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●虫送り むしおくり

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 稲作の病害虫駆除を目的にした呪術。稲の病虫害は一般に“蝗(いなむし)”の害と考えられ,駆除法は江戸時代に油の利用が普及するまで,もっぱら虫送りによったといえる。大発生の原因が悪霊のわざのように観念されたため,虫の姿で出現した悪霊を丁重に鎮め送ることにより被害を排除しようとしたのである。その方法は疫病送りに似た一定の形式が見られ,葬列野辺送りにも共通する要素がある。具体的な方法としては,虫を捕えて小枝・輿・藁馬などに乗せて送る場合と,薬人形や蛇形・御幣などの依代を送る場合とがあった。人形を送る例は各地に見られたが,西日本では斎藤実盛の伝説に付会され実盛人形が送られる例が広く,蛇形を送る例は津軽などに見られた。これらの依代を虫霊または御霊の形代に見たて,藁馬や舟などの乗物に乗せるなどして,いずれも村内を行列し,松明や鉦太鼓の音,囃ことばや念仏などの呪言などによって,村境や海へ送り出す形式をとる。単に念仏などの効果だけで送り出そうとする例もある。虫送りも,本来は臨時に行われたが,虫害が毎年繰り返されるうちに恒例化したものと考えられ,とくに大飢饉をひきおこした1732年(享保17)ウンカの大発生に際して行われたものが定着した場合が多いとみられる。近年は農薬の進歩などにより急速に消滅し,芸能化されたものなどが若干伝承されるにすぎない。

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