●六国史 りっこくし
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奈良時代から平安時代初期に編纂された勅撰の六つの国史。『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』の総称。六書とも漢文で,主に編年体。中国の正史『史記』『漢書』『後漢書』等が手本。【沿革】5〜6世紀ごろ,国家成立の歴史的な自覚から帝紀・旧辞が著述された。これらは推古朝や大化の改新・白村江の戦をへて,氏族体制から中央集権官僚制・皇室の権威の復活・民族主義の台頭となり,はじめに帝紀・旧辞を改作して『古事記』が成立する。しかしそのあまりに民族主義的(国風)性格は,奈良時代に入って,国際性の要請とともに,その風潮にそった歴史の編纂となる。この事業は『日本三代実録』の編修された901年(延喜1)をもって終熄し,以後は勅撰の史書は編さんされない。これによって国家成立以来887年(仁和3)までの編年体の歴史が遺ったが,この事業の終末はちょうど唐の衰退・滅亡の時期(黄巣の乱は875〜884年,滅亡は907年)とも,また主としてそれに起因するわが遣唐使廃止(894,寛平6)の時期とも,ほぼ一致している。以下に六国史の編修事業を個別に略述する。
【日本書紀】紀30巻・系図1巻。系図は亡佚して伝わらない。元正天皇の養老4(720)年撰上。撰者は舎人親王ほか,太安麻呂も参画したと伝える(『弘仁私記』序)。漢文。紀伝編年混淆体。天地開闢・高天原(たかまのはら)その他の神話,巻1・2(神代上・下)と神武天皇紀以下持統天皇10(696)年までの国史。その記載は応神紀あたりから後に史実性を増す。『古事記』とともに7世紀以前の古代史研究に貴重であるが,潤色多く,厳密な批判が必要である。『新訂増補国史大系』(吉川弘文館)・『日本古典文学大系』(岩波書店)・佐伯有義校注『六国史』(朝日新聞社)に収める。
【続日本紀】しょくにほんぎと訓む。40巻。文武天皇1(697)年より桓武天皇の延暦10(791)年まで95年間の国史,この編修事業には沿革がある。その前半の20巻(697〜757,文武1〜天平宝字1)はいったん淳仁朝に曹案30巻が成立。その後光仁・桓武両朝の改訂あり延暦16(797)年に後半部とともに完成。後半部は,はじめ石川名足・上毛野大川らによって宝字2〜宝亀8(758〜777)年の分がいったん草稿として光仁朝に成立,これを桓武朝に14巻に修訂,さらに宝亀9〜延暦10(778〜791)年の分6巻を追加。上記前半部と合わせて40巻として完成したと考えられる。前半部曹案の主導は藤原仲麻呂・吉備真備らが推定されるが,同じく光仁朝の修訂者は上記石川名足のほか,淡海三船ら(『日本後紀』延暦16年の上表文),延暦期は前後半部共菅野真道・秋篠安人らである。奈良時代を中心に前後95年間の正史で,施政・制度・外交・民生から皇・貴族官人の評伝まで,貴重な史料をなす。『新訂増補国史大系』・佐伯有義校注『六国史』(以下5国史とも同じ)に収録。
【日本後紀】40巻。『続日本紀』につづき延暦10(791)年から天長10(833)年まで42年間の国史。漢文の編年体の実録。はじめ,弘仁10(751)年,勅命により藤原冬嗣・緒嗣・貞嗣・良岑安世らが編修を開始したが,途中緒嗣を除き他界。ために清原夏野ら多数を補充して840年(承和7)に完成した。しかし後散佚し巻五・八・十二・十四・十七・廿・廿一・廿二・廿四の10巻と他巻の逸文若干が現存する。
【続日本後紀】20巻。天長10(833)年から嘉祥3(850)年にいたる仁明天皇一代18年間の正史。漢文・編年体の実録。はじめ文徳天皇の斉衡2(855)年勅により藤原良房・良相・伴善男,春澄善縄(はるすみのよしただ)が任じたが,天皇崩じ,清和天皇が業を継いだ。良相また薨じ,善男は応天門の変で失脚。よって良房・善縄によって完成・撰上された。
【日本文徳天皇実録】略して文徳実録。10巻。嘉祥3(850)年から天安2(858)年にいたる文徳天皇一代の漢文・編年体の実録。はじめ貞観13(871)年,清和天皇の勅により藤原基経・南渕年名・大江音人らが従事。音人他界後,元慶2(878)年に基経・菅原是善・都良香らが再撰を命ぜられて翌年完成した。
【日本三代実録】略して三代実録。50巻。清和・陽成・光孝三代30年間天安2(858)年から仁和3(887)年にいたるまでの正史。漢文・編年体の実録。宇多天皇の寛平4(892)年に源能有・藤原時平・菅原道真・大蔵善行らに勅して編修が開始された。途中能有の薨去・天皇譲位のことがあったが,9年をへて醍醐天皇の延喜1(901)年に上進された。六国史中巻数は最も多いが,僅か9年で完成したのは,道真・善行ら,その人を得たためであろうといわれる。総じて六国史編纂の実務は参議や大外記の学者であって,続後紀は春澄善縄,文徳実録は都良香,三代実録は大蔵善行が撰者とされている。