●ヨーロッパ共同体(EC) ヨーロッパきょうどうたい
AD1957
European Communities ヨーロッパ統合の思想が第二次世界大戦後結実し,ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(European Coal&Steel Community ECSC,1951年4月のパリ条約によって成立),ヨーロッパ経済共同体(European Economic Community, EEC, 1957年3月のローマ条約によって成立),ならびにヨーロッパ原子力共同体(European Atomic Energy Community, EURATOM, ユーラトム,EECと同時に設立)の三機関の統合体として構成されている。【設立】これらの内まず最初に設立されたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体は,1950年5月,第二次世界大戦後の西ヨーロッパの復興をめざすフランス外相ロベール=シューマンの提唱によって企てられた石炭と鉄鋼の共同市場設立の構想で,その設立を通して長年にわたるフランスとドイツの対立を抜本的に解消し,ヨーロッパの経済統合からさらに政治統合の実現への基礎固めという信念に由来する発想の成果であった。1951年4月18日パリで,ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体を設立する条約がフランス・西ドイツ・イタリア・ベネルックス三国の総計6カ国の間で成立した合意に基づいて調印されたが,これをさらに経済の全分野に拡大するために組織された西ヨーロッパの地域的経済統合体がヨーロッパ経済共同体であり,フランス・西ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの加盟国6カ国によってローマで調印された1957年3月25日には,同時にヨーロッパ原子力共同体も調印され,両条約とも1958年1月1日から発効した。次いで1966年4月,以上の三機関を統合してヨーロッパ共同体を設立する「三共同体単一理事会および単一委員会設立条約」が締結され,翌1967年7月1日に発効した。原構成国は三共同体と共通の6カ国であったが,1973年1月1日にイギリス・アイルランド・デンマークの3カ国が新たに加盟したので,正式加盟国数は9カ国である。これら9カ国は共同市場で結ばれ関税同盟を形成している。
【機構】ヨーロッパ共同体はこのような統合への原動力として,二つの行政機構をもっている。(1)閣僚理事会がその一つで,加盟各国の政府代表の構成する最高の決定機関であり,特定多数決方式を採用している。投票権はフランス・西ドイツ・イギリス・イタリアが各10票,ベルギー・オランダが各5票,アイルランド・デンマークが各3票,ルクセンブルクが1票の総計57票のうち,議決は6カ国,41票の賛成で決定される。(2)ヨーロッパ共同体委員会がその二つで,加盟国政府から独立した委員13人によって構成された常設執行機関である。そのほか加盟国議会から選出された198人の議員によって構成される諮問機関としてのヨーロッパ議会があり,さらにヨーロッパ共同体裁判所や経済社会評議会といったユニークな機関がある。ヨーロッパ共同体は「ヨーロッパ合衆国」建設への第一歩を踏み出したもので,ヨーロッパ主義者の長年にわたる悲願の結実というべき歴史的壮挙であり,西ヨーロッパ諸国間の経済機能の相互依存関係の強化のためにダイナミックな発展を遂げていることは確かである。しかし,ヨーロッパ共同体は民族国家の主権の壁を乗り越え,果たして国際的な政治統合を達成できるかどうかが,今後の課題として大いに注目されているところである。
〔参考文献〕マルシアル,赤羽裕・水上万里夫訳『統合ヨーロッパへの道』岩波書店