●氷河 ひょうが
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高山や極地の陸上に降った雪が融解することなく長年にわたって堆積氷化したものが自重により谷間を流下してくるものを氷河という。グリーンランドや南極大陸のように陸地の大部分が氷に覆われている場合は氷床といい,水河の一形態と考える。現在,高山の氷河は世界的にはアルプス・アラスカ・南米のアンデス山脈によく発達し,氷床は上記の大陸のほか小規模のものがカナダ北部に存在する。しかし過去の地質時代には地球上のもっと広い場所が氷河・氷床におおわれていたことがあり,そういう時代を氷河時代または氷期と呼ぶ。最も新しい氷期は今から約1万年前に終わったヴィスコンシン氷期で,現在を含む新生代第4紀の100万〜200万年のあいだには4回の氷期とそのあいだの温暖な時代である間氷期が周期的に繰り返された。したがって,現代を「第4間氷期」と呼ぶことがある。グリーンランドや南極大陸の厚さ2,000mをこえる氷床の深部氷はこの最終氷期に降った雪の氷化したものであることが知られている。このようなことが明らかになったのは,1960年代から氷床深部へのボーリングを行って深部の氷を採取する技術が進み,一方氷のなかに含まれている微量の酸素同位体 O18(H2O のなかの O)を定量することが可能になったからである。すなわち寒冷な気象条件で降る雪のなかの O18の量は温暖な場合よりも少ないことを利用して,深部氷の O18をしらべることにより,この氷が形成された時代の気温を知ることができるのであり,最終氷期の地球上の気温は現在より数度低かったと推定される。このように氷床の氷には古気候復元のための情報が貯えられているのである。歴史時代の気候もアルプスの氷河の前進後退の記録と関連させてしらべられており,上記のような最新の方法と併せて小氷期といわれる短周期の寒冷な時代があったこともより精確に知られるようになった。〔参考文献〕小林国夫・阪口豊『氷河時代』1982,岩波書店
J.インブリー・K.インブリー,小泉格訳『氷河時代の謎をとく』岩波現代選書,1982,岩波書店
東晃『氷河』中公自然選書,1974,中央公論社