●ヤムイモ
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イモ類のなかでもディオスコレア属に属するものの総称。つる性の多年生植物で,根茎がイモになる。多くの種があり,世界の熱帯,温帯に分布する。ほとんどが局地的に分布するものであるが数種は栽培植物として広く分布し,利用されている。【アジア・太平洋のヤム】ヤムイモは東南アジアからポリネシアにかけて広がる根栽農耕文化地域を代表する作物の一つである。なかでもアラータヤムは最も広く分布して栽培されておりヤムイモの代表格である。日本ではダイジョといわれ九州の南部などに古くから栽培されていた。イモの肉質がち密で粘り気が強くトロロイモとして最高品に属する。原産地は東南アジアと考えられ,10世紀ごろまでにアフリカに伝わった。16世紀以降,アフリカから南米に伝えられた。今日,アラータヤムはアジア,太平洋諸島,アフリカ,中米など熱帯を中心に分布している。この地域のヤムにはほかにも多くの種があるが,アラータヤムに次ぐ分布を示すのはエスキュレンタヤムで,アフリカ,熱帯アメリカにも伝わった。また,ブルビフェラヤムもアラータヤムと同様の分布を示す。しかしこれは,古い時代には有用であったものの今日ではかえりみられず,イモは退化している。ただ,ムカゴは大きく多肉質でより利用しやすい。イモもムカゴも有毒で,食べる前に加工しなければならない。一方,日本や中国に産するナガイモはヤムイモの温帯型のものである。ヤムイモは食料として重要な位置を占めていた。太平洋のポナペ島ではかって,年間の食料の半分はヤムイモが占めていた。しかし今日では,世界的にキャッサバやサツマイモにとってかわられつつある。またヤムイモのマレー語名であるウビという呼称が伝播とともに,マダガスカル島からハワイにいたる地域に広がっている。日本のウモ,イモの名称もこの系統の語であろうと考えられている。
【アフリカのヤム】今日,世界で最もヤムイモの生産量が多いのはアフリカのギニア湾沿岸地方である。この地域はマードックによってヤム=ベルトと名づけられている。ここで主に栽培されているのは,その肉質の色から Yellow Yam と称される D.cayensis と White yam と称される D.rotundata である。ともに西アフリカ原産である。これらのヤムも16世紀に熱帯アメリカに移入された。イエローヤムの野性型はまだわかっていない。このヤムは湿潤熱帯にとくに適している。またホワイトヤムは,より乾燥した地域に適している。そのほか,アラークヤムなど東南アジアから伝播したヤムも栽培されている。西アフリカではヤムは,フウフウとかフォウトアと呼ばれるものに加工して食する。加工法は次のとおりである。まず,イモの皮をはいでゆでる。柔かくなったイモをウスに入れて餅状になるまでキネでつく。これをちぎって小さなダンゴ状にしておかずとともに食べる。フウフウの食べ方は東アフリカでウガリといわれている,雑穀の食べ方とまったく同じである。この加工法は,原理的にみて毒ぬきに起因しているのではないかと考えられている。
【アメリカのヤム】中米大陸やカリブ海地域で,主として栽培されている。この地域には16世紀以降奴隷貿易とともに,西アフリカからヤムイモが導入された。ヤムは多くのビタミンCを含み,航海中の食料として有用であったからである。東南アジアのアラータヤムや西アフリカのイエローヤムなどが栽培されるとともに,南米北部原産とみられているトリフィーダヤムも栽培されている。これは長さ15〜20cmの小型のヤムであり,カリブ海地方一帯に栽培される。原地ではその香味を尊ぶが,アテータヤムに比べると収量は劣る。西インド諸島ではヤムイモはコロッケに加工される。
〔参考文献〕中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』1966,岩波書店
中尾佐助『ニジェールからナイルへ』1969,講談社
岩佐俊吉『熱帯の野菜』1980,養賢堂