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●陸運 りくうん

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 陸運とは陸上交通機関による旅客・貨物の輸送をいい,水運・空運の対語である。広い意味の内陸輸送であれば水上交通も含め,海運に対する用語として陸運ということもある。陸運の基礎施設は道路・鉄道・パイプラインなどであり,これらによる陸運業には国公私の鉄道・道路運送業・通運業などがある。また陸運という語は陸上交通と同じ意味で使われることがあり,英語では両者とも land transportation である。

【陸上交通】陸上は人類の主要な居住空間であるから,陸上交通は最も普遍的で,かつ重要なものである。陸上交通は一般に交通手段と通路の両面から研究されている。世界の各地における最も普遍的な交通手段を,徒歩交通・担夫交通などの原始的交通状態から,輸送用動物の使用をへて,車両や燃料を用いる近代的交通にいたるまで,発達段階に応じた配列を考え,それによって世界の交通地域の記載が行われた。これによると北極海沿岸は犬やトナカイによる橇の交通地域,その南にはタイガからステップ・砂漠にかけてロバやラクダの駄獣交通地域,ヒマラヤ山地には担夫交通地域が分布している。近代的交通地域には,ソ連や中国のように現在も鉄道が優位にあり,畜力を利用する車が補助的な役割を残している地域,西ヨーロッパやアメリカ合衆国のように,鉄道・自動車・内陸水路による交通が総合的に活用されている近代的交通地域などがある。近年は同一種類の交通手段が用いられていても,交通網の密な所と疎な所,交通頻度の高い所と低い所の違い,すなわち交通密度の高低の差を表現することも重視されるようになった。また同一地域内で各種の交通手段が競合することも,各種の近代的交通機関が普及するにつれて生ずる問題である。とくに担夫交通や駄獣交通が中心となっていた熱帯地方の密林のなかにも,整備された自動車道路や空港が介在することが多くなり,単なる交通手段の種類別だけによる陸上交通地域の区分は困難になってきている。通路の面からみると,交通網の平面形から幹線交通路とローカル交通路に分けることができる。進歩した社会においては幹線を利用する遠隔地間の交通と,ローカル交通に依存する終端の目的地まで到達する末端交通の両方をもつことが必要である。これら両種の交通がいかに結合しているかが,地域の交通の発達段階を示す貴重な指標となるのである。つまり陸上交通の研究は,単一の交通機関や個々の交通路の考察から出発し,各種の交通手段の複合的な結合関係や,地域に則しての総合的考察へと進んでいる。次に陸上交通と陸運とが違った意味で用いられる場合がある。この場合は主として,運送・運輸・輸送という語と交通とを違った意味に用いている。一般には運送とは貨物および旅客を一定の場所から他の場所に送り移すことをいい,運輸とは旅客および貨物を主として鉄道・自動車・汽船・航空機によって運び送ることをいい,輸送とは車や船・航空機などで人または物を送ることをさしている。つまり,運輸が最も厳密に交通手段や交通機関を規定し,運送は手段や機関を問題にせずに場所的移動の事実に注目し,輸送という用語は両者の中間的意味で使われているようである。そこで陸上交通を交通機関別に考察することによって,陸運の解説としたい。陸運を担当している近代的交通機関は自動車と鉄道であり,それらは道路網と鉄道網の上を移動している。これらに比べ担夫・駄獣・橇・荷車・牛馬車などは輸送力がきわめて弱く,組織的な輸送を行っている所はきわめて狭い。

