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非鉄金属 ひてつきんぞく
非鉄金属とは英語のノンフェラス=メタルスの直訳で,広義には鉄以外のすべての金属を含むが,狭い意味ではアルミニウム・銅・亜鉛など量産金属に対して用いられることが多い。人類の歴史の上からみると,石器時代につづく青銅器時代は加工しやすい天然産の銅-錫合金,つまり青銅を生活の道具として使いはじめた時代であった。その後,美しい上にさびない金・銀などの貴金属が王侯貴族の権威の象徴として,あるいは国家や個人の富の尺度としての貨幣や装飾として使われるようになる。多種類にわたる非鉄金属は純金属はもちろん,無限に近い合金の組み合わせからきわめて多様な性質を示し,これを利用する機能材料としての用途が最近大きく進展しつつある。このように純金属,つまり元素としての金属だけでも数十種もある非鉄金属であるが,その原子構造と性質のあいだには周期的な変化があり,これに従って性質の相似した金属に分類することができる。メンデレーエフが原型をつくった元素の周期表には103の元素が原子番号の順に,またその性質の周期性に従って配列されている。表はこの周期表を原子番号・元素記号・元素名のほか,融点(°C)と比重(g/立方cm)についても示したものである。この表の見方を簡単に述べると,まず原子番号は元素の背番号と考えればよいが,もう一つの意味は,原子番号はその原子がもっている電子の数すなわち原子核の陽電荷数を示していることで,すべての元素はもっている電子の数が異なり,その化学的性質は原子番号により決まってしまう。次に元素名と元素記号であるが,元素名は和名と英語名とを併記した。たとえばカリウムは英名ポタシウムであり,ナトリウムは英名ソディウムというように異なっている。融点(溶融温度)と比重(密度)は,使用上最も関係が深い性質として示すことにした。周期表は最も軽い水素から始まって右へすすみ,ヘリウムで第1周期を終わって第2周期のリチウムから再び右へすすむ。そして性質の似たものが上下に並ぶように配置され,それぞれの縦方向の列には族番号が I A・VI B といったようにつけられている。つまり,I A 族はアルカリ金属・II A 族はアルカリ土類金属というふうに並んでいるので,たくさんある元素もわかりやすく整理してみることができる。I A・II A・III A 族は最も反応性の高い卑金属のグループであり,IV A 〜 VIII 族は遷移金属で融点の高いものが多い。I B 族は重い遷移金属とともに貴金属のグループの中心をなしており,II B は低沸点つまり蒸気圧が大きく揮発しやすい金属で,III B 〜 V B の重い元素群といっしょになって低融点グループをつくる。それから半金属の元素群をはさんで表の右上隅は非金属がグループをつくり,0族の不活性元素で終わることになる。例外として III A 族の57番のランタンの位置にランタナイド元素15種が,また89番のアクチニウムのところにアクチナイド元素15種が一括して入るので,これらはそれぞれ別記してある。希土類元素とは III A 族のスカンジウム・イットリウムおよびランタナイド元素の計17元素をいう。また,93番のネプツニウムから先の元素は超ウラン元素と呼ばれ,いずれも人工的につくられた元素である。中国語では非鉄金属を有色金属と呼ぶが,元素金属で銀白色のいわゆる金属色以外の色を呈するのは,金と銅の2種類だけである。このように多種類の金属は銅の電線のように純金属で使用する場合もあるが,多くの場合はある種の合金として使われ,半導体など特殊な場合には金属間化合物の形で用いることもある。さらに非金属元素との化合物としてもさまざまな用途に用いられるが,本項では主として金属の状態のままの利用の面から述べることとする。また必ずしも性質による分類にはこだわらず,工業的な分け方でまとめて解説する。図は主要な金属の世界生産量と t 当たり地金価格の関係を示したもので,およそ需要と供給の原則が満足されていることがわかる。ただ金・銀などの貴金属は通常の金属とは異なり,通貨単位としての価値があり価格の決まり方が違うために別な曲線に従っているようにみえる。また,電子材料など新しい需要により激しい価格変動を示すものもある。
