●嫁盗み よめぬすみ
アジア 日本 AD
日本の婚姻習俗のなかで,親とくに女方の親の承認が得られない場合に,主に男の若者仲間が立ち働いて女を聟方に連れてきてしまうものを言う。戦前期までの報告事例では九州地方に多く見られた習俗であったが,「嫁かたぎ」についての当人同士の事前の合意がある場合もない場合もあり,またなんらかの事情で女方の親の暗黙の了解が与えられている場合もあった。この習俗の婚姻史上での位置づけは十分明らかではないが,当人同士の合意がある場合は,男の若者仲間が女方へ「嫁をぼうた」旨口上にゆき,これが女方の者に捕まらなければその婚姻は成立するという事例のあるところから見ると,一つの婚姻方式として認められていたものと考えられる。なお,親の承諾が得られない場合に,「どらうち」と称して有力者の家に駆け込むなどという習俗が伊豆地方には報告されており,古くからの若者仲間の婚姻統制機能の衰退過程において生じた習俗であろうと考えられる。