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非鉄金属 ひてつきんぞく

軽金属】銅・鉛・亜鉛などの非鉄重金属に対して、アルミニウム・マグネシウムなど軽い金属を軽金属と呼んでいる。代表的な軽金属であるアルミニウムは比重2.70、マグネシウムはさらに軽くて1.74である。アルミニウムは軽い上に加工しやすく、表面酸化させると耐蝕性もあり、電気・熱の良導体でもあるので用途はきわめて広範である。アルミニウムは押出し加工により複雑な断面をもつ長い材料を一度につくることができるし、陽極酸化によって表面に薄い酸化膜をつけたアルマイトは耐蝕性がよいのでサッシや日用品に多く使われる。電線の場合は銅よりも電導性・強度とも劣るが、軽いことを利用して断面積を大きくし、中心に鋼線を入れた構造の電力ケーブルなどが使われる。その他軽さを利用した用途には航空機・車両などがあるが、この場合は強度の点から銅・マグネシウムとの合金であるジュラルミンがおもに使われる。さらにアルミニウム-亜鉛-クロム-マンガン合金の超々ジュラルミンを使って骨組を軽くできた零戦が、第二次世界大戦初期その性能を誇ったことはよく知られており、現代の花形新幹線車輌の車体もアルミニウム合金製である。軽くするためだけなら泡を入れた発泡アルミニウム材や蜂の巣状に加工したアルミニウム材などがあり、これらは軽々と水に浮く軽さと強さをもっている。アルミニウムは、非常に安定な酸化物であるアルミナから溶融塩電解法でつくられるので還元に大きなエネルギーを必要とし、1tつくるのに2万キロワットアワー近い電力を消費するので俗に電力の塊といわれる。マグネシウムは海水から採取したマグネシアクリンカー、あるいはドロマイト鉱からフェロシリコンで真空還元する方法で製錬される。アルミニウムより軽く強度も大きいので将来の交通機関材料として有望視されている。ナトリウム・カリウム・カルシウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属は反応性が大きいため、金属としてよりはむしろ化合物として使われることが多いが、77%カリウムのナトリウム=カリウム共晶合金(ナック、NAK)は融点がセ氏−12.5度と極端に低く、原子炉の冷却液として用いられる。

【その他の非鉄金属】最初に述べたように非鉄金属には多くの種類があり、その性質もきわめてバラエティに富んでいるが、上に述べた以外のいくつかについて簡単に触れる。元素としての存在量も多く、工業材料として優れた性質をもつ金属にチタニウム(チタン)がある。チタニウムはアルミニウムの軽さと鉄の強さを併せもち、かつ耐蝕性に富む未来の金属といわれながら、いまだに航空機や化学装置などごく限られた用途にしか用いられないのは製錬コストが高くて加工が難しく、その上歩どまりが悪いのが原因である。チタニウムの鉱石は酸化鉱であるルチル鉱や鉄を含んだイルメナイト鉱で、砂鉄を製錬するときにできる高チタンスラグも原料となる。これらを塩素ガス中で加熱して四塩化チタンとし、溶融マグネシウム上に滴下してスポンジチタンをつくる。これをアーク溶解してチタンインゴットとする。副生する塩化マグネシウムからマグネシウムと塩素ガスを再生するためにアルミニウム製錬以上の電力を消費するほか、コストの高い工程が多いので製錬費は高くなり、したがって地金価格も高価にならざるをえない。高融点材料として用いられる金属は、タングステン・モリブデン・ニオブ・タンタルなどで、最も身近には、タングステン製の白熱電球のフィラメントがある。これらの諸金属はいずれも酸素と結合しやすい活性金属であり、空気中で高温で使うことはできない。電球内部を真空にしたり、ガスを封入したりするのは酸化を防ぐためであり、真空管も同じ理由から真空にして使うのである。これらの金属はクロムやニッケルとともに特殊鋼の合金元素としても使われる。18%クロム・8%ニッケルを加えた特殊鋼は、いわゆる18-8ステンレス鋼として広い用途をもつ不銹鋼の代表的な存在であることはよく知られている。クロム・ニッケルはさびの防止のためメッキ用にも常用される。一方、低融点の金属には前述した鉛をはじめビスマス・タリウム・錫・インジウムなどがあり、低融点の合金の素材となることはすでに述べたが、さらに融点の低い金属としては I A 族のアルカリ金属やガリウム(セ氏29.8度)・水銀(セ氏−38.4度)がある。ガリウムはインジウムとともに最近、電子材料としてクローズアップされた金属であるが、掌の上で融ける珍しい金属である。水銀は常温で液体なので、温度計などでおなじみの金属であるが、表面張力が大きくコロコロと転がってしまうことはよく知られており、蒸気圧も高く(沸点セ氏357度)、少しあたためただけで気化し、その蒸気は有毒なので注意が必要である。水銀は古くから日本に産し、その原鉱である硫化水銀は防腐と装飾をかねて建造物の塗装用に用いられた。奈良の都の枕詞“青丹よし”の丹は朱と同義で、いずれも硫化水銀である。硫化水銀は現在でも印肉として日常使われている。大和地方をはじめ各地にみられる古い丹生の地名はかつての丹の産地である。奈良東大寺の大仏のメッキに水銀を用いたことは前述したが、硫化水銀を加熱すると簡単に分解して水銀蒸気となるのでこれを冷却すれば金属水銀が得られる。水銀は貴金属をはじめ種々の金属と合金をつくり、いわゆるアマルガムとなる。アマルガムは粉状で加熱すると容易に固化するので歯科の充填用に使われる。水銀灯は水銀蒸気の放電を利用したものである。ウラニウムが原子炉燃料として発電用に用いられることはよく知られている。天然ウラニウム中には熱中性子によって核分裂をおこすウラン235は0.7%しか入っていないので、この濃度を上げた濃縮ウランが燃料用に使われる。

