●ポリス
ヨーロッパ ギリシャ共和国 AD
都市と周辺村落からなる古代ギリシアの都市国家。本来は単なる町の意味であるが,中心市がポリスと呼ばれ,都市国家全体もポリスと呼ばれた。地中海全域に散在するギリシア人の都市国家はすべてポリスと呼ばれ,その数は数百におよび,国政や国家組織はすべて異なる。集住(シュノイキスモス)という,市民の都市への移住や外国への植民によって成立する。集住には,各村落の首長のみが城塞に移住するもの(アテナイ),全住民が集住するもの(ローマ),征服民のみが集住して中心市を形成するもの(スパルタ)などのタイプがある。各村落の王であった者たちが集住して貴族階層を形成するために,原則としてポリスの成立で王制は消滅する。集住時の主宰者(アテナイの場合はテセウス王)や植民団を引率する指導者は死後,都市建設者として英雄崇拝を受ける。すべての都市国家はたとえ架空の伝説であれ,都市建設者とその崇拝をもっている。一方,ギリシアには古典期末に初めてポリスを形成した地方,最後まで村落生活をつづけ,部族国家以上に拡大しなかった地方も存在する。【都市】アクロポリス・アゴラ・城壁が一般に都市の基本的施設。その他,諸官庁・浴場・運動競技場,劇場なども都市には不可欠である。アクロポリスは城塞化された丘で防衛拠点・崇拝の中心地で国家守護神の神殿がある。アゴラは商業交易の市場で同時に市民(軍隊)の集会場所。部族的集合のために部族の名祖英雄像や標石があった。城壁はスパルタの例外を除いて集住時に建設され,市域の拡大のために幾度もつけ足しされた。
【領土】ポリスは一般に山や海など自然的障害物に遮断された孤立的一地域に成立した。複雑なギリシアの地形から概して領土も人口も小さく,住民数も数千人から数万人が一般的。戦勝が領土拡大と結びつくことも稀で,スパルタやアテナイの場合は例外的である。アテナイは人口20万〜30万人,ポリスの成立可能な平野を四つ,スパルタは三つもっている。
【構成】市民・自由な非市民・奴隷の3種類の住民で構成された。市民権は世襲され,時に特別功労のあった外国人・非市民・奴隷に賦与された。植民市の場合は発足時の成員に与えられた。市民は戦士共同体・崇拝共同体・生活共同体の成員として強い共同体意識をもった。したがって,ポリス維持に必要な政治・軍事・財政上の義務に忠実で法を遵守し,生活の全領域をポリスに規制された。市民権やその内容はポリスの政体によって変化した。自由身分の非市民にはアテナイの居留外国人(メトイコイ)・スパルタの周辺民(ペリオイコイ)などがあり,おもに商工業や農業に従事した。アテナイの場合,人頭税(メトイキオン)や軍役,時には対国家奉仕までも課せられ,一方,参政権・不動産所有権・告訴権を欠き,居住や告発には市民のパトロンを必要とした。主に商工業に従事したため経済的に繁栄するポリスに集中し,アテナイには1万〜2万人,スパルタには農民として3万人が存在したといわれる。奴隷は,家庭・農業・商工業・鉱山など多方面に多数使用され,国家も警察官や行政書記として国有奴隷を使った。奴隷供給源には負債・戦争捕虜・購買・人拐い・出生奴隷などがあり,アテナイに5万〜6万人,スパルタには市民数の十数倍の農奴が存在した。
【制度】政治は民会・評議会・諸官職によって運営されたが,それぞれの役割や性格は貴族政治・寡頭政治・民主政治・僣主政治などポリスの政体によって変化した。司法権は評議会と官職に分散されていたが,民主政期には陪審法廷に集中され,官職による裁判は下級の予備裁判に限られた。市民皆兵で,財産等級に従って騎馬兵・重装歩兵・軽装兵または艦隊乗組員(操船員・漕手)として従軍し,武具と3日分の食糧は自弁であった。
〔参考文献〕アリストテレス,山本光雄訳「政治学」『アリストテレス全集15』1969,岩波書店