【貴金属】貴金属の代表は金である。人間の歴史は富と支配を得るための戦いの歴史であり,文化は富と支配と人間の相関関係から生み出されてきた。美しい色と永遠の輝きゆえに古来宝物の筆頭にあげられ,富と権威の象徴となってきた金は,まさに人間の歴史と文化を彩る中心的存在であった。エジプトの王墓を飾るきらびやかな金文化をはじめ,あらゆる王侯貴族の周辺には必ず金が存在した。単に通貨の基本単位であったという以上に金を所有したいと思う人の心には,他の金属とはまったく違う長い歴史のなかでの人間と金とのからみ合いがかくされているのである。かくも人の心をとらえて離さない金とはいったいどんな金属なのか。永遠の輝きという通り金は美しい黄金色を呈し,かつさびない。空気中でも水のなかでもまた純酸素のなかで熱しても反応しないからさびないのである。したがって,何千年も昔に埋没したものでも金だけはそのままのすがた形で出てくる。また,金はやわらかく加工が容易なことも古くから装飾品などに使われた理由の一つで,1gの金を細い線にすれば3,000mにも伸び,金箔にのばせば1万分の1mmにもなって光が通るくらい薄くすることができる。そのうえ,電気も熱も銀・銅についでよく伝えるから LSI のリード線として使われるのである。金箔は薄く延ばした金板を和紙にはさみ,何枚も重ねたものを鹿皮で包んで木槌で打ち延ばしてつくる。日本で発見された最古の金製品は,福岡市郊外の志賀島の土中から発見された金印であるが,これは後漢の光武帝が倭奴国王に賜ったもので中国製である。東大寺の廬舎那仏いわゆる奈良の大仏は,約1,200年前に聖武天皇によってつくられたが当初は金メッキされていた。当時の金メッキの方法は,磨いて梅酢で洗った金属表面に金と水銀を2対1の割合でまぜてつくった金アマルガムを鉄へらでこすりつけ,炭火で熱して水銀を蒸発させる方法で,大仏のメッキをするのに5年を要している。この後仏教文化を彩ったのは金箔で,仏像・仏具や建造物の内部はもちろん,金閣寺や平泉の金色堂のように建物の外側にも金箔が用いられた。さらに富裕階級の家具・衣服などにも金箔・金糸が使われてゆく。徳川家康が築いた名古屋城天守の金の鯱は檜の上に鉛板,さらに大判・小判を打ち延ばした金板を張りつけたものであったが,後年,藩財政の窮迫のたびに改鋳された。戦災後再建された現在のものは,青銅製の本体上に0.15mmの厚さの18金板を張りつけたものである。純金はやわらかく加工は楽であるが,実用化するには不便なのでふつう銀あるいは銅を加えて合金として使う。金合金の質を表すにはカラットで示すが,24カラットを純金とするので,18K(カラット)は75%の金品位をもつことを示している。金貨にも変形や磨耗を防ぐため,ふつう銅10%の合金が用いられる。金の色沢を模倣した,いわゆるイミテーション=ゴールドはいろいろなところで使われており,額縁や腕時計などの表面を金色にするのには硫化錫を金粉塗料として使ったり,窒化チタンを真空蒸着させたりする。一方,合金で金色をしたものとしては通称アルミ金と呼ばれるアルミ青銅がある。この合金は,3〜5%のアルミニウムと残りが銅の合金で鮮やかな黄金色を呈するから,展示用の金塊の素材とすることがある。79%銅・8%亜鉛・3%ニッケルに少量のマンガンを含む合金はカクタスゴールドと呼ばれ,18Kの金に似た色沢をもち,さびないので装飾品用として使われる。人類は金を求めて未知の国へ探検に出かけ,またそのためには戦いをも辞さなかった。中世ヨーロッパでは,卑金属を金に変えようと錬金術が長い年月にわたって流行した。その目的は当然達せられなかったが,多くの優れた人々の努力は近代化学の源となったのである。金は石英質の脈状鉱床として産することが多いが,風化して川床にたまるといわゆる砂金となる。砂金は他の砂質と“ユリ盆”などを使って比重差で分けて採取する。金が発見されると近くから遠くから金を求めて山師たちが集まり,これを相手に商人たちがやってきてテント村はたちまち町と変わる。これがゴールド=ラッシュで,19世紀アメリカ西部・アラスカ・カナダ・オーストラリアなどで相次いでおこった。カリフォルニアに数万人の山師が押し寄せたのが1849年であったことから,フォーティナイナーズの語を生んだ。オーストラリアでは1872年,250kgもある大金塊が発見された。現在世界一の産金国である南アフリカで金鉱が発見されたのは1885年で,テント村から現在のヨハネスブルク市が生まれたのであった。