●便所 べんじょ
AD
大小便をするところ。便所にはさまざまな名称があり,カワヤ,セッチン,ハバカリ,ウラ,カド,スギヤ,ウツシヤなどという。カワヤは川屋の意味で古く川の上に小屋がけして便所としたことにもとづくとも,母屋の側に別棟でつくられるので側屋の意味だともいわれる。セッチンは禅家のことばで雪隠と書き,北にある厠を称し,ほかを東司,西浄,登司(南の厠)といった。便所の名称には,屋敷のなかで周縁的な位置にあることを表現したものが多い。昔話のなかでは,便所は此世と異界の境,異界への入口,変身の場とイメージされ,雪隠参りをはじめ産育儀礼や人生儀礼のなかでも新しい魂や身分を獲得する場とされている。便所は汚ない場所として一方的に排除され忌まれているが,糞便は下肥として大地にまかれ,作物を成長させる肥料ともなったから,以前は汲取りの権利も大切なものとされた。便所をきれいにすると安産するとかきれいな子供が生まれるとひろくいわれ,便所に便所神を祀る風も各地にみられる。