50音順    検 索

●ユネスコ

AD 

 国際連合の専門機関の一つ。国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization=UNESCO)の略称。

【成立の経過】ユネスコの起源は,1924年に国際連盟の後援のもと,パリに設立された国際知的協力機関に求められる。この機関は当時,世界第一流の学者によって組織され多数の学術団体が参加していたが,その支持は民間人に限られていた。そして第二次世界大戦の勃発とともに自然解消し,後ユネスコによってその資産が受け継がれることになる。第二次世界大戦中期の1942年10月,ロンドンに亡命中のヨーロッパ諸国政府はイギリス政府の主導のもと,連合国文部大臣会議を開き,戦争によって荒廃した教育上の問題を検討した。次いで翌1943年にはアメリカ・ソヴィエトなどもオブザーバーとして会議に加わり,1944年にはアメリカの提案による教育文化復興機関の設立案が審議された。このような経過をたどった後,大戦終了後1945年11月1日から同16日までイギリスおよびフランスが中心となり,ロンドンにおいて国際連合教育文化会議が招集され,本格的に国際機関創設のための審議を行った。この会議は同年10月,すでに成立していた国連憲章の目的の一つである,経済的・社会的・文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて国際協力を促進することという趣旨を受けて進められ,その結果,〈戦争は人の心の中で生まれるものであるから,人の心の中に平和のとりでを築かなければならない〉という宣言文に始まるユネスコ憲章が採択された。また,この時にパリを本部とすることが決められている。同憲章は翌1946年11月4日に憲章所定の批准数を得て効力を発行し,ここに国連の専門機関としてユネスコが発足することになった。これを受けて同年11月16日,パリにおいて第1回ユネスコ総会が開会された。

【目的と任務】ユネスコは,世界の諸人民に対して正義・法の支配・人権および基本的自由の普遍的な尊重を助長するために,教育・科学および文化の普及と交流を通して諸国民間の協力関係を促進し,国際間の平和と安全に貢献することを目的とする。この目的を達成するに当たり次の三つの任務が定められている。(1)各国諸人民の相互理解を促進する仕事に協力することおよびこのために思想の自由な交流を促進する上で必要な国際協定を勧告すること,(2)各国諸人民のため,一般の教育と文化の普及とに新しい刺激を与えること,(3)各国諸人民のために知識を維持し,増進し,かつ普及すること,である。なおこれらの目的および任務は憲章前文に述べられている〈平和は,失われないためには,人類の知的および精神的連帯の上に築かなければならない〉という趣旨に基づくものである。

【加盟国】ユネスコの加盟国には加盟国および準加盟国の二種類がある。国連の加盟国はユネスコの加盟国となる権利をもち,国連の加盟国でない国は,執行委員会の勧告に基づき,総会の三分の二の多数の投票でユネスコの加盟国となることを認められることができる。いずれの場合にも加盟の手続き要件としては憲章の受諾書をイギリス政府に寄託することとともに憲章に署名することである。一方,準加盟国の地位は国際関係の処理について責任を負わない地域または地域群に対するもので,総会によって“準加盟国”として認められた場合に成立する。脱退の規定は第8回総会の憲章改正により設けられた。1983年11月現在,ユネスコの加盟国は161カ国に達し,準加盟国は3カ国である。なお,1945年のロンドンにおける国際連合教育文化会議に出席した国のうち,チリ・ニカラグアを除いた42カ国を原加盟国と称している。