鉱脈から直接金鉱を採掘し,金を製錬する場合は,鉱石を細かく砕き,シアン溶液に金を溶かし出してから亜鉛の粉末を加えて金を沈殿させる方法がよく用いられる。これを“青化法”と呼ぶが,大規模でないと成り立たないので小さい金山では鉱石のまま売り,買われた金鉱石は銅または鉛の製錬工程に溶剤として加えられ,副産的に回収される。金は現在では南アフリカ・ソ連が主要産出国であり,日本はわずか0.5%を占めるにすぎないが,かつての日本は産金国であり,海外への流出も多かったので,マルコ=ポーロの『東方見聞録』に黄金郷ジパングと書かれたのも理由のないことではなかった。貴金属は珍重された上に貨幣としての価値があったから重量・含有量を調べるための分析法が古くから発達した。“試金石”というのは,黒い石の面に金をこすりつけ,標準合金によるものと条痕の色を比較して品位を判定した分析用具である。金を含む鉱石中の含有量は1t中1gつまり100万分の1を十分な精度で判定できることが必要である。標準分析法は鉱石約30gを酸化鉛や溶剤と一緒に溶融還元し,生成した金属鉛中に金銀を吸収させたのち,これを分離し,骨灰の皿の上で加熱して鉛を酸化除去して残った金銀粒を精密に秤量して含有量を知る方法である。金銀の分離には硝酸を使う。鉛に吸収させたのち,酸化除去する方法を灰吹法といい,金銀製錬法としても古くから用いられた。この方法は現代の銅製錬などで副産的に金銀を製錬する工程にも利用されている。
銀・白金はいずれも銀白色の金属であるが,金とともに貴金属として広く使われてきた。とくに銀は金とともに本位貨幣として重要な地位を占めてきた。銀貨は金の場合と同じく銅との合金を用いるが,7.5%銅を含む銀を“スターリング=シルバー”と呼び,優良銀貨の代表的組成としている。銀の最大の用途は写真用感光材料で,フィルム・印画紙などに塩化銀や臭化銀を塗布して用いる。西欧では食器を中心に日用品や室内装飾用に古くから使われた。白金は金・銀のかげにかくれて目立たないが,金よりも重く,10cm角の立方体で21kgを超える。18世紀前半に発見された金属で,化学的に安定で融点が高く,触媒作用があるので,化学工業・化学実験用・電気接点などに多用される。ハクキン懐炉はベンジンの燃焼に白金触媒を利用したものである。化学実験器具としてはルツボや電極などに使われるほか,白金と白金ロジウム合金の接点を高温部におくと熱起電力を生じることを利用して高温計として用いられる。さらに指輪など装身具として珍重されるほか,歯科合金や永久磁石にも使われる。白金は金銀あるいは量産非鉄金属の副産物として回収される。南アフリカ・ソ連・カナダなどが主要産出国である。
【銅・鉛・亜鉛】非鉄金属といえばこの三つが代表的存在である。なかでも銅は非鉄金属の王といわれる。これら3金属の原鉱はいずれも主として硫化鉱で,秋田県北鹿地方に産する黒鉱にはこの3金属をはじめ,金・銀・鉄・石膏・バライトなどが微細に混在しているので細かく砕いて選鉱し,それぞれの精鉱とする。銅は硫化鉱を空気中で酸化しながら共存する硫黄と鉄を除き,粗銅としたのち電解精製してつくられる。銅は金銀とともに貴金属の I B 族に属し,いずれも貨幣として重要であるが,量的には銅がはるがに多く産し,かつ用途も広範である。15〜16世紀の日本は,製錬法は素朴ながら全国的に鉱山が開発され,世界有数の産銅国で年産数千トンに達し,その相当部分を輸出にあてていた。銅は熱伝導性・電気伝導性が銀についでよく,耐蝕性にも富んでいるため,熱伝導材料・導電材料としての用途が多い。なかでも電線は銅の用途の60%以上を占めている。しかし最近では,導電性は劣るが軽さのためにアルミニウムの進出も著しい。熱伝導材としては調理器具や冷暖房配管・熱交換器などに使われている。耐蝕性を利用するものに屋根材があり,年月をへて緑青(ろくしょう)で覆われた屋根は美しい。緑青は塩基性炭酸銅であるが,日本では古来これが毒であるという俗説があり,調理器具や水配管などとしてはあまり好まれなかったが,しだいに使われるようになりつつある。銅は他の金属と合金をつくりやすいことが特徴である。錫との合金は,青銅でかつては天然に産したことから最も古くから人類に使用され,現在も美術品鋳造用に使われる。前10世紀ごろの周の時代に,銅に対する錫の配合量を目的に応じて変えることを示した書物がある。