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●民間信仰 みんかんしんこう

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 特定の教祖・教理体系・教団体系をもたず,その地域の住民の日常生活のなかから自然発生的に形成された前宗教的・呪術的な信仰形態をさす。一般的には俗信・迷信・卜占・禁忌・呪術の類を意味するものであるが,新興宗教や既成宗教のなかにも民間信仰的な性格をもつものが少なくなく,学術用語としての定義づけは完全にはなされていないのが実状である。原始未開社会に多く見られる自然崇拝と祖霊崇拝がその核となっており,農耕社会のなかで変貌を遂げつつ伝承されていったものである。現代社会においても創唱宗教の下部構造として,あるいは日常生活のなかの宗教的心意に根をおろしてわれわれの生活に極めて自然に溶け込んでいる。日本における民間信仰は,その中核に氏神信仰をもつ。祖霊崇拝を源流として氏族単位で支持されてきたと見られる氏神信仰は後世変質して産土(うぶすな)・鎮守の形で一般に伝承されている。また,氏神信仰は家々の神棚に勧請された勧請神信仰や,仏壇の先祖供養・盆正月の魂祭り行事などと関連があり,壇那寺に結びついた墓制や葬制に伴って残っている死霊に関する観念や,慣習などとも深く結び付いている。これらの信仰の多くは分化と変質を経ながら特定の集団を基盤とし,集団の守護神的なものとして支持されており,その祭祀の方法や祭祀団の構成に多くの古いしきたりが残存しているのが見られる。仏教の理説や信仰もまた,山岳信仰や葬送呪術などのような民間信仰と結び付き,広く民間に浸透していった。それは各神社や大社への参拝を契機とした同信者の“講”などであるが,特に伊勢講・秋葉講・大峰講・念仏講・観音講・山神講・子安講・庚申(こうしん)講などの特定の集団内で行われる祭祀行事を主とするもののなかに古い自然宗教の形で民間信仰が残っている。これらは集団の生活機能に関係しており凝集的性格を帯びているものが多い。また民間信仰のなかで開放的な形を残しているものとしては野辺や路傍に勧請された石碑・壇・塚・草堂石祠など各種の伝説・行事を伴って自然宗教の形で伝えられているものなどを挙げることができる。村々の民間年間行事・漁・農・狩・林・鉱の生産儀礼,商工諸職の職祖神信仰・日の古凶・夢占い・相齢・相性・方角・手相・人相などの形として表れている民間信仰は,禁忌や予兆の観念を伴って広く各地で行れており,職業的な行者・祈祷師・巫女類の活動の基盤をなしている。このほか,俗信には民間療法としての種々のまじない・共同幻覚による幽霊・古い神々の転落した姿と見られる妖怪変化・狐狸(こり)・河童(かっぱ)などがある。また山民や漁民の間には,“山の天狗倒し”・“火の玉”・“火の神の太鼓”などの怪音・怪火や海坊主(うみぼうず)・船幽霊などの信仰が残っている。これらの俗信のなかには,時代を経るとともにその根拠が不明となり迷信化したものも多くあり,なかには動物霊の憑物(つきもの)現象など,実害を伴いながら広く流布しているものもある。民間信仰の発生・流布は村落を中心に行れてきたが,実際の具体的普及・指導には,下級宗教である神人(じんにん)・行脚僧・聖(ひじり)・巫女・行者・御師(おし)・陰陽師・座頭(ざとう)など主に漂泊遊行者によって行われた。これらの民間信仰は,直接,神道・仏教などの理説とは関係をもたないものが多いが,しかし特定の社寺と直接関連をもったものもあり,仏教・神道とまったく異質の信仰と見ることはできない。

 日本の民間宗教は,民族にとって独特の自然宗教とさらに古くからの仏教・神道が結び付き,上から下へ教え布教されるというよりは,民衆間に自然発生的に発生し浸透していく性格を有してきた。そして,今日でさえも形をさまざまに変え,少しずつ衰退の道をたどってはいるが残存しており,民衆生活の一つの基盤をなしていると言える。

 その歴史的明確な区分は,類似性などを比較することである程度変遷の跡を類型的にたどり得るが,決して容易なことではない。

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