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●フォンターネ

ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD1819 ドイツ連邦

 1819〜98 ドイツの作家。ベルリン近郊の薬剤師の家庭に生まれ,薬局勤め,ジャーナリストなどを経験したのち,晩年になってから本格的に創作に従事し,驚異的多産ぶりで17編の長編小説を残した。彼の時代に世界的都市に成長したベルリンの活動性,歴史的変動に対応するその柔軟性が,南仏出身の祖先の血を受け継いだ彼の気質とも相和して,そのまま彼の創作の活力源をなしていたといえる。彼は時代の子であり,歴史社会の忠実な観察者であった。彼は絶対的なもの・理想的なものを盲信せず,つねに現実的なものとの相関関係でそれをとらえた。このイロニー的な相対主義は,時代の問題を写しとる長編小説の造型原理として,とくにのちのトーマス=マンに受け継がれていく。フォンターネが本来の力量を発揮しだすのは『破倫の女』(1882)あたりからであり,これはベルリンの上層階級でおこった離婚問題に取材,また次作『シャッハ=フォン=ヴーテノー』(1883)は,19世紀初頭の宮廷を舞台にしつつも,いずれも愛情の混乱に迷う人物の悲劇を通して,新旧の交替に直面している人間と社会の心理的・歴史的状況を伝えている。同じテーマを扱いながら,穏やかな老年の英知が主人公たちを悲運から救っているのは『迷いと縺れ』(1888)で,身分違いの男女の愛と別れを淡々と描いている。『イェニー=トライベル夫人』(1892)は,ベルリンの新興成金の生態を寛容なユーモアで揶揄したもので,以上2作は,この世の出来事を止むを得ぬものとして是認するフォンターネの現実主義が最もよく示された作品といえる。『エフィ=ブリースト』(1895)では,再び現実は主人公の内的欲求とそぐわずに悲劇的結末を招き,愛なくして犯した1度の姦通で主人公は死に追いやられる。しかし,フォンターネの全作品において,描写される現実は古い世界に属し,主人公たちの心は新しい時代にむいているといえる。最後の作品『シュテッヒリン』(1899)は,フォンターネの自画像を示すといえるが,ここで老主人公は「すべて古いものは,それが要求権をもつあいだ,愛さなければならない。しかし,本当はわれわれは新しいもののためにこそ生きるべきである」と述べている。フォンターネによってドイツ文学に初めて時代的要求に即した社会小説が創始されたといえる。