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●ヘッセ

ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD1877 ドイツ帝国

 1877〜1962 ドイツの詩人・作家。1923年以後スイス国籍。南西ドイツの小さな町カルプに牧師の子として生まれ,聖職者になるための教育を受けたが,すでに少年時代から詩人への憧れが強く,学校教育への適性を欠き途中で挫折した。以後機械工場の見習や書店の店員などをしながら詩作を行う。ホフマンノヴァーリスなどのドイツ=ロマン派の詩人から強い影響を受けた。1904年に小説『ペーター=カメンチント』によって文壇での地位を確立。『車輪の下』(1906),『ゲルトルート』(1910),『ロスハルデ』(1914),『クヌルプ』(1915)などが前期の代表的な作品である。濃い感傷と抒情に彩られたこれらの作品は,自然と人間との汎神論的調和,学校生活の悩み,感受性の悲劇,創作家の孤独,夫婦生活の破綻などを自己の生活体験にもとづいてそれぞれ主題化したものであった。第一次世界大戦の勃発はヘッセの芸術に決定的な転機をもたらした。以後彼は,“運命愛”の詩人として“内面への道”を根底的に深めていった。この時期に匿名で発表された『デミアン』(1919)においては,善と悪,明と暗とが共棲する存在の二面性に対して鋭い凝視のメスが入れられており,破壊と混沌を通じての再創造というヨーロッパ文化の死活にかかわる問題がここに提起されている。以来ヘッセは,対決すべき自我や時代の問題を回避せず,ロマン=ロランとともに戦争に反対し,頽廃し堕落したヨーロッパ文明を否定し,人間性本来の立場を擁護する孤独な真理の探求者であった。『荒野の狼』(1927)においては,『デミアン』で扱われた存在の二元性の問題は詩人の自我の分裂の問題として,さらにラディカルに追求されている。現代文明・市民道徳の頽廃と欺瞞を容赦なく批判するがゆえに,詩人自身は“荒野の狼”として市民社会のアウトサイダーにならざるをえない。この自己破滅の危機からの脱出の道を暗示しているのは精神の遊戯的次元であるフィクションの世界であった。このような危機の克服というテーマは,ヘッセの作品の総決算ともいえる長篇『ガラス玉演戯』(1943)においてさらに総合的に形象化されている。この後期の大作は,形式的にはゲーテの『ヴィルヘルム=マイスター』のパロディとして書かれた教養小説の一種であり,内容的には現代文明を超えた未来小説である。この小説は20世紀に大混乱を迎えた人類の行く末に教育的見地から指針を与え,近代ヨーロッパの誤れる進歩思想を排し,古典古代以降の教養的知性の総体に立脚した,文明の危機の克服とユートピアへの道を示唆している。上記作品のほかに『クリングゾルの最後の夏』(1920),『シッダルタ』(1922),『ナルチスとゴルトムント』(1930)などがある。1946年ノーベル賞受賞。

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