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●リート

ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD 

 ドイツ語のリートは歌という意味であるが,音楽用語としてのリートは,ドイツ人特有の民族性と感情が表現された歌曲を意味する。このリートという名称は,中世期ドイツのミンネゼンガーたちがつくった歌曲のなかにみられる。しかし現在一般に用いられているリートは,モーツァルトの歌曲「すみれ」・ベートーヴェンの連作歌曲集「遥かなる恋人に寄す」,またライヒャルトやツェルターらの民謡調の歌曲などをへて,シューベルトによって芸術歌曲にまで高められた“ドイツ=リート”をさす。シューベルトは,ゲーテやシラーらを中心とした詩人たちの詩を基盤として,「魔王」や「冬の旅」などを含む約600曲のリートを創作し,19世紀ロマン派音楽における象徴的なジャンルとしてのドイツ=リートの基礎を築いた。それは詩の意味内容と形式が重視され,ピアノ伴奏によって,叙情的・劇的・瞑想的・物語的に表現されている。このような特質をもったドイツ=リートは,シューマンからブラームスへと受け継がれて大きく展開され,19世紀後期のヴォルフやマーラーにいたってその発展の極に達した。