後も宇宙の開発・利用の進展に応ずる条約や協定の充実が期侍されている。
〔参考文献〕宮崎繁樹『国際法綱要』1984、成文堂
池田文<雄『宇宙法』1961、勁草書房
横田喜三郎『国際法 II(新版)』1972、有斐閣
城戸正彦『宇宙法の基本問題』1970、風間書房
防衛法学会編『防衛法研究第7号(航空自衛隊をめぐる法的諸問題)』1983、防衛弘済会