●未開 みかい
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“未開”とはその一社会の物質文化,生産技術の単純,未発達の状態を指す。“文明”に対して用いられる概念であり,文字が使用されていないことが,一つの大きな特徴である。【未開と経済的形態】最も未開である原初的経済的形態は採集・狩猟段階である。アフリカのピグミー,ブッシュマン,オーストラリア原住民,エキスモーなどがこの状態にあるものとして知られている。道具は木器・石器・骨角器がその大半をしめる。また植物や獲物を求めて一定の領域内で移動を行うことが多く,季節によってその社会生活が異なってくる例も多い。たとえばエスキモーでは夏には移動して,狩猟・採集活動を行い,冬には雪の家に居住するといった例もみられる。また男女の分業は顕著であり,男性は狩猟,女性は採集に従事するのが通常であり,多くのカロリーを採集に依存している社会がほとんどである。農耕の開始については諸説があるが,野生植物の採集から発展したものであろうとする説が有力で,採集に従事していた女性が農耕の主役となる例が多い。未開状態での農耕はほとんどが耨耕(ドウコウ)であり,鍬・鋤・掘棒などによって耕作を行う。耨耕状態では地力の回復が悪く焼畑農耕を行うことが多く,1年あるいは2,3年ごとに耕地を移動してゆく形態がとられる。焼畑農耕は南米・東南アジア・アフリカ・インドなどにしばしばみられる。しかし耨耕であっても,インカ帝国やアステカ帝国・東南アジアの水稲栽培民などでは定着的な農耕が行われている。未開の牧畜は,最も粗放的である“遊牧”形態がよくみられる。その地域は旧大陸のステップと砂漠を中心とする一連の乾燥地帯およびツンドラ地帯である。遊牧民は食用植物を畜産品との交換によってあるいはその採集によって入手し,また半牧半農の形態をとることもある。このように“未開”の状態にある社会では生産効率は悪く,富の集中が行われず,都市や強大な国家を構成することはまれであるが,インカ帝国,アステカ帝国やアフリカの部族国家のような中央集権的組織をもつこともある。
【未開と宗教】未開における宗教は,その社会の精神的生活の中枢をなすのみならず,政治・経済・社会生活と密接な関連を有している。未開宗教は,教祖をもたず,整備された教義もなく,教団の類を欠いている。未開状態においては宗教は単に精神的側面においてのみ独立的に存在することはなく,未開宗教の宗教的職能者が,政治的権力者や指導力であったり,宗教的行為によって社会的制裁を行う例が多い。また超自然観がその宗教的体系を形成し,宗教儀礼が世界観を反映していることがしばしばである。また精霊が人間から動植物さらには無生物に到るまで存在するとするアニミズムも未開社会に数多く存在する。未開の宗教的職能者には,供犠や祈祷を行う司祭,呪力によって現実社会の問題を解決する呪術師,また超自然の存在と交信し,霊界と人間界を媒介するシャーマンが特徴的である。また王が“聖なる存在”として神格化され,王の精神・肉体的力がその国家の繁栄を決定するというように,王権も超自然的力に依存している例が,アフリカの王国などにしばしば見い出せる。このように未開の状態においては,人間の生活は超自然的世界との深い関連のなかで営まれているのである。