50音順    検 索

●本途物成 ほんとものなり

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 近世(江戸時代),田・畑(屋敷を含む)に課せられた“本年貢”で,これ以外の各種雑税を総称して小物成という。米納が基本で,一部分,または地域により代金納もあった。幕府は全国の幕領(御料・天領)で,各大名はその領国内で,検地を行い,全耕地に石高をつけ,それを村ごとに集計して“村高”を出すが,それに対して課せられ,これが,領主財政収入の中心となった。

【石高制と年貢】検地は,村や町の田および畑・屋敷を一筆ごとに丈量し,上・中・下などの等級をつけ,さらに石盛斗代)を掛けて,それぞれの石高を出した。石盛は1反歩当たりの米の収穫量を示すもので,各等級の田畑の坪刈りから算出した平均収量で,地域によって違いがあるが,上田12(1反歩当たり1石2斗),上畑10(同じく1石)などと定められている。米をつくらない畑にも石高がつけられたことが特色である。この石高制にもとづく村高に対して課せられた年貢は,村民各人の所持地(持高)に応じて割賦され,村役人の責任で徴収され,納入された。これが“村請(むらうけ)制”である。

【定免と検見取り】年貢の率や額を定める方法には,まず毎年の実収量を調べ,豊凶によって年貢額を決める“検見(けみ)取り”がある。一方,数年から十数年の収穫量を平均して,それに対する租率(年貢率)を定め,一定期間,豊凶によらず定率とする“定免法”がある。その場合でも,大凶作の時などには,村からの嘆願で,検見を行って減免することもあり,定免制を停止することを“破免”という。定免の場合には,収穫量が増えても貢租額が増えず,農民の手元に余裕が残る場合もあった。検見法でも,通常は畝引検見(反取検見)で,田・畑の等級ごとに,1反歩当たりの収穫の定率の租率が課せられるが,8代将軍吉宗の代(在職1716〜45,享保1〜延享2)の享保改革では,有毛検見による貢租増徴策がとられた。それは,耕地の等級や石盛にかかわりなく,全耕地を坪刈りして,実際の収穫量を調査して,それに租率を掛けることにしたものである。収量増加分も査定の対象になったわけである。とくに近畿の高生産力地帯にこれが適用された。

反取り厘取り】年貢賦課のやり方も,幕領の場合,関東では反取り,関西では厘取りといった。反取りは,反別に直接貢租を課すもので,上田一反に“取米七斗”のように示され,その石盛りと石高はなくともよい。厘取りは,上田一反の石高一石二斗に対して,“租率五ツ八分三厘”,取米七斗,のように示される。

【畑方金納と石代納】年貢は米の現物納であるといわれるが,すべてがそうであったわけではない。米作とは無関係な畑地にも,田と同じく,米の収穫量にかかわる石高がつけられているが,畑から米は納められない。米納を一定基準で代金納にするものを,一般的に“石代納(こくだいのう)”というが,関東の幕領では,畑方は“永納”であった。米二石五斗を永1貫文に換算して納めた。反取りの場合も,上畑1反歩につき永250文,という具合に定められる。この“永”は,もともとは室町時代以来広く使われてきた明の永楽銭のことであるが,江戸時代には,金1両=永1貫文の換算で,実際には金で示されるものであった。また,関西の幕領では総貢租額の3分の1を銀納,3分の2を米納とするのが一般的であった。代金納の場合には,近辺の町々の米相場などから,換算の比率が定められていた。

【割付けと納入】村々へ年貢を割付ける令書が“年貢割付”(免定,可納割附)である。これには,本途およびその付加税のほか,各種小物成,幕領の場合の高掛三役(伝馬宿入用・六尺給米・蔵前入用)など,各種の賦課がすべて示されている。村役人は,各人ごとの所持地高をまとめてある“名寄帳”にもとづいて村民にそれを割賦し集め,10月〜12月に2〜3回に分けて代官所などへ納入する。村では各人の納入状況を記録する“年貢勘定帳”がつくられる。納入のたびに“小手形”という受取りが下付され,完納すると“皆済目録”が出される。農民からの減免要求や,直接徴収にあたる役人との対立から一揆がおこり,また村内でも,村役人の不正が問題となるなど,折にふれてさまざまな問題を引き起こすのも,この年貢徴収が原因である場合が多い。“五公五民”すなわち年貢率5割というようないい方もよくされるが,実際の賦課方法は,上に述べたとおり,単純ではない。しかし租率が時代につれて高くなっていくことはなく,農民が負担の過重を訴えるのは,新開田畑への賦課,大河川修復経費を割付けるなどの国役金,宿駅に人馬や金銭を出す助郷役,そして村の諸経費(村入用)の負担など,あらゆる負担を総合的にみた結果といえよう。明治時代になった後も,1871年(明治4)ごろまでは,江戸時代の貢租制度はそのまま引き継がれた。1873年に開始される地租改正によって,根本的な制度改変になった。

〔参考文献〕大石慎三郎校訂『地方凡例録』上・下,近藤出版社