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●方言地図 ほうげんちず

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 言語の要素(語,音など)を単位にその地域差を地図の形にしたもの。地図を表示物または展示物として利用するもの(資料図)と,地図自体を道具として地理的分布から歴史的変遷を推定するもの(解釈図)とがある。資料図には,語形をそのまま記入するもの(たとえば『フランス言語図巻』)と語形を符号に変えて記入するもの(たとえば『日本言語地図』)とがある。解釈図は,歴史的変遷を推定したその結果を効果的に見せるように描いた地図とも言える。『日本語地図』で「しあさって」の方言分布を見ると,凡例に「ユーカ,ユファーなど」とあるようにいくつかの語形が一つにまとめられている。こうまとめられたのは,これを一つにして表示したほうが歴史的変遷に対応する地域差がよく見えるからである。また,シアサッテやヤノアサッテの場合のように,情報がすべての市町村から集められたわけでもないのに,線や点を印刷した紙(スクリーントーン)を張りつけて地域を埋めつくしてあるのは,未調査の地域も近くの既調査の地域と同じであろうという解釈が加わっているからである。

【言語地図の描き方】まず,主な地形・道路と行政区画・調査地点ぐらいを記入した基本地図(白地図)を用意し,情報を地点ごとに記入する。情報は抽象的な形の符号(ゴム印)に変換しておく。歴史的変遷をうまく表現するのには符号の形自身にも工夫がいる。符号は,大小・濃淡・方向・形の四要素に支配されるが,一般に大きいほど目立濃いほど目立つ。形は,○□×のような抽象的なものがよい。ゴム印で押したものは,スタンプインクより黒の印肉のほうが鮮明に出る。さらにゴム印を押すよりも,レトラセットなどのすでに印刷されたものを張りつけるほうが鮮明に出る。最近,言語地図は計算機で容易に描くことができる。符号も何百とつくることができる。計算機による作図は,部分的に描き直すのにも地図間の語形を比較するのにも極めて便利である。さらに,地図を描く前の語形の分類に威力がある。一般に方言情報は多種多様,その数も一項目で何百になることも珍しくないので,考え得るあらゆる分類を試みることは計算機ならばできる。それらの分類によって描いた言語地図のうちから最も有意味な分布を示すものを人間が一枚選び出せばすむ。しかし,こうした分類・作図はまだ実用化していない。

〔参考文献〕W. A. グロータース『日本の方言地理学のために』1976,平凡社

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