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●プラグマティズム

北アメリカ アメリカ合衆国 AD 

【歴史】プラグマティズムは,ギリシア語プラグマ πραγμα(行動・実践)に語源を有し,その特色は人間の行動を重視し実際的な結果によって判定するものであり,思想は行為の一環であると考える。「実用主義」「実際主義」「行動主義」「行為主義」などと邦訳され,アメリカ思想を代表する哲学的傾向を示すものである。主として19世紀後半1870年代以後,それまでのプラグマティズム誕生の萌芽を基にし,アメリカを中心として発展した思想運動の総称である。その中心人物として,パース・ジェームズ・デューイ・ミードがいた。プラグマティズムは,イギリスの近代的経験論の伝統の上に発展し,イギリスのプラグマティストとしては,シラーがいた。アメリカにおけるプラグマティズムは,アメリカ新大陸における信仰と科学の結合,諸民族の統一の原理として,またダーウィンの進化論にも影響されて歴史的に形成された。プラグマティズムの名称は,パースが,1878年に,「ポピュラー=サイエンス=マンスリー」に寄稿した論文「いかにして吾等の諸観念を明瞭にするか」で格言として示した。1898年8月26日ジェームズが,カリフォルニア大学哲学会で講演して公開の席上,初めてプラグマティズムということばを使用し,その後ひろく用いられるようになった。彼はプラグマティズムを哲学上の流派として確立し,心理学的観点から,その思想を普及し一般化した。デューイは,パースとジェームズの立場を総合し,折衷することによって「概念道具主義」を主張し,自然主義的な実験的経験論の立場において,プラグマティズムを大成し,とくに教育の分野に適用した。ミードは社会心理の分野にプラグマティズムの理論を展開した。プラグマティズムは,体系より方法・運動として考えられ,既成の真理を実体化せず,日常の行動のなかでその真理性をつねに検証する立場である。近代科学の実験的方法を信頼し,真偽の判断を先験的原理によることなく,生活経験における機能や効果によると考える。したがって,現実の人間の行動・行為が重視されることになる。プラグマティズム認識論の特質としては,知覚より思想,その思想より行動という認識過程のサイクルを,実践の場で全体として把握する点にあるといわれる。プラグマティズムは,発生以来行動のなかで生まれる意味を探求してきたものともいえる。倫理面では功利主義的・実利的傾向が,心理面では,思考や思想を特別なものと考えず,自然人としての行為の一部とする自然主義的傾向があり,論理面では実証主義を重視する傾向の思想といえるのである。

【プラグマティズムと教育】デューイによればプラグマティズムの教育は,プラグマティズムを根底とする進歩主義的教育観に基礎をおいている。プラグマティズムにおいては,行為を離れた思考はなく,思考は行為の一部と考え,教育は文化の遺産の単なる受動ではなく,児童・生徒をはじめ人間の生活経験を能動的に不断に改造する営みと考える。そして「行動に従って学習する」を中心として,旧来の教育のもつ画一的な形式主義権威主義を批判して,現実生活を土台とした視点から,とくに児童・生徒の直接経験自身の成長・発達自身に目的をおいた意義は大きい。プラグマティズムの教育は,人間と環境との相互関係を土台として,現実の知的変化をなすことで,諸問題を行動的に解決し,デモクラシーの社会を建設する人間の育成を目標とした。したがって,望ましい社会の改革は,根本において,デューイが主張したように教育の過程によるものといえる。プラグマティズムの教育観は,進歩主義教育運動の上にもみられるように,知性的・実践的態度による生活経験の重視を基本としており,今後のわが国の教育改革を考える上にも有効な方法を示唆しうるものとして考えられる。

〔参考文献〕鶴見俊輔『プラグマティズム入門』1959,社会思想社

桑原武夫・伊藤整・松浪信三郎・日高六郎『プラグマティズム』世界思想教養全集14,1963,河出書房新社