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●壁画 へきが

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 建築物内外の壁体や天井面,柱などに描かれた絵画の総称であるが,その種類はさまざまのものがある。約2万年前にさかのぼる旧石器時代の洞窟内壁画は,絵画の始源ともいうべきもので,狩猟の対象であった野生動物をきわめて写実的に岩壁に描出した。

【西洋の壁画】古代の宮殿内部の壁面に描かれた絵,たとえばクレタ絵画や,古代エジプトの墓室内の壁に描かれた墓絵,そして古代ローマの地下墓地(カタコンブ)にみられる壁画類は,技術は稚拙であるが表出内容に装飾性や信仰上の要素をもち,絵画成立の条件を満たしている。壁画は直接壁面に描くものと,他の材料に描いたあと,これを壁面に取りつけるものに大別されるが,いずれの場合でも建築物の種類,壁面の大小に左右され,建築物の内部装飾に重要な役割を果たしている。壁面に直接描く場合,描画法には多くの種類がある。岩壁に直接顔料を塗りつける原始絵画はさておき,まず古代,中世の壁画にみられるフレスコ画とは,なま乾きの壁土の上に水で溶かした絵具で一部分ずつ描き上げていく手法で,壁土の石灰は壁の乾くにつれ,絵具と結合し表面に薄い層をつくり,色彩を固定する。短時間に仕上げる必要から精細な表現は困難である。フレスコの上に卵黄,蜂蜜,いちじくの汁などで溶いた不透明水絵具で描くテンペラ画法で重ね仕上げをする描法もあり,テンペラは中世の板絵に常用されていた。一方,初期キリスト教美術ビザンツ美術では,壁面および天井にモザイク画が採用された。モザイクとは,表面を彩色された石,ガラス,金属,木その他の細片を壁面に埋めこんで模様や絵画を形成するもので,壁面積の大きい教会堂の内部装飾に,赤・青・緑・黄・さらには金・銀を使った華麗な色と光沢は,著しい荘厳さをもたらした。ゴシック建築の巨大な窓は,開放的な窓と異なり壁面の一部と考えられるから,この窓を飾るステンド=グラスも壁画の一種といえよう。これは金属成分によって種々に着色された半透明のガラス板片を適当な大きさ,形に切り,鉛棒で熔接して,絵や模様の板としたものを窓にはめこんだもので,今日ではより広い範囲で活用されている。一方,他の材料に描き,または印刷したものを壁面に貼りつけたり,取りつけたりしたものは,近代の壁画に多く採用されている。まず普通の油絵のようにカンヴァスに油絵具で描いてのち,壁面に貼るもので,19世紀以後ではピュヴィ=ド=シャヴァンヌ(1824〜98)がその代表的画家であり,パリのパンテオンの壁画『聖ジュヌヴィエーヴ』は有名である。近代にいたり室内装飾が発達すると,印刷された壁紙や壁布を壁面に貼りつけるようになるが,これも壁画の一つに数えられよう。

【東洋の壁画】東洋の場合も壁画が建築物の壁面装飾として発達したことはいうまでもないが,建築物の様式と構造に応じてそれぞれ独自の形式と技法が考えられ,また建物の使用目的によっても,壁画の表出内容はさまざまな変化をみせている。インドのアジャンタや,中国の石窟寺院の場合は岩壁に直接描くが,日本,中国の木造建築の壁面は,土壁か板壁であり,地塗りをあらかじめ施してから描いたり,また絹紙に描いたものを貼りつけたりすることが多い。1949年(昭和24),惜しくも焼失した法隆寺金堂外陣の大小壁画12面は,土壁の上に描かれたものであったが,近年発見の高松塚古墳壁画も同時代の7,8世紀ごろの成立と推定され,題材・技法の比較も興味深い。木造建築の壁画の場合は,天井や柱,扉,杉戸,さらには襖,障子類までも壁面として考えるべきであろう。寺院内壁画の例をあげると室生寺金堂の板壁に描かれた彩色画(伝帝釈天曼荼羅),平等院鳳凰堂内部の扉・側壁・後壁の仏画,醍醐寺五重塔初層壁画(板絵)が名高い。時代が下り,日本の安土桃山時代は障壁画の全盛期であった。城郭・殿邸・寺院の方丈,仏殿内部の壁面,襖,杉戸に金碧極彩の濃絵(だみえ)が描かれた。

〔参考文献〕土居次義・山根有三監修『障壁画全集』1966,美術出版社