50音順    検 索

●ブルジョワ

ヨーロッパ フランス共和国 AD 

 英語のバージェスにあたるフランス語。中世の都市の市民をさすことば。

【概念】社会科学の用語としては,マルクスの定義により,資本主義的生産関係のもとで,無産労働者すなわちプロレタリアと対峙する資本家のこと。階級全体をさすときにとくに「ブルジョワジー」と呼ぶ場合もある。社会的生産手段を所有し,プロレタリアを賃金労働者として雇っている雇用者層でもある。歴史的にはブルジョワは,近代社会の支配者層であり,彼らが政権を握る過程が「ブルジョワ革命」(市民革命)である。しかし,たとえば17世紀イギリスの「ブルジョア革命」とされるピューリタン革命や名誉革命で指導的役割を果たしたのは,主として地主=ジェントリやロンドン商人であって,産業資本家といえるような人々ではない。産業革命以前の近代にあっては,ブルジョワジーの主力は商業資本家や農業資本家だったのである。この意味では「ブルジョワ」の実際的なあり方は時代によって異なっていたことに注意しなければならないが,いずれの形態のブルジョワも,封建社会の枠組をつき崩し,その残滓を一掃するという意味では,近代史上積極的な役割を果たしてきたといえよう。

【産業ブルジョワ】ついで,産業革命は文字通り産業ブルジョワの勃興をひきおこした。しかし,最も典型的なブルジョワ社会とされるヴィクトリア時代のイギリスについても,それが産業ブルジョワジーが権力を独占した時代のように考えるのは正しくない。地主=ジェントリはつねに産業ブルジョワジーより上の社会層として位置づけられ,彼らの政治上の権力が温存された面が強いからである。また,経済的にいっても,厳密な意味での投資家と経営者は早くから分離傾向を示す。19世紀のイギリスでは「ブルジョワ=有産者」層は,産業ブルジョワを中心とする実業家と受動的投資家の性格が強かった地主=ジェントリを中心とする「資産家」(「地代・金利生活者」)とに大別されたといってもよい。20世紀に入って各地にプロレタリア革命がおこると,ブルジョワの支配体制は世界的に揺らぎ始める(「全般的危機」)。しかし,社会主義諸国でもブルジョワが完全に消滅しているとはいえないこともあるし,またいわゆる先進資本主義国におけるブルジョワと,それらの国々の植民地ないし半植民地となった諸地域とでは,ブルジョワの存在形態も非常に異なっている。後者の諸地域に一定の限界をもちながら成長した土着の資本家層は,しばしば「民族ブルジョワジー」と呼ばれている。そのほか,世界資本主義論ないし「従属理論」と呼ばれる理論的立場からは,「資本・賃労働関係」とは異なる生産関係に立つプランテーションの経営者などをも,「世界資本主義」における資本家,つまりブルジョワとして位置づける場合もある。いずれにせよ,イギリスのようないわゆる先進資本主義国では,ブルジョワは市民革命を通じて権力を握り,私有財産制度・議会制民主主義・営業の自由を含む各種の自由権などを確立した。上述のイギリスの二つの革命(合わせて「イギリス革命」と呼ぶこともある)のほか,1789年に始まるフランス革命が最も典型的な「ブルジョワ革命」と考えられ,1568年に始まるネーデルラント独立戦争,1775年に始まるアメリカ独立戦争,1917年のロシア三月革命なども,それに数えられることが多い。日本の明治維新がブルジョワ革命に相当するか否かについては,戦前にいわゆる講座派労農派のあいだで「維新論争」と呼ばれる大論争があった。