【機構】ユネスコの主要機関は総会・執行委員会・事務局の三つである。また,ユネスコ自体の機関ではないが,大部分の加盟国がユネスコ国内委員会を設置しており,ユネスコと国内諸団体との連絡調整に当たっている。(1)総会 総会はユネスコの最高機関であり,主な任務としてはユネスコの政策と事業計画の主要方針の決定・執行委員会委員の選挙・事務局長の任命・国際会議の招集・予算の決定・国際条約および勧告の採択などがあげられる。会議は通常二年に一回開催される。各加盟国は総会において一票の投票権を有し,その決定は,ユネスコ憲章または総会の手続き規則の規定による場合を除いて,単純過半数によって行う。(2)執行委員会 執行委員会は総会代表のなかから総会で選挙された51人の委員によって構成される。ただし,その人選に当たっては,委員の行政的能力や経験,その地理的分布などにも考慮を払わねばならない。主な任務は総会の議事日程の準備,総会によって採択された計画の実施に対する監督などであり,通常総会の閉会中には総会に代わって委任された権限を行使する。なお,執行委員会は通常,年二回以上開催される。(3)事務局 事務局は執行委員会が指名し,総会が任命する事務局長および事務局長が任命する必要な職員によって構成される。事務局は総会や執行委員会の決定実施の責任をもつ。事務局の職員は専門職と一般職に分かれており,原則として前者は国際的に募集・採用され,後者は現地で採用される。(4)財政 ユネスコの財政は加盟国の分担金による通常予算および国連開発計画からの資金による予算外財源から成る。また,分担金は国連で決定された各国の分担率を基礎として計算される,1984〜1985年度通常予算のうち,アメリカ・ソヴィエト・日本・西ドイツの上位4カ国で全体の5割を超えている。

【活動】ユネスコは創立当初,戦争によって荒廃した教育の再建に重点を置き,文化的な国際協力体制の基礎づくりに専心した。しかし,やがてユネスコが理想とした活動と財政との間に不均衡を生じるようになり,事業計画の再検討が要請されることとなった。このような状況を受け,第5回総会(1950)では活動内容を分類整理した「基本的事業計画」を採択し,次いで第8回総会(1954)で事業を「一般活動」と「特殊活動」に分類,さらに「特殊活動」のなかでもとくに重要なものを「重要計画」と称して,それに活動の比重をかけることになった。たとえば第9回総会(1956)における「重要計画」としては,東西文化価値の相互理解・乾燥地帯の科学的調査などが採択されている。ところがアフリカの新興独立国が,大挙ユネスコに加盟した1960年代以降,活動の様相が急激に変容する。これ以降,ユネスコは開発途上国のための教育および科学技術に重点を置くことになり,実地活動が主流を占めるようになったのである。現在では,このような傾向を一層強めるとともに1984〜1989年第二次中期計画では,新国際経済秩序・新世界情報コミュニケーション秩序問題などが重点領域に取り入れられている。広範・多岐にわたるユネスコの活動内容は,現在,主に教育関係・社会・文化関係・自然科学関係に分けられる。教育関係の事業は,教育による国際理解増進を目的とし,そのため開発途上国における初等教育の拡充改善,国際理解のための教育を推進する協同学校計画の実施などが積極的に行われている。社会・文化関係では人権問題や古代遺跡の保存問題などに取り組んでおり,自然科学関係においては,科学技術を重視し,各国研究組織の改善,科学者の養成を目的とした国際研修事業の奨励など国際的な調整と促進の役割を果たしている。ただしユネスコの活動は,その性質上,加盟国に対する強制行動はなく,加盟国の自発的協力によって初めて可能となるものである。

【ユネスコと日本】日本は1951年(昭和26)パリで開かれた第6回総会によって加盟を承認された。これ以後,日本は「ユネスコ活動に関する法律」を制定し,ユネスコ国内委員会を設置するなど国内の体制を整え,ユネスコ内部においても執行委員会の一員としてユネスコの事業計画に貢献し,さらに各種政府間委員・理事会などのメンバー国として個々の事業活動にも積極的に参加してきた。また,アジア・オセアニアでの活動においても,「アジア地域教育刷新事業計画」や「東南アジア地域MAB計画事業」への財源拠出などにより国際的に高い評価を受けている。しかし近年,留学生のための制度・施設の不備,開発途上国に対する人的援助の不足など,一方では克服すべき課題も多い。