●マウイ神話 マウイしんわ
北アメリカ アメリカ合衆国 AD
ハワイにはマウイ島があり,ニュージーランドの北島がマウイの魚といわれるほか,ほとんどすべてのポリネシア諸島に,マウイという神人に関する神話や伝説があり,ミクロネシアやメラネシアの一部にもその影響が残っている。マウイという第2級の神について最初のヨーロッパ人の記録は,キャプテン=クックのタヒチでの見聞である。そしてマウイ神話の最も形の整ったテキストは,ニュージーランドのマオリの酋長の伝承を,サー=ジョージ=グレイが記録し1885年に出版されたものであり,そこではマウイ=ティキティキ=アタランガという名で,ティキティキは頭髪のマゲ,アタランガは母親の名とされている。マウイの生涯についてはポリネシアの島により,あるいは部族によって多くのヴァリエーションがある。アタランガは母親でなく父親となっている神話が多いが,多くの説話に共通しているのは,マウイの荒唐無稽な多くの行動のなかで,空を押し上げて人が自由に立って歩けるようにしたこと,太陽をしばってその運行を遅くしたこと,カヌーに乗って海中から島を釣り上げたことの三つである。それはクマラ(サツマイモ)がポリネシアに伝来したことに関連して,酋長のための食糧生産など,労働で苦しかった生活から解放されること,農耕や採集の労苦から解放されて余暇ができること,クマラのおかげで従来住めなかった島が住める島になったこと,などを教える意味をもって解釈する説がある。ポリネシアに多くのマウイ神話が残っているのは,マウイが第2級の神で信仰の対象というよりは,文化的英雄として語られる存在であったため,19世紀初頭から渡来したキリスト教伝導者によって,抹殺されなかったからだといわれる。マウイをクマラの擬神化とするのは,もちろん一つの試論にすぎないが,マウイ神話はポリネシア人の発展とも関連して興味深い。