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●モーゼ

アジア イスラエル国 AD 

 古代イスラエルの宗教的指導者。エジプトでファラオの圧制に苦しんでいたイスラエル人を率いてエジプトを脱出し,「約束の地」カナンまで導いた。『旧約聖書』の最初の五書(「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」)は,彼の著作または彼の委託によって成立したとされ,「モーゼの律法(トーラー)」または「モーゼ五書」と呼ばれている。彼の生涯については「出エジプト記」「民数記」に詳しい。それによれば,出生後ナイル川の葦の原に捨てられていたところをエジプトの王女に拾われ,王宮で成人したモーゼは,その後一人のイスラエル人に暴行を加えていたエジプト人を殺し,ミディアンの地に身を隠していたが,ホレブの山(シナイ山)で神ヤハウェの召命を受け,エジプトに帰って,当時エジプトで外国人捕虜か奴隷のように苦役を強いられていたイスラエル人を率い,エジプトを脱出した。彼は「葦の海」(紅海)の奇跡により追手の軍団を振りきってシナイ半島に入り,この地でヤハウェと契約を結び,イスラエル人はヤハウェの民としてこの神を唯一の神と崇めることになり,十戒を授けられた。そして荒野をさまようこと40年,飢えと渇きと疲労に不満を募らせるイスラエルの民を苦難の末,「乳と蜜の流れる」約束の地カナンに導き,自らはその地に足を踏み入れることなく没したという。近年の研究の結果,聖書の語るこれらの出来事はその大筋において歴史的真実性に近いことが明らかにされており,その中心人物としてモーゼについても実在性が高まっている。なお荒野の旅のルートについては,北のルートと南のルートの2説に分かれ,また出エジプトの時期についても諸説があるが,一般に第19王朝ラメス2世治下の前1290年ごろと想定されている。