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●マサイ族 マサイぞく

アフリカ ケニア共和国 AD 

 ケニア南西部からタンザニア北西部にかけて居住しているナイロ=ハム系の牧畜民。マサイ族は単一の部族というより,歴史的・社会的に形成された部族の集まりの総称である。彼らにとって“真のマサイ”とは,“牛を飼う者”であり,農耕民となった部族はマサイとはみなされず,また鍛冶屋など職人氏族はマサイのなかでけがれた者とされる。マサイ族は自分たちの神話のなかで,地上のすべての牛は神からマサイに与えられたと語り,その牛を略奪するための他部族襲撃は東アフリカ一帯で恐れられていた。他の諸部族より人数が多いわけではない彼らの襲撃戦力となったのが,その美貌と勇敢さで知られる年齢階梯的な戦士階梯モランである。マサイの年齢階梯は,大きく未成年・戦士(モラン)・長老・老人の四つに分かれるが,モランはまだ結婚を許されぬ階梯で,長老たちの具現する調和と秩序とは対立する存在であり,神から選ばれたしるしとしての恍惚状態と不服従を美学とするモランを導くことができるのは,世襲的な予言者(ライボン)だけであった。現在は襲撃が禁止された上に,19世紀の予言者継承をめぐる抗争と牛疫のために様相が大きく変容している。