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●有畜混合農耕 ゆうちくこんごうのうこう

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家畜を飼養し、その畜力や糞尿を穀物栽培に利用すると同時に、作物の刈り残し部分を飼料として家畜飼養にも利用するといったように、穀物栽培と家畜飼養を有機的に結びつけた農業形態である。この有畜農業は、ヨーロッパで発達して、穀草式農業、三圃式農業輪栽式農業などとして知られている。穀草式農業では、同一の農地と草地に分けられる。耕地には小麦・大麦・ライ麦・燕麦などの穀物が主として作つけされ、草地は採草用や放牧用に利用される。耕地の地力が消耗すれば、そこを休閑地にして牧草地として利用することによって地力の回復を待つ。三圃式農業では、農地は永久牧草地と耕地に分けられ、耕地は冬穀地、夏穀地、休閑放牧地に3分され、3年周期の輪作が行われる。輪栽式農業では、中途に休閑をはさまずに、穀物類・根菜類・飼料作物類などを適当な順序で数年間にわたって耕地に作つけされる。

 この有畜農業は、機械力や化学肥料の導入によって、畜産物や乳製品の生産と販売に重点をおいた混合農業や酪農へと発展した。ヨーロッパ東部では、小麦・ライ麦などの食料作物とえん麦・トウモロコシ・ジャガイモ・根菜類などの飼料作物を作つけして、肉牛・乳牛・豚などを飼養し、自給的混合農業が経営されてきた。ヨーロッパの西部と中部では、商業的混合農業が経営されている。ドイツを中心とするヨーロッパ中部では、小麦・ライ麦・えん麦を栽培し、飼料作物を輪出し、豚を主とする家畜飼養と連関している。フランス・イギリス・北イタリアでは小麦を主体にした穀物栽培が盛んである。ヨーロッパ以外では、アメリカ合衆国のトウモロコシ地帯において、トウモロコシを主体にした牛の肥育と養豚が、高度な機械化によって商業的に経営されている。アルゼンチンのパンパスにおいても多角的な混合農業が経営されている。

 酪農は混合農業の特殊形態であるが、産業革命のあとに、まず北西ヨーロッパに成立した。現在では、北アメリカの5大湖沿岸、オーストラリア東南部、ニュージーランドなどにもひろがっている。スイスのアルプス山地では、移牧方式で酪農が行われている。

 ところで、ヨーロッパの有畜農業はもともと「地中海農耕文化複合」(中尾1966)にその起源をもつ。この文化複合は西アジアにその発祥地をもち、1万1,000〜9,000年前には、ヤギかヒツジと小麦を伴う農耕遺跡が発見されていることから、有畜農業は農耕の初期段階から行われていたと思われる。その発生は、養分の回復力が高いこと、より多くの家畜を飼養できること、労働力を効率的に使用できることなどの有畜農業の利点と関係していたが、これらの利点の複合的効果は経済的収支バランスと密接に関係しあっていた。 グリッグ(1974)は、ヨーロッパの有畜農業を発展させてきた三つの重要な契機として、中世初期の重い犂と三圃式農業の導入、休閉期間の短縮と飼料用根菜と牧草の栽培、産業革命以後の農業の集約化と畜産への傾斜などを指摘している。また、このような発展は機械や肥料などの工業製品の入手の便や生産物の販路の有無とその販売価格によって決定される生産コストと密接に連動しながら、都市の近くで生じた。

 有畜農業は、山岳高地の垂直的生態系においてもみられ、ヒマラヤ高地やアンデス高地で積極的に展開されている。ヒマラヤ高地では、三圃式農業が行われている。夏作物(トウモロコシ、シコクビエ)と冬作物(小麦、皮大麦)が休耕を含めた5年周期の輪作体系にもとづいて3区分された耕地で栽培され、収穫が終わった耕地や休耕耕地に家畜(ウシ、水牛、ヒツジ、ヤギ)が放牧される。アンデス高地の中間地帯では、ジャガイモを主体にした栽培が家畜(ウシ、ヒツジ)の放牧と有機的に結合したかたちで経営されている。山岳高地の有畜農業は垂直統御という枠組のなかで重要な構成要素になっている。

〔参考文献〕山本紀夫「中央アンデス南部高地の環境利用」国立民族博物館研究報告5−1、1980

藤岡謙二郎編『最新地理学辞典』1979、大明堂

C. R.W スペディング、山谷洋二訳『農業システム論入門』1982、共立出版


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