自動車輸送】自動車は道路上を走行して旅客や貨物を輸送する車両で,独立した原動機をもち,架線や軌条を用いない。自動車が実用化されたのは20世紀の初めごろで,日本では1915年ごろからといわれている。現在先進諸国における自動車輸送量は,鉄道輸送量をしのぎ,世界的にみても最も重要な陸上の輸送機関となっている。自動車は出発地から目的地まで直接的に輸送できるので,便宜性・迅速性・機動性において優れており,少量の貨物を多数の目的地に早く送り届けるのに適している。その反面,大量の貨物の遠距離の輸送はコスト高になりがちである。しかし近年は高速道路網の完備や,トラックの大型化によって,大量貨物の遠距離輸送の分野にも,自動車の進出はめざましい。旅客輸送においても自家用乗用車の普及により,近距離や中距離の輸送において自動車の利用度が高まっている。自動車輸送鉄道輸送と比較すると,貨物においては集配や積み卸しが便利で迅速であり,速度も高速道路上では鉄道とほぼ等しいとみられる。ただし特別の積み卸しの設備の整った鉄道の石油や石炭・鉱石・穀物などの遠距離輸送では,自動車輪送のコスト高が目につく。船舶輸送と比較すると,積み卸しの荷役に要する莫大な時間と労力を,水上輸送のコスト安がカバーできるだけの大量かつ遠距離輸送において,はじめて船舶が利用されることになる。しかし近年はコンテナ化や専用船の利用および埠頭の機械化の推進によって,船舶輸送が合理化し,この分野への自動車の進出は停滞傾向にある。自動車が輸送の各分野においてめざましい活躍をしているのは,先進諸国において大量生産・大量販売方式を採用して躍進している自動車工業と,石油の大増産に依存する部面が大きい。しかし,自動車の激増は排気ガスによる大気汚染や騒音などの公害をはじめ,都市における駐車場の不足や道路交通の混雑など,種々の問題をひきおこしている。

【世界の自動車輸送】近年における自動車の保有台数の増加はきわめて顕著である。第二次世界大戦前の世界の自動車の保有台数は5,000万台程度であったが,戦時中の戦災や老朽化によって1946年には3,890万台に減じた。しかし世界経済の発展に伴って1961年には1億2,848万台,1973年には2億9,500万台,1981年には4億3,208方台へと激増している。総台数の多いのはアメリカ合衆国で,世界の37%を占め,ついで日本(9%)・西ドイツ(6%)・フランス(5%)・イタリア(5%)・ソヴィエト(4%)・イギリス(4%)・カナダ(3%),ブラジル・スペイン・オーストラリア・メキシコ(各2%),オランダ・アルゼンチン・ベルギー・南ア共和国・東ドイツ(各1%)の順になっている。人口100人当たりの自動車台数が多いのはアメリカ合衆国(69.3台)・カナダ(57.8台)・オーストラリア(50.7台)・フランス(41.7台)・西ドイツ(41.4台)・ベルギー(36.5台)・オランダ(35.1台)・イタリア(34.8台)・日本(33.6台)・イギリス(31.3台)の順である。国土が狭く人口密度の高い日本の人口当たりの自動車の台数がアメリカ合衆国の半分近くまで迫っているのは注目される。1961年から1981年までの20年間の自動車の増加率はスペインの21.3倍が最も高く,ついで日本の18.8倍,東ドイツの11.0倍,ブラジルの8.7倍,メキシコの8.3倍,イタリアの8.1倍などの順で,アメリカ合衆国の2.2倍,イギリスの2.5倍,オーストラリアの2.6倍,カナダの2.7倍などは伸び率の低い国で,これらはすでに自動車がよく普及していることを意味するものである。乗用車とトラックの比をみると,ソヴィエト・日本が比較的トラックが多く,その他の国々では自動車台数の大部分が乗用車である。なお諸外国の自動車輸送を量的に示す資料は入手が困難なので,保有台数の資料から推測していただくことにしたい。

【日本の自動車輸送】日本の自動車輸送は貨物で1,877億トンキロ,旅客で4,520億人キロ(1982)となっていて,国内貨物輸送の45.0%,国内旅客輸送の56.3%にあたっている。貨物では内航海運の47.5%よりやや劣るが,鉄道の7.4%の6倍にあたっている。旅客でも鉄道の1.5倍に近い。バスと乗用車の比率はバス23%,乗用車77%となっていて,近年乗用車の輸送量の伸びが著しい。1960年には79:21でバスのほうが多かったが1970年には36:64と逆転した。バスは乗用車と鉄道の中間的な性格をもち,乗用車よりは大量輸送機関である。バスの輸送量は日本経済の成長に伴って増加をつづけたが,1974年をピークに漸次減少してきた。それは著しい自家用乗用車の普及と,道路交通の混雑によるスピードやサービスの低下によるものである。一般に乗合バスは乗客の減少が著しく,過疎地域では赤字ローカル路線の廃止が相次いでいる。これに対し観光客を相手とする貸切バスは大型化とデラックス化に加えて長距離輸送に力を入れている。主として都市地域を走行しているハイヤーやタクシーも,近年は交通渋滞や自家用車の増加により輸送量は減少傾向にある。トラック輸送は“戸口から戸口へ”をモットーに,正確で早いという利点をもっている。近年は国道の改修が進み,高速道路も全国的に普及し,トラックも大型化してきたため,鉄道の貨物輸送の分野にも大幅に進出した。オイル=ショック直前の1971〜72年には一時的ではあるが,自動車輸送量が内航海運の輸送量をしのいだこともあった。最近はトラックの輸送量がやや伸びなやみの傾向にあるが,宅配便のような小口貨物を各戸に届けるサービスに力を入れ,この分野で新しい需要を開拓していることも注目されている。

