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●民間説話 みんかんせつわ

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 言語伝承ないし散文伝承の一種で,一定の構造や形式を備えたもの。民間の慣用語として,ムカシまたはムカシコなどと呼ばれたので,民俗学の術語としてもそのまま昔話ということばが用いられる。それとともに,英語の folktale,フランス語の conte populaire,ドイツ語の Marchen または Volksmarchen などと比べられるので,民間説話・民話・民譚などということばも当てられている。しかも,それらのヨーロッパ語の意義は必ずしも一致するものではないので,民間説話などの解釈もそれぞれの研究者の立場によってかなり著しく相違するのである。

【意義と特質】厳密な意味における昔話の特質は,神話や伝説などとの対比によってかなり明確に捉えられると言えよう。19世紀の初頭に,ドイツのグリム兄弟によって,昔話(Marchen)と伝説(Sage)との対比が試みられているが,その説を受けて,柳田国男の『木思石語』には,次のような両者の相違が示されている。すなわち,第1に,昔話は誰からも信じられていないが伝説はある程度まで信じられている。第2に,昔話は「昔々,ある所」の物語であるが,伝説はどこか決まった場所と結びついている。第3に,昔話は何か定まった形式をもっているが,伝説は特にこれという型をもたないというのである。日本民俗学の研究によると,昔話の形式上の特色は,発端の「昔」「とんと昔」「昔があったけど」などの文句,結末の「どっとはらい」「昔まっこう」「いちご栄えた」などの文句,中間の「…そうな」「…げな」「…とさ」などの叙法というように,主に三つの部分に表れているという。もっとも,そのような説明のことばはあくまでも一応の原則を示しただけであって,実際には何らかの話型にかなうものが,かならずしもその通りの表現をとるわけではない。

【範囲と分類】先に挙げた術語の範囲は,それほどたやすくは定められないが,これまでの研究の大勢として,folktale や conte populaire というのは,広い意味の民間説話に当たり,Marchen や Volksmarc-hen というのは,厳密な意味における昔話に限られると言えよう。

 アールネおよびトンプソンの『昔話の型』では,広い意味の民間説話が扱われ,動物昔話本格昔話と笑話というように大きく三つの部門に分けられたが,後にその増補版で形式譚も加えられた。

 関敬吾の『日本昔話集成』『日本昔話大成』では,この三部の分類を取り入れながらさらに独自の昔話の整理が進められている。それに対して,柳田国男監修の『日本昔話名彙』では,先の本格昔話に当たるものだけが特に完形昔話として取り上げられ,そのほかの因縁話・化物話・笑話・鳥獣草木譚などはすべて派生昔話として扱われている。もっとも一層厳密に考えると,この『名彙』における完形昔話とアールネの分類による本格昔話とは,必ずしも完全に一致するものとは言えない。そのような柳田の見解は,とくに昔話の発生について,極めて大きな示唆を含んでいるが,あくまでも一つの仮説にとどまるようである。

 しかし実際に,本格昔話とそのほかの昔話とは,発生の序列とかかわりなく形式・構造・伝承性などさまざまな観点から,明らかに区別されるものと言えよう。

 1937年の口承文芸の国際会議では,散文形態の口承文芸の分類案がまとめられたが,それによると,広い意味の民間説話が単一と複合という二つの形式に分けられており,単一形式を備えたものとして動物寓話と笑話と伝説とが挙げられ,複合形式を備えたものとして,伝奇譚と奇異譚とが挙げられている。

〔参考文献〕柳田国男「昔話覚書」「口承文芸史考」『定本柳田國男集』6,1963,筑摩書房

関敬吾『民話』1955,岩波書店

同『日本の昔話−比較研究序説』1977,日本放送出版協会

吉沢和夫「民話の再発見」国民文庫版811,大月書店

桜井徳太郎「昔ばなし」塙新書44,塙書房