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●民族誌 みんぞくし

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 現存する諸民族の生活様式=民族文化全体を,現地調査に基づいて体系的に記述することを目的とした文化人類学の一分野。民族誌は異文化の人々のいわば“人物像”を記述する目的をもった分野であるから,当初は研究者側の誘導尋問を避けるため,異文化の担い手自身による自文化の意味づけや差違の指摘を発見し,これを記述することに努めていた。これは文化の内面からの記述と称される方法だが,実際には,研究者側からの観察による,文化の外面からの記述としばしば混同した記述が多かった。そこでしだいに記述には実証性・客観性が重視されるようになり,民族誌には厳密な定義に基づく特殊専門用語の使用が不可欠とされるようになる。しかし,人々の全生活を人類学の専門用語ですべて描くとなると,当然のことながら,実際に生活している人々にとって意味ある概念やカテゴリーと専門用語とは必ずしも対応しない結果となり,かえって異文化理解にはつながらなくなってしまうことになる。そこで,研究者側の項目調査主義やそれに基づく偏見と実際上の民族生活と記述との乖離を防ぐため,まず異文化に生活している人々の“知識の体系”そのものを理解し,その発見に努めようとする新民族誌の試みが,認識人類学の名の下に行われ始めている。民俗分類の発見がその成果の一つであるが,この新民族誌の研究傾向が果たして新傾向の研究法であるか,かれらの用いる厳格な方法論が新傾向の民族誌的研究をもたらすか否かについては,まだ議論の余地が残っている。ただし新民族誌と称される研究が,民族誌の記述に対して再考を促したことは否めず,民族誌研究も新たな段階を迎えようとしている。