【道路網】道路は最も基本的な交通路として,原始時代から現在まで絶えず社会・経済の進歩発達に貢献してきた。現在の自動車輸送の重要な地位は道路の画期的な改良に依存する部面が大きい。世界の各国では自動車輸送の効率を高めるために,高速道路の建設に力を入れている。アメリカ合衆国では主要都市を結ぶハイウエーがよく発達しており,通過交通のための幹線道路であるエクスプレスハイウエーや,有料のターンパイクやスルーウエー,ドライブを楽しむ人のためのパークウエー,料金をとらない高速道路のフリーウエーなど,種々の目的で走向する各種の自動車に適合した自動車道路が,全国土に普及している状況はさすがである。またアラスカ・カナダ・アメリカ合衆国・メキシコをへて,南北アメリカ大陸を縦貫するパン=アメリカン=ハイウエーの構想は雄大である。ヨーロッパでは大部分の高速道路が無料で,立体交差による一般道路との結合が密接で,自動車交通のスピードアップや地域産業の発展に貢献している。ドイツのアウトバーンはヒトラー時代につくられたが,現在は東西ドイツに分割運営されている。西ドイツでは1959年から道路整備に力を入れ,アウトバーンの延長は戦時中の2倍以上の5,300kmに達し,高速道路網が完成したといえよう。イタリアの太陽道路は1957〜70年にミラノ―ボローニャ―フィレンツェ―ローマ―ナポリを結ぶ738kmが建設され,北イタリアの工業地帯と開発の遅れた南イタリアを結合し,国内の産業開発や観光に利用されるほか,中部および北部ヨーロッパから太陽の光を求めてイタリア南部を訪れる国外の観光客にもよく利用されている。各国の高速道路の延長キロをみると,アメリカ合衆国69,200km,西ドイツ7,600km,イタリア5,900km,フランス5,700km,イギリス2,700km(1980〜81)となっている。日本ではこの20年間に道路整備の投資総額が GNP の2.3%程度ときわめて高いが,過去の道路整備があまりにも立ち遅れていたため,欧米の道路事情には遠く及ばない。高速道路は近年その建設が急速に進んでいるが,その延長は1982年度にようやく3,000kmを超えた程度で,自動車1万台当たりの高速道路は0.8kmで,アメリカ合衆国の5分の1以下,イギリスの2分の1程度である。道路の舗装率は最近ようやく50%を超えたが,市町村道では44%である。またバスのすれ違いが可能な車道幅5.5m以上の道路は全体の20%にすぎない。さらに自動車の保有台数が予想以上に急増しているので,大都市を中心に交通渋滞が著しくなっている。自家用トラックの場合など渋滞で輸送能率が低下するのを補うため,保有台数を増加するという,渋滞と車の増加のいたちごっこもみられ,バイパスや環状道路の建設も渋滞の解消の特効薬とはなりえない状況である。

