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●未開社会 みかいしゃかい

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 未開社会とは文字の使用を行わない社会をさす。“未開”の用語には,“文明”との対比のなかで否定的な含意が存在するため,近年ではこうした社会に対して〈無文字社会〉の用語がしばしば用いられている。以下,未開社会に特徴的な社会構造について述べてゆこう。

【居住集団】採集・採猟を行う人々の多くは,しばしばバンドと呼ばれる移動性集団を構成する。バンドは50人位の小規模なものがほとんどであり,バンド内やバンド間の政治的統合は稀薄または存在しない。バンド内では職業は専門化することはなく,性と年齢の区別以外に,身分的差別を社会的にうみ出すことはない。政治的指導者は,その能力によって,その状況に応じて認められるのであって,制度化された規則がつねに働くわけではない。定住的集団としては村落が構成される。村落が親族集団と合致する例もアフリカなどに存在する。村落が集合して村落連合をつくり,さらには国家まで形成していくこともある。アフリカのシルック王国や,インカ帝国・アステカ帝国に見出せるのがこれである。

【親族組織】未開社会において家族・親族のもつ意味は大きい。家族がバンドの構成単位となり,あるいは単系的出自集団―氏族やリニージが政治的単位となる例はしばしば見出せる。ほかにも出自集団は祖先崇拝や士地所有・婚姻規制・血誓等の単位となる。また出自集団内における系譜的位置関係がその者の社会的・政治的役割と地位を決定することがしばしばみられる。こうした社会はとくにアフリカに顕著に見出せるが,他地域にも数多く存在している。また自己中心的な親族組織―キンドレッドが社会生活全般にわたって重要な機能を果たすような未開社会が各地より報告されている。

【結社】地域社会内には多様な結社が構成されている。一つは性別組織で,男女の性差にもとづくものである。とくに顕著なものは男子秘密結社である。これはメラネシアやアフリカにしばしば見出せる。結社の成員が男子用の家屋をもち,その結社への加入儀礼などは秘密にされ,彼らの営む儀礼がその地域社会の豊穣と深く結びついている。また年齢によって集団化を行う“年齢集団”も多くの社会に見出せる。これは2種類に区分され,多くは男子によって組織される。一つは同じ時期に生まれたあるいは成人式を迎えた者たちがのちに一生を通じて組を形成する「年齢組制」である。また「年齢階梯制」と呼ばれるそれは,男子を幼年・青年・老年の3段階にわけ,とくに青年層を細かく階梯に分け,その階梯ごとに社会的役割を付与するものである。東アフリカではこうした年齢集団が数多く報告されており,ほかにもオーストラリア,ニューギニアなどにもみられる。

 未開社会は一般に人口規模は少なく,小規模な社会内で生活が営まれる。男女による役割分化−分業はいずれにおいてもみられ,年齢による差異も存在するが,文明社会・都市社会ほど全社会的な役割分化はみられない。未開社会においては社会的階層分化が精緻に進んだ例は少ないが,ポリネシアやアフリカ,ミクロネシアの一部などでは,貴族・平民・奴隷といった階層が存在している。未開社会はけっして完全な平等的社会というわけではない。それぞれの社会において,個人の性別,親族組織内の位置,年齢,身分的階層あるいは個人的能力などが,その社会の規準に従って個人に社会的位置と役割を付与し,社会生活が営まれてゆくのである。

 ところで,以上のような未開社会の社会構造に対する科学的な研究が始まったのは,19世紀初め,パリ民族学会設立のころとみる見方が一般的である。当時は,西欧諸国が全世界に植民地を求めていく時期であったから,どうしても未開社会を“野蛮”とみる見方が主流を占めていた。現在の文化人類学は,その諸研究の成果を基礎としながらも,“野蛮”的観点を脱し,人類の普遍的特質をみると同時に,未開と文明を等価として考え,探究を進めている。

〔参考文献〕ボック,江淵一公訳『現代文化人類学入門(二)』講談社学術文庫,1977,講談社

蒲生正男他編『文化人類学』有斐閣双書,1969,有斐閣