 ゲルマニウムは、ダイオードトランジスタの素材としてエレクトロニクス革命の口火となった半導体性をもつ元素であるが、まもなくシリコンが主流を占めるようになった。セレンも同じような性質をもつ元素で、いずれも非鉄硫化鉱に微量含有されており、非鉄製錬工程から回収される。セレンは以前には整流器として用いられたが、最近は複写機の感光体としての用途が多い。希土類元素は17元素あるが性質が似ているため相互分離が難しい。そこで鉱石中の希土類金属を一括して還元し、合金状態で使用することも多く、これをミッシュメタルという。ミッシュメタルは合金用に使われるほか、摩擦により容易に発火するのでライターの発火石に用いられる。希土類元素はカラーブラウン管の赤の感光体として使われる。また、サマリウム-コバルト合金は強力永久磁石として知られている。

【強度材料としての非鉄金属】前項までは金属別に非鉄金属をみてきたが、以下では用途のほうからみていくこととし、まず金属の強さを主として利用する構造体材料の面からみてみよう。一般的にいえば、非鉄金属およびその合金は強度という点からみると鉄鋼材料には及ばない。近代の大規模な構造体は安価で強い鉄鋼が主要材料として大量に使えるようになってから誕生したといえる。しかし加工のしやすさや耐蝕性・美観・軽さなどの点から特殊な用途、あるいは小型の構造材料としては日用品をはじめよく使用される。以前は銅や銅合金(青銅・真鍮など)でつくられた日用品が多かったが、現代ではより軽く、より強いアルミニウム、鉄がこれにとって代わった。しかし機能性や美しさ、耐久性などの点から再び銅製品のよさが見直されている。一方、大型ジェット機や軍用機の構造材のように強度と軽さの兼ね合いの極限を追求する用途については、チタン合金やマグネシウム合金などが実用されている。それほどではなくてもアルミホイールなどの自動車部品、カメラ・サッシなどの建材、家庭電気用品・事務機器などの構造体としてアルミニウム材が使われ、光学機器のように高い精度を要する部分にもダイキャスト製品が使われて軽量化がはかられるようになった。ダイキャストすなわち圧力金型鋳造は寸法精度が高いこと、複雑な形状を1工程で材料の無駄なく容易につくれること、同じ形状の製品を短時間に大量につくれることなど多くの特徴をもつため、アルミニウム・亜鉛合金に多用される。建物の窓枠をアルミニウム材でつくる建築用アルミサッシは、加熱したアルミニウム片を特殊鋼製ノズルから高い圧力をかけて押し出して、複雑な断面形状をもつ長尺部材を1工程でつくる押出し加工と防蝕表面処理技術の進歩により急速に普及し、日本家屋の構造と日本人の生活様式に大きい影響を与えた。より速く、より経済的に移動することを求める交通機関には、より強力なエンジンとより軽い機体、車体が必要である。航空機はもちろん、自動車も列車もまず軽量化への努力が払われ、さらに鉄鋼材料の独壇場であったエンジンにもマグネシウムエンジンなど軽量化の試みがされるようになってきた。わが国が世界に誇る新幹線の鉄道を支えている材料のうち、アルミニウム合金製の軽くて強い車体、銅合金製のパンタグラフと架線の耐磨耗性とはきわめて重要な役割を果たしている。

