●ヒルデブラントの歌 ヒルデブラントのうた
ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD
古代ドイツの英雄歌謡。69行の断片が現存。810〜820年ごろフルダの修道士が筆写。用語は高地ドイツ語に低地ドイツ語が混じり,頭韻を踏む。ゲルマン英雄歌謡として知られる短い叙事詩劇形式を直接伝える唯一の古文献。生涯における重大な局面にある2人の英雄におこったことを簡潔に描写。東ゴート王テオドリックとともに30年間フン族のもとで亡命生活を送った老将ヒルデブラントは,帰国途中,警備にあたる若いハドゥブラントと会い,彼の家柄を聞き,自分が父であると主張。若者は疑い,ヒルデブラントのずるさを非難し,名誉ある戦歴を疑い,臆病者とののしる。こうして両者は戦うことになる。断片はここで終わるが,ゲルマン的英雄歌謡の気風からして,父は息子を討つことが推測される。ヒルデブラントはこの作品のためにつくられた人物で,テオドリックの歌謡に元来登場していたわけではない。もとはおそらく650年ごろの歌謡であろう。