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●兵児親 へこおや

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 男子の成年式時に結ばれる擬制的親子関係の親。つまり民俗学でいう仮り親の一種で,中国地方の一部と九州北部一帯の呼称。長野県の褌親,岡山県の褌親・まわし親と同種である。ムラ内の知人,親類,あるいは有力者に兵児親を依頼し,褌を贈ってもらうことにちなむが,年齢は数え年13歳または9歳と,成年式のうちでも早期のものであるところに特色がある。褌をもらう若者は兵児息子などと呼ばれる。その後,親子は生涯にわたって親密な交際を続け,長崎県小値賀島のように兵児親の死亡時に,兵児息子が棺をつくって贈る慣習のあるところもあった。同じく13歳ごろにオバ(伯叔母)から褌を贈られて締めるオバクレフンドシの慣習が各地にみられたが,この場合には擬制的親子関係は結ばれることはなかった。なお,以上のほかに成年式時の擬制的な親としては男子の烏帽子親,女子の鉄漿親,筆親などがあるが,腰巻を褌と称した地方では女子のそれを褌親と呼ぶ例もあった。一般に成年式時の擬制的な親は,成年式の介添人,あるいは若者や娘の保証人・後見人としての性格が強く,幼児期の擬制的親子関係のような呪術性は稀薄な感がある。しかし擬制的な親は,本来は若者や娘が子供としては死に,大人として再生するにさいしての重要な保護者の役を帯びていたと推測されるので,その意味では呪術的存在であったと考えられるのである。

〔参考文献〕柳田国男『族制語彙』1943,日本法理研究会

江守五夫「成人式の原義」(蒲生正男他編『文化人類学』)1967,角川書店

平山和彦「成年式と一人前」『青年集団史研究序説(上)』1978,新泉社