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●ホメロス

ヨーロッパ ギリシャ共和国 AD 

 ギリシア最古の叙事詩である『イリアス』『オデュッセイア』の作者であるといわれている。彼の時代については,古代の諸説は一致していないが,前9世紀ごろであり,生地は小アジア沿岸のスミュルナ(現イズミル)であろう,といわれている。彼の作とされる両叙事詩は原作のままで現在に伝えられているのではなく,前6世紀にソロンあるいはペイシストラトスが,それまでに散乱していたホメロスの詩を結集させ,前3世紀にアレクサンドリアにおいて文献学的研究にもとづいて校訂したものである。ホメロスに関する最大の問題は,ホメロス自身の存在は認めるとしても,『イリアス』と『オデュッセイア』がともに彼の作であるのかどうか,別人の作ではないのか,また,両詩は彼一人によってつくられたのか,ということである。これを「ホメロス問題」という。このような疑問はすでに古代からあったが,近代において一人のホメロスを否定する見解が公表されて,ギリシア学の重要な問題となった。文字のない時代に長大な詩をつくり伝承することは不可能であり,短い詩のつなぎ合わせによって初めて可能であると考えて,ホメロス単一説が否定された。このような主張に対して,現在では,ギリシア人が非常に古い時代に文字を知っていたことが明らかにされている。確かに両詩のあいだには矛盾があるが,両詩は読むよりは,時の必要に応じて部分部分が朗唱されたのであり,多少の矛盾は聴衆には問題にならなかった。現在の支配的な見解によれば,両詩の素材はホメロス以前からすでに部分的に多くの叙事詩によってうたわれ,彼はそれらを自分の作品のなかに編み込んで長大な詩をつくりあげた,とされる。両詩のなかには言語上の矛盾がみられるが,ギリシア方言学の発達は,ホメロスの言語はギリシア東方方言群に属するイオニア方言を基礎としてアイオリス方言がまじっているものの,そのなかには多くのきまり文句や特有の形容詩や句を含む人工語があることを明らかにした。近代の諸研究は,ホメロスが一人の詩人であること,彼が長大な両叙事詩の作者であることを承認している。

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