【機能材料としての非鉄金属】多種多様な非鉄金属材料であるから、一般的には強さよりはそれぞれ特徴のある機能や特性を利用する用途の方が主流となることは容易に推察される。一口に機能と特性といってもさまざまなものがあり、大別すると、[1]化学的な特性、[2]電気的な機能、[3]機械的性質、などに分けることができる。化学的な特性を利用する例としては、非鉄金属あるいは合金自身のさびにくさ・耐蝕性・メッキによる防蝕性と美化などがあるが、どちらかといえばこれらは非鉄金属本来の性質によるところが多い。電池の電極として使われるのも化学的な特性の利用で、鉛蓄電池をはじめ、最もふつうの亜鉛-二酸化マンガン乾電池やニッケルカドミウム電池・酸化銀電池・水銀電池などその種類は多く、特性に応じていろいろなところに使われる。2番目の電気的機能を利用する用途は、たとえば導電材料・半導体・超電導材料・磁性材料・抵抗線・熱電対など多彩をきわめる。導電材料としては、貴金属 I B 族の銅・銀・金が、その電導性のよさと耐蝕性にもとづく信頼性の高さから最もよく用いられる。銅線はいうまでもないが、スイッチやリレーなど動く部分に使われる金・銀・白金の接点、金線の IC リード線などはその例である。アルミニウムがその軽さを利してこの分野に進出しつつあることは前にも述べた。半導体には多様な材料があるが、交流から直流を得る整流器としてはまず亜酸化銅・セレン、ついでゲルマニウム・シリコンと変遷を遂げてきた。半導体を支えるのは基礎理論の発展ももちろんであるが、超高純度材料への精製技術と、さらにそれを大きい単結晶とし、薄いウエハに加工する技術などの組み合わせによるところが大きい。電子計算機をはじめ、あらゆる電子応用機器に使用され、その小型化つまり軽薄短小化に大きな役割を果たしつつある IC や LSI などは、結晶成長や真空蒸着などそのものの製造技術のほか、微細な回路の印刷とか髪の毛より細いリードワイヤのロボットによるハンダづけといった技術の助けが加わらねばならない。この種の半導体としては従来シリコンが主力であったが、将来は化合物半導体が伸びるとみられ、ガリウム砒素やインジウムリンなどの化合物半導体が実用化にむけて開発されつつある。光を電流に変える光電素子や太陽電池も半導体の特性を利用するもので、カメラの露光計にはセレンや硫化カドミウムの光電池が使われるが、携帯用電卓・腕時計あるいは大きいものでは人工衛星などにはシリコン太陽電池がふつうに用いられる。金属は導電材でも電気抵抗をもち、電流を流せば電力を消費する。金属の性質として理論的には絶対零度(セ氏−273.16度)まで冷却すれば電気抵抗はゼロになるはずであるが、一方ここまで冷却することはどんな手段を使っても不可能である。ところが絶対零度ょりも高い温度でも電気抵抗がゼロとなる現象があることが発見された。これを超電導と呼ぶ。超電導現象は多くの元素が示すが、工業的にこれを利用するにはなるべく高い温度までこの状態に保たれる材料を用いるのが有利である。超電導材料を使った電磁石に一度大電流を流せば電力を消費しないから大きな永久磁石とすることができる。これを車体に乗せて反発力で浮上させ、さらにりニアモーターの原理で推進しようというのが新しい浮上式高速鉄道の構想である。車輪のような機械的摩擦がないので騒音なしに高速が得られ乗心地もよく、地上を走る飛行機として将来の交通機関への期待を集めている。また大容量のマグネットは種々の工業技術への応用の可能性をもっている。工業用超電導材料の開発は急速にすすみつつあるが、ニオブ-錫やニオブ-チタン合金などが優れた性質を示している、一方永久磁石材料としても最近の進歩はめざましいものがある。本多光太郎がコバルト-クロム-タングステン-鉄系の KS 鋼を発明したのは1917年であるが、その後次々と強力な磁石材料が開発された。すなわち、アルミニウム・ニッケル・コバルトを含む鋼のアルニコ磁石・白金-コバルト磁石・バリウムフェライト磁石・サマリウムコバルト磁石などで、最近開発されたセリウム-ジジミウム磁石は吸着力が KS 鋼の40倍にも及んでいる。磁性材科としては、ほかに電磁石のコアをつくる磁心材料や各種の磁気ヘッド用材料などがあり、エレクトロニクス利用機器の重要な部品として使われている。磁性合金の一種で、磁気変態を利用して膨張収縮のおこらない材料とか弾性定数の変わらない材料とかが見出された。前者をインバー型合金、後者をエリンバー型合金という。ニッケル36%鉄合金をインバーと呼び、標準尺や時計の振子などに用いる。これにクロム12%が加えられた合金がエリンバー、ニッケルの代わりにコバルトを加えた合金がコエリンバーで、いずれも弾性率の温度係数が非常に小さいのでヒゲぜんまいや標準音、また地震計のばねなどに用いられる。インバーとエリンバーの両者を組み合わせて狂わない時計がつくられた。電気抵抗の大きい合金は抵抗体や電熱線として用いられる。通称ニクロム線というニッケル-クロム合金や鉄-クロム-アルミニウム合金のカンタル線などがよく知られている。最後に、機械的性質を利用する用途としては強度材料として使う場合を除くと、膨張率の異なる2種類の材料を貼り合わせたバイメタルが温度調節装置に使われている例がある。また、最近開発された材料に形状記憶合金と呼ばれるものがある。たとえばニッケル-チタニウム合金でつくった針金をある形のまま高温にすると、冷却してから常温でいくらひどく変形させても前の温度に戻すだけで、もつれていない限り、前の形を憶えていたように瞬時に元の形に戻る。この機能は何回でも繰り返して現れるので、これを使って温排水から動力や電力を取り出すエンジンや温度に応じて窓を開閉する調温装置などの応用が考えられている。

〔参考文献〕矢澤彬編『非鉄金属製錬』1980、日本金属学会

日本金属学会編『金属便覧』1952〜82、丸善

日本金属学会編『金属データブック』1984、丸善

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