すなわち鐘やかなえは14%,斧は17%,ほこは20%,刃物は25%,矢じりは30%,鏡やひうちがねは50%というように,硬さを必要とするものほど錫の量を多くするよう指示している。亜鉛との合金は黄銅,あるいは真鍮(しんちゅう)と呼ばれ,美しい色沢からいわゆる伸銅品や楽器・日用雑貨金具などの主流を占めていたが,最近ではプラスチックとステンレス鋼がとって代わりつつある。そのほかアルミニウムとの合金のアルミ青銅・錫と小量のリンを含む機械用リン青銅・黄銅にニッケル・マンガンなどを加えた強力黄銅の俗称マンガン青銅など,いずれも銅合金のことを青銅と呼んでおり,それぞれ多くの種類と特徴をもっている。錫と亜鉛を含む合金は砲金と呼ばれ,強度・鋳造性に優れ,鍛造もできるので大砲の砲身に用いられた。一方,銅は金・銀など貴金属に実用的な強度を与えるための添加成分として用いられ,銅25%を含む金は18カラットとして装飾用などに最も広く用いられている。鉛は重く,やわらかい金属で,硫化鉱を脱硫焼結した焼結鉱を溶鉱炉でコークス還元して容易に製錬される。純度を上げるにはさらに電解精製を行う。硫化鉛は方鉛鉱と呼び,半導体なので鉱石受信機の検波器として用いられた。鉛の最大の用途は自動車用バッテリーで水道用鉛管の用途は少なくなった。鉛は放射線を通しにくい性質があるので,放射線防護用に鉛ブロックが使われる。純鉛の融点はセ氏327度で,合金にするとさらに融点が下がるので鉛を主成分として種々の易融合金がつくられる。ハンダやヒューズ・活字合金などがその例であり,顕微鏡試料埋込用ウッド合金はセ氏60度で溶ける。鉛は耐蝕性でとくに酸に対する耐蝕性があるので,化学装置の内張用として用いられる。この場合純鉛ではやわらかすぎて自重に耐えられないので少量のアンチモンを加え,かたくする。これを硬鉛という。鉛はたたいても鈍い音しかしないようにダンピング特性が大きいので,音や振動の吸収体として有効である。新幹線や高速道路あるいは防音室などには鉛の防音壁が用いられている。鉛は身体に蓄積すると有毒で,いわゆる鉛毒をもたらす。従来ガソリンにノッキング防止用として添加していた4エチル鉛は公害の源として控えるようになった。亜鉛は鉛につぐという名称からすれば,鉛に近いように思われるが性質は相当に異なっており,とくに電気化学的に鉄よりも卑で,鉄と容易に合金をつくるので,溶融亜鉛中に鉄製品を浸してメッキするいわゆるドブ漬メッキが古くから行われた。薄鋼板に亜鉛をメッキしたものを亜鉛引鉄板あるいはトタン板と呼ぶが,亜鉛は鉄がさびようとするとき代わりに溶け出して鉄を守る働きをするので,必ずしもメッキして全面を覆う必要はなく,たとえば吃水線下の船腹などに亜鉛塊を取り付けておくと防蝕の目的が達せられる。このように亜鉛は銅や鉛に比べると卑な性質をもつので製錬するのが難しく,その歴史は比較的新しい。ここで卑というのは対酸素親和性が大きいことを意味するので,硫化亜鉛を空気中で焼くと金属亜鉛とはならずに酸化亜鉛となる。これを高温で炭素還元すると亜鉛蒸気となるから急冷して液体亜鉛を得る。また酸化亜鉛を希硫酸に溶かし,電気分解によって亜鉛を析出させる方法もあり,最近は環境汚染防止の見地からこの方法が多く採用されている。亜鉛の硫化鉱に微量ながら随伴するのがカドミウムで,神通川流域のイタイイタイ病の原因の一つとされたように亜鉛の産するところに伴う。カドミウムは優れたメッキ性をもち,黄色顔料としても有名である。カドミウム電池は充電できるので,非常口表示灯やシェーバーの電源として用いられる。亜鉛は融点が低い(セ氏419.5度)と同時に蒸気圧も高く,沸点はわずかにセ氏907度である。したがって製錬の際に簡単に蒸気として得られるし,加熱すれば容易に気化するので石油と同じ原理で蒸留精製が行われる。純亜鉛は結晶が発達して脆いが,アルミニウムを4%加えると非常にかたく強くなるので,精巧な鋳物をつくるダイキャストがメッキについで第2の用途となっている。自動車や家庭電器などの部品として大部分はメッキされて目立たないところに使われているのもいかにも亜鉛らしい。単1〜単4型の普及型乾電池は亜鉛-マンガン電池で,外側が亜鉛板でできており,相当の用途を占めている。亜鉛板はまた写真製版用としても多用される。
(1/2:続く)
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