鉄道輸送】鉄道はレールを敷設した専用の通路上を動力で運転する車両によって人と物を運送する交通機関である。鉄道は巨大な輸送能力をもち,大量輸送に適し,自然・季節的制約を受けることが比較的少なく,規則的に運行されるという利点をもち,工業の原材料や生活必需品などをたえまなく輸送し,現在の社会経済を支えるのに不可欠の働きをしている。しかし,道路が専用の軌条に限られるため,専用の引込線をもった大工場や大きな市場など以外では,起点と終点において自動車輸送などの補助的手段を必要とし,長距離の貨物輸送には操車場における貨車の配列の組み替え作業も必要となる。旅客輸送においても,自宅から駅までとか,駅から目的地までは徒歩とか自動車の利用が必要になってくる。つまり鉄道は線路を生活空間の末端にまで浸透させることができないし,駅の間隔もある程度の距離が必要なので,鉄道輸送は他の交通機関の補助を要する場合が多い。このような長所と短所をもつ鉄道輸送は,自動車輸送航空輸送に押され,多くの地域で減退傾向をたどり,路線の撤去に追い込まれているところも多い。現在鉄道輸送が重要な地位を占めているのは次のような場合である。[1]輸送需要のきわめて多い幹線交通路では鉄道輸送の採算がとれやすい(新幹線など)。しかしここでも長距離の旅客輸送は航空機に奪われる傾向が強い。[2]大都市地域内の旅客輸送においては地下鉄が主役となる。かつて華やかだった路面電車は,自動車の増加による交通渋滞の犠牲となって廃止された都市が多い。[3]巨大都市の郊外住宅地と都心を結ぶ通勤輸送は,地下鉄に連接する郊外電車に依存する部面が大きい。道路事情のとくに優れた欧米の若干の都市では,通勤交通もマイカーやバスが主体であるが,巨大都市の多くは鉄道への依存率が高い。[4]急勾配の山岳地帯などで,自然条件が厳しく道路の建設が困難な所(登山電車など)。[5]大量の貨物輸送の需要があるため,起終点の荷役施設が完全に機械化している場合。たとえば石油精製工場と内陸の石油基地間,港湾と製粉工場や製材工場・金属精錬工場などとのあいだの輸送はこれにあたる。また急を要しない大量の長距離貨物,たとえば穀類や肥料・飼料なども鉄道に依存する例が多い。つまり近年における鉄道輸送は,社会経済の急激な発展に呼応する特殊な部門や地域において,その長所を発揮し,きわめて重要な役割を果たしているが,他の多くの部門や地域においては,他の交通機関の攻勢を受け,著しい退潮傾向にある。

【世界の鉄道】各国の鉄道開業年次をみると,イギリスの1825年が最も早く,アメリカ合衆国1830年・フランス1832年・ベルギー・ドイツ1835年,オーストリア1837年,ソ連1838年などが早いほうで,カナダ1850年,インド1853年,日本1872年,中国1877年,フィリピン1892年などが遅いほうである。国別で鉄道の営業キロの長いのはアメリカ合衆国34.7万km,ソヴィエト14.2万km,カナダ6.6万km,インド6.1万km,中国5.0万kmなどで,日本は2.1万km余り(1981)である。面積100平方km当たりでは東ドイツの13.2km,西ドイツの11.4km,ポーランドの8.5km,イギリスの7.1km,フランスの6.3km,日本5.7km,イタリア5.5kmなどが長い。貨物の輸送量はソ連の3兆4,645億トンキロが断然多く,アメリカ合衆国の1兆3,417億,中国の5,701億,カナダの2,008億,インドの1,713億,ポーランドの1,127億(各トンキロ)とつづいており,日本は313億トンキロにすぎない。旅客の輸送量ではソ連の3,479億人キロにつづいて日本の3,149億,インドの2,172億,中国の1,470億の順となり,フランス・ポーランド・イタリアなどは600億〜500億人キロ程度で,アメリカ合衆国はわずか177億人キロ程度である。全体的にみてソヴィエト・中国・インドなどは広大な国土で,旅客・貨物ともよく鉄道を利用している。アメリカ合衆国は貨物にかたより,日本は旅客にかたよっている。ヨーロッパ諸国は面積あたりの鉄道が長く,旅客・貨物の輸送量も多いほうである。発展途上国のなかには,鉄道の発達をみないまま自動車や航空機が登場してきた国が多い。一般に社会主義国では鉄道の発展に力を注いでいるが,資本主義国では鉄道が斜陽化している。アメリカ合衆国は長いあいだ世界第1の鉄道王国であったが,1930年以降自動車の普及発達により,また第二次世界大戦後は航空路網の発達により,急激に旅客輸送量が減少した。また貨物輸送においても,ハイウエーの整備やトラックの大型化により自動車が進出し,石油や天然ガスの輸送もバイプラインに移るなど,鉄道会社の経営は悪化の一途をたどっている。イギリスは世界最初の鉄道が開通した国で,一時は鉄道の延長が3万kmを超えたが,現在は半減している。1947年にすべての鉄道を国有化したが,1968年にはイギリス鉄道公社として再発足した。経営の合理化を進めてはいるが,旅客・貨物とも輸送量は減少している。ロンドンを中心とした地下鉄網は,路線網が密で,都市交通に大きな役割を果たしてきたが,諸施設が老朽化してきている。フランスでは1938年に5大鉄道と国有鉄道が合併してフランス=ナショナル鉄道会社(SNCF)が設立された。第二次世界大戦の被害が大きかったが,戦後の回復は著しく,電化やディーゼル化も進んだ。パリとその近郊の地下鉄は路線網も密で,輸送量も多い。近年は世界最高の速度を誇るフランス新幹線が高い評価を得ている。ヨーロッパ国際特急(TEE)は1957年にフランス・西ドイツ・イタリア・スイス・オランダの5カ国間で運転され,その後ベルギー・ルクセンブルク・スペイン・デンマークにも路線網がひろがり,1日当たりの運転本数も50往復に近く,ヨーロッパの鉄道を代表する国際列車となっている。ソ連は鉄道の建設・改良に最も重点をおいている国で,営業キロ数はアメリカ合衆国より少ないが,輸送量では貨物・旅客とも世界第1位で,名実ともに世界第1の鉄道王国である。モスクワとウラジヴォストーク間9,297kmを結ぶシベリア鉄道は,所要時間169時間で世界一の長距離直通列車が走っている。

