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●継子話 ままこばなし

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 継子話は日本の民間説話のなかでもことに人気のあるものの一つである。その構成は,継母に虐待された継子が,亡き母や山姥,友人,動物などの援助によって,最終的に幸福な結末(婚姻など)にたどりつく場合と,継母に殺された継子が不思議な力(継子の亡魂が鳥になるなど)によって,継母に仇を討つという,大きく二つのパターンが有力である。

【継子の物語】継子話は民間説話だけではなく,日本の古典文学作品にも多くみられる。たとえば,平安時代の『落窪物語』は継子の虐待を主題としてストーリーが展開する。しかし,継子苛めが主題とはならなくとも,たとえば『源氏物語』における藤壺中宮と光源氏,紫上と夕霧,紫上と明石の姫君などの人間関係は,継母と継子である。日本古代の多妻を許すような家族形態のもとでは,継母と継子の関係はそう珍しいものではなかったのである。また,それゆえに,継母と継子との葛藤の物語は,身近な興味から人口に膾炙したらしく,『源氏物語』の「蛍」の巻には,〈継母の腹きたなき昔物語も多かるを,心見えに心づきなしとおぼせば,いみじく択りつゝなむ,書き整へさせ,絵どもにも書かせ給ひける〉とあって,継子物語が広く語られていたようすが窺える。

【中世小説での展開】中世に入ると,継子話は中世小説(広義の御伽草子)のなかで,いっそうの展開をみせた。代表的な作品としては,『住吉物語』『ふせや』『秋月物語』『岩屋草子』『一本菊』『小落窪』『花世の姫』『朝顔』『朝顔の露の宮』『花みち』などがある。さて,中世ともなると,現行の民間説話と対比できる話も現れてくる。たとえば,『神道集』(14世紀中ごろの成立)所収の「二所権現の事」では,「お銀小銀」の昔話のモティーフを認め得るし,『うばかは』や『鉢かづき』などの話は,現在も民間に伝承されている。

【民間説話の継子話】日本では,近世において,ほぼ現行の昔話伝承の形態が整えられたと考えられるが,ことに継子話はそのなかでも伝承の厚いものである。『日本昔話大成』によると,継子話には,「米福糠福」「米埋糠埋」「皿々山」「お銀小銀」「手無し娘」「姥皮」「鉢かつぎ」「灰坊」「栗拾い」「継子の苺拾い」「七羽の白鳥」「白鳥の姉」「継子と鳥」「継子の釜茄」「継子と井戸」「継子の蛇責」「継子と魚」などがある。これらをみると,「灰坊」を除くすべての話が,女性の継子を主人公としており,継母と継娘の女の葛藤の物語であることがわかる。個々の話型をみると,「米福糠福」は西洋の「シンデレラ(灰娘)」と同じサークルに属し,〈継子〉対〈継母・本子〉という葛藤の図式がなりたつ。これと同様の図式は「米埋糠埋」「皿々山」「姥皮」「栗拾い」「継子の苺拾い」などがあげられる。これらの話には継子の幸福な結末が語られる。また,「お銀小銀」は虐待される継子を本子が救い,二人は継母からの難を逃れて月と星になるという〈継子・本子〉対〈継母〉の葛藤の物語となっている。「手なし娘」は海外にも広くみられる。「七羽の白鳥」「白鳥の姉」は南西諸島に伝承されており採集例は少ない。以上が幸福な結末を迎える話であるのに対して,「継子と笛」「継子と鳥」では継子は殺されて,その魂の化身の竹(笛),鳥が継母を告発するという話である。「継子の釜茄」「継子の蛇責」などでも継子は殺されるが,これらは世間話風に伝えられることが多い。

【継子話の意味】継子話は世界各地に分布しているが,日本において著しい発達を遂げている。その原因には日本の古代の家族形態の影響とみる立場がある。さらに,継子話の意味について,二つほど説を紹介しておく。一つは,継子虐めを,民俗社会における成女戒の反映とみる民俗学的解釈,二つには継母を母性原理の象徴とみて,そこから自立する人格を継子にみる深層心理学的解釈である。

〔参考文献〕関敬吾関敬吾著作集・1 昔話の社会性』1980,同朋舎