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●民俗社会 みんぞくしゃかい

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 アメリカの人類学者レッドフィールドによって唱えられた地域社会の一類型で,未開社会でもなく,同時に都市社会に対置される社会として設定された概念である。レッドフィールドはメキシコのユカタン半島の村落調査やインド・中国の農村調査を通して都市化・文化変容の研究に関して成果を上げているが,彼によると民俗社会は小地域性・孤立性・同質性・強固な集団団結・慣習化した生活様式のほか,伝統的自然的無批判的な行動,血縁関係や制度が経験の範疇を決定しているなどいくつかの特質を備えているとされる。また〈組織された伝統的生活様式があって,自立的・連続的・完結的な一社会の全成員がそこに参加し,かつ諸個人の生涯の,そして地域社会各世代の,すべての欲求に応えるもの〉が文化であり,それは民俗社会にあって,大都市には存在しないとも述べているが,孤立性の減退や暴質性の増大によって民俗社会の解体化・世俗化・個人主義化がもたらされるというように,固有の文化をもつ一方で他文化との接触によって変化をきたす社会であるとする。レッドフィールドが設定したこのような民俗社会の概念を日本の社会にそのまま適合することはできないが,村落の都市化現象をとらえる上では参考とすべき点が少なくない。

【民俗文化を保持する社会】レッドフィールドが提供した意味での民俗社会とは異なり,民俗文化を維持する社会あるいは民俗文化を濃厚に保持する社会という意味で,日本民俗学ではしばしば民俗社会の用語を用いており,かつ民俗文化を維持する最小の単位を片カナのムラで表してきた。

 民俗学が言うムラは,行政村としての“村”とは異なりあくまで抽象的概念であるが,社会学者である鈴木栄太郎が第二社会地区と呼び,神社祭祀・共同労働・共同祈願などに見られるような社会的統一性をもち,〈そこに人々の行動原理としての独立の精神〉が存在する“自然村”という概念に近く,旧藩制村に当たる大字や部落をより現実的なムラととらえてきた。

 理念型としてのムラは,ほぼ以下のものと言えよう。ムラはそれを構成する最小単位としての〈家〉の連合体であり,その内部はいくつかの〈組〉に区分されているとともに,年齢集団を初め諸集団が包含されている。同時に寄合いによってムラの総意が決められそれをもとにムラの役職が運営する。ムラの構成員は一定の権利と義務をもち,ムラの規約・慣行慣習に従いムラ仕事に出なければならないが,ムラの諸行事・共有財産に参加する権利を有する。

 このようなムラのあり方は,あくまで理念型であり現実のムラは時代差・地域差によってかなりの変差をもっている。たとえば地縁に基づくムラも,出身集団である本家分家,あるいは擬制的親子関係が強いムラ,〈家〉を単位としながらも年齢階梯制が濃厚に認められるムラなどとそうではないムラとがあり,さらにはムラの内部区分である〈組〉があたかもムラと同様のあり方を示している場合もある。また寄合いが毎年定期的に開かれるムラと,臨時の寄合い以外はほとんど開かれることなく役職者の協議によって決められてしまう場合とがあり,役職者にしても代々一定の〈家〉が務めている場合,家よりも個人の資質を重視する場合とに大別される。つまり現実のムラのあり方は,歴史的・自然的・経済的諸条件によって決定されていると言えるが,概して東日本では本分家関係・擬制的親分子分関係が強固な同強型・家格型の村落が顕著であるのに対して,西日本では本分家関係がゆるやかな無格型村落が顕著であると言えよう。

 しかしながら,1960年代以降の高度経済成長に伴い民俗社会は大きく変貌を遂げており,山村や僻地の農漁村では過疎化現象が進みムラの維持を困難にさせている一方で,大都市周辺のムラでは人口の急増などによって旧来のムラのあり方が変貌している。