【日本の鉄道】日本経済の高度成長により,輸送需要は急増したが,国鉄を中心とする鉄道輸送は停滞ないし漸減傾向をたどり,膨大な赤字をかかえて経営難はその極に達し,その対策は重大な政治問題になっている。国鉄の旅客輸送量は1950年に691億(人キロ)であったが,1960年に1,239億,1970年に1,897億,1974年には2,155億と最高を示したが,1975年以降は漸減し,1982年には1,907億人キロとなっている。これに対し民鉄は1960年に668億,1982年に1,255億人キロとわずかながら対国鉄比を高めている。国鉄の貨物輸送量は1950年に333億(トンキロ)であったものが,1960年に536億,1970年に624億トンキロの最高に達した。その後に減少は著しく,1980年には369億,1982年には302億トンキロと最盛時の半分以下となった。民鉄の貨物輸送量は国鉄の2%程度できわめて少ない。このような鉄道輸送の停滞ないし衰退は,自家用車やトラックの普及発達によるものである。鉄道旅客は近年新幹線と在来線の特急が伸び,乗車距離帯別では301km以上の中・長距離帯が伸び,50km以下の短距離では国電区間だけが横ばいで,ローカル線の旅客の減少が目立っている。このため国鉄の経営改善には赤字ローカル線の廃止問題がクローズアップされている。国鉄は1949年に政府から独立した法人格をもつ事業体となり,いわゆる公共企業体「日本国有鉄道」に組織がえされた。これは公企業の新形態すなわち公・私の中間形態とみられるが,赤字問題の解決には思い切った組織の再編成が必要で,この際国鉄の分割民営に踏み切るべきであるという意見も出ている。国鉄の旅客輸送が伸びなやんでいるのに対し,民鉄の旅客輸送量は着実に伸びている。それは大都市内の旅客輸送を担当する地下鉄の輸送量が路線の拡大に伴って増大し,大都市近郊の通勤輸送も増加しているためである。しかし地下鉄の建設や近郊路線の輸送力の増強には莫大な資金を要し,私鉄の経営は苦しく,住宅地の開発や観光事業などのサイドビジネスに力を入れている。

〔参考文献〕佐波宣平『交通概論』1954,有斐閣

富永祐治『交通学の生成』1943,日本評論社

有末武夫『日本の交通』1968,古今書院