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●百合若伝説 ゆりわかでんせつ

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 幸若説教浄瑠璃の語り物の主人公。百合若大臣と称する英雄が,異国遠征の帰途,家臣の裏切りにあって孤島に置き去りにされるが,愛鷹緑丸の助けで故国に帰り,叛臣を成敗するというあらすじである。本来は北九州を本貫とする伝説であるが,幸若説教浄瑠璃・歌舞伎などによって流布し,東北地方から沖縄地方にかけて広く分布する。これらは地方地方によりさまざまな形で分布し,たとえばダイダラボッチ系の巨人伝説は関東地方に,弓に関する伝説は瀬戸内海から九州沿岸に,異国遠征と海洋漂流譚は西日本と沖縄に,それぞれ集中する傾向が見られる。最も多く分布するものは緑丸の伝承で,東北から沖縄に至る各地に遺跡が見られる。多くは小鷹明神・鷹硯寺・お鷹堂などという社寺にまつられるが,これは鷹を幽界の神使としてまつる習俗と結合したものであろう。以上の分布状況はまた,異国遠征と海洋漂流とを中心とする百合若伝説の本貫が北九州であることを物語っており,宇佐をめぐる海人部(あまべ)の伝承と八幡信仰との関与が考えられる。またこの伝説とギリシアのユリシーズ伝説との相似がかつて坪内逍遥によって提唱されたが,両伝承の甚だしいモティーフの一致に着目し,16世紀の中葉,山口にユリシーズ伝説がザビエルの一行の何者かによりもち込まれ翻案されたかとする仮説が,ジェイムズ= T =アラキ氏によって再び出されている。なおまた百合若伝説と外国説話との関係については,前田淑氏によって『報恩経』の善友太子の物語の影響が論ぜられている。

〔参考文献〕中山太郎『日本民俗学論考』1933,一誠社

前田淑「日本各地の百合若伝説」福岡女学院短大紀要5・6

前田淑「百合若説話の成立に関する一試論」(紀要7)