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●ミトラ崇拝 ミトラすうはい

ヨーロッパ イタリア共和国 AD 

 帝政期のローマで最も有力であった密儀宗教。ミトラの語は「計量」「計量者」を意味するサンスクリット語に由来し,ミトラ神は歳月の計算者すなわち太陽神,人間のあいだの契約・正義の神とされる。アーリア人の神で,ゾロアスター教では,善神アフラ=マツダの仲間と考えられて,光と密接に関係している。ミトラ崇拝はヘロドトスの時代にはギリシア人に知られていたが,彼自身はこの神を女神と誤認していた。イランから西方に伝播する過程で,ミトラ崇拝は占星術の傾向をもった多くの外的な,ことにメソポタミアの影響を吸収した。プルタルコスによれば,ミトラ崇拝は,ポンペイウスが鎮圧したキリキアの海賊によって西方世界に伝えられたといわれるが,その崇拝は長いあいだ,外国人や下層民のあいだに限定されていた。ミトラ崇拝がローマ帝国内に伝播したのは,フラウィウス家のウェスパシアヌス帝のアルメニア平定,トラヤヌス帝のパルティア征服,ハドリアヌス帝の治世(117〜138)以後,軍隊の移動や商人の旅行に伴って行われた。したがって,崇拝の遺跡はローマ軍駐屯地や港に限定されている。知られている限りでは密儀への参加は男性にのみ許されていたが,ミトラ崇拝は史料的にもほとんど明らかにされず,実態はきわめて曖昧である。