●村岡典嗣 むらおかつねつぐ
アジア 日本 AD1884 明治時代
1884〜1946(明治17〜昭和21)近代の日本思想史学者。丹波篠山藩士末裔で東京浅草生まれ。1906年(明治39)早稲田大学哲学科卒業。大山郁夫・杉森孝次郎と同期。のちジャパン・デリー・ヘラルドと日独報動記者をつとめ,1915年(大正4)早稲田大学講師,翌1916年(大正5)陸軍士官学校助教授,内田銀蔵の推挙で1920年(大正9)広島高師教授,1924年(大正13)帰国後東北帝国大学文化史第1講座担当。日本思想史を講じ,その後東京文理科大学教授併任,早稲田大学・東京帝国大学講師をつとめる。その出世作は『本居宣長』(警醒社,1911)であり,この本で日本精神史方法論の原型をつくっている。宣長学をもって,アウグスト=ベックの文献学の変態と考えている。村岡は佐々木信綱と親戚筋で,言葉の風雅を尊重している。波多野精一門下で西洋哲学史・古代ギリシア史にくわしい。ヴィデルバンドの影響を受けその訳業につとめている。したがってカントの批判哲学の方法を拡大し,価値哲学文化哲学を確立した人であるから価値に重点を置く。村岡はていねいに個別論文をつみ上げ,思索を重ねている。このしつこさは概説でもつねに推敲に推敲を重ねた村岡の学風といえよう。村岡は日本思想史学の確立につとめた。これも広義の文化史のなかに位置づけられるものと考えた。いいかえると一種の文化主義哲学の前提に立っている。村岡史学の出発点は『本居宣長』にあり,今一つは『神皇正統記』にもあった。これが日本思想史の2本の柱とし,「国民精神の渕源」をさがし求めている。論文集に『日本思想史研究』全4巻(1930〜49)・『神道史』『宣長と篤胤』『国民性の研究』『日本思想史概説』『日本思想史上の諸問題』などがある。