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●フリードリヒ=ヘッベル

ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD1813 ライン同盟

 1813〜63 ドイツの悲劇作家。北ドイツの寒村の貧しい石工職人の家に生まれたが,14歳で父親をなくすと,村の教会管理人のもとに徒弟としてひきとられた。苛酷な仕事のなかで,教会の書庫の書物が彼の旺盛な読書欲を満たした。雑誌への投稿が機縁で,1835年ハンブルクで勉学の機会が与えられた。この年から生涯にわたって書き綴った『日記』は彼の思想と芸術観を知る上で貴重な資料である。翌年にはハイデルベルク・ミュンヘンで法律・歴史,とりわけヘーゲル哲学の研究に没頭するが,貧困と飢餓には勝てず,以前から彼に愛情をよせていた,ハンブルクに住むエリーゼ=レンジングのもとに敗残の身を寄せた。以後彼女との関係は,男性の我意の犠牲となって破滅する女性像となって,しばしば彼の作品に影をおとすことになる。処女作『ユーディト』(1840)では,旧約聖書外典の美女を主人公に,男性と女性それぞれの本性に根ざす悲劇を描いているが,この作および中世伝説に取材した『ゲノフェーファ』(1847)などの作品により,デンマーク王より得た奨学金で彼はパリ・イタリアへの旅に出た。この旅の途中パリで発表した『マリア=マグダレーナ』(1843)はドイツ市民悲劇の代表的作品の一つとなった。レッシング・シラーなどの市民悲劇が貴族と市民の娘との身分違いの悲恋をテーマとしたのに対して,ヘッベルは市民悲劇の根源を,偏見と世間的気遣いにあけくれる窮屈な市民的モラルのなかに追求した。彼はこの作品において,徹底したリアリズムの手法で近代悲劇を確立するとともに,のちのイプセン劇への道を開いた。三月革命の無秩序化は,当時ウィーンにあったヘッベルに国家秩序の必要性を認識させた。『ヘローデスとマリアムネ』(1849)では,人間の尊厳と貞節を掲げる妻を疑惑視するヘロデ大王の悲劇を描き,また『アグネス=ベルナウアー』(1855)では,個人の感情を圧殺する国家意志の肯認を形姿化している。また古代ギリシアを舞台とする『ギューゲスとその指環』(1856)は女性の品位の凌辱をテーマに,宗教的因襲に呪縛される王妃と,因襲の打破に立ち向かう王との悲劇的対決を格調高くうたいあげている。中世ゲルマン叙事詩に材をとる3部作『ニーベルンゲン』(1861)は彼の最後の史劇として高い評価を受けた。個人と世界との葛藤を根底として成立するヘッベルの悲劇は,その悲劇的罪過を人間存在そのもののなかに置くが,この彼の悲劇観は彼のドラマ全編に流れている。ヘッベルには抒情詩のほか,『アンナ』『牝牛(Die Kuh)』に代表される散文の作品があるが,これらは20世紀のショートストーリー的特徴を早くも取り入れた,優れた短編小説である。