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●女夫盃 めおとさかずき

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 夫婦固めのしるしに飲み交す三々九度の盃のことで,現在の婚礼においては最も重要かつ厳粛な儀礼とされている。従来の婚礼では,祝言当夜婿が不在であることも少なくなく,姑と嫁の親子盃に関する記述が多いのに反し,女夫盃はその語ですらほとんどみられない。わずかにそれを意味すると思われる語が,新潟から秋田にかけてのムスビサカズキ,関東のアイ盃,西日本のコンコン盃などがあるにすぎない。婚礼の形式が儀礼面において定形化されたのは室町時代以降のことで,はじめは武家階級のあいだだけで行われていた種々の儀礼が,しだいに庶民のあいだにもひろまっていった。しかし女夫盃に関しては,一般に普及したのは比較的新しく,近年までは女夫盃のない婚礼式も珍しくなかった。女夫盃よりも親子盃を尊重する風潮は,近世以降の婚姻が支配的な家父長制のもとに成り立っており,妻として夫に添うよりも,家長や姑に仕えることが先決であったからである。