●非行青少年問題 ひこうせいしょうねんもんだい
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戦後40年にわたる青少年非行を非行少年の定義,非行の実態と経過,社会的背景と要因,その対策について概観する。【非行少年の定義】少年法は14歳以上20歳未満を対象としている。14歳未満で刑罰法令に触れる行為を行った者は“触法少年”と呼ばれる。さらに保護者の正当な監督に服しない性癖があり,将来罪を犯し刑罰法令に触れる行為をするおそれのある20歳未満の者を“ぐ犯少年”という。非行少年は,触法少年・犯罪少年およびぐ犯少年を含める。ふつう,少年犯罪のうち道路交通関係の犯罪は除き窃盗犯などの“特別法犯”を除いたものを“主要刑法犯”として分類する。最近の少年犯罪の年間統計は,表1に示される。
【非行の実態と経過】少年犯罪のうち,主要刑法犯について昭和56年度と57年度の年間発生件数を比較すると,凶悪犯は約1割減少したものの,殺人・強盗・放火など悪質なものは増加傾向にある。これは14歳以上の犯罪少年のみであるが,これに14歳未満の触法少年を加えると2,344人となり,強姦事件が37%あまりを占めている。粗暴犯は前年比3.5%増で触法少年を加えると前年比5.5%増となり,傷害・強喝がとくに増加している。窃盗犯は触法少年を加えると,年間19万8,701人が検挙補導されており,全犯罪検数25万7,856人(昭和57)の77.1%を占めている。いずれも戦後最高の記録である。約20万人弱の窃盗犯の手口は,万引が39.5%でトップに立ち,オートバイ盗が18.8%,自転車盗13.9%,自動車盗2.7%の順で以下空き巣ねらい・出店荒らし・学校荒らし・倉庫破り・忍び込みなどがいずれも1%前後である。全犯罪件数25万余人の年齢別構成は,図1のように14歳がトップで前年比15.7%増の5万余人(全体の21.3%)に達している。警察白書によると,〈2人に1人が中学生〉という見出し(58年版警察白書)で中学生が12万7,422人で全犯罪の49.4%を占めて最も多く,昭和48年の中学生犯罪人口を100とすると,昭和57年には指数241となり,2.5倍にも激増し衰えをみせていない。また,喫煙・深夜徘徊・暴走行為などの不良行為を行う少年も昭和57年度に警察が補導した数は134万1,137人にのぼり,前年比11.9%と大幅に増加している。
昭和50年代に入って発生しはじめた暴力型非行としての“校内暴力事件”は総数1,961件で,昭和56年度に比べ約6%(124件)減少しているが,内容的には凶悪化・粗暴化の傾向がつづいており,その94.4%が中学生による事件である。とくに対教師暴力は前年に比べ9.2%71件の増加で,昭和53年度の4.4倍と著しく増え,その97.9%が中学生によるものである。一方,昭和57年に少年相談などを通じて警察が把握した家庭内暴力は1,000件を超えている。前年に比べ8.5%減少しているものの,中学生によるものが約半数近くを占め,全体で母親に対する暴力が62%と多い。また,登校拒否や薬物乱用も増加傾向にあり,シンナー(64.2%)・接着剤(16.7%)・トルエン(11.4%)を乱用し,これは有職少年が3分の1以上で無職少年と合わせると過半数を占めている。女子・少年の性非行も急増しつつある好奇心型非行で,昭和57年度に警察に補導されたものは1万人に近く,前年に比べ5.3%も増加している。性非行は高校生に多いが,最近は中学生の増加が著しく,前年に比べ35%も激増し,全体の4分の1を越えてしまった。非行の動機は「興味から」「遊ぶ金が欲しくて」「セックスが好きで」を合わせると7割に達し,その無軌道ぶりは解放感と自制心のなさをよく現している。このような青少年の「異常」な心情は家出や少年自殺にもうかがわれ,これらは高校生に比較的多い傾向がある。
【社会的背景と要因】このような非行や青少年の不適応問題行動の増加については,次のような要因や社会的背景が考えられている。まず第1は核家族化の進行と少子化傾向があげられる。これは親子関係のあり方に片寄りと養育監護の不十分さをもたらした。必然的に過保護・過干渉・溺愛の親が増加し,両親の就労の増加と個人の自主性尊重の思潮は,子女に対する放任傾向を生み,さらに交通事故の増加と家庭内トラブルの頻発が欠損家庭の発生に拍車をかけて家庭の教育力を著しく低下させつつある。第2に青少年を取り巻く社会環境の問題。物価の上昇・低俗文化の氾濫・小市民的な地域連帯感の稀薄化や情報多様化に必ずしも対応しきれない学校環境と教育方針の不徹底さも必然的に地域教育力の相対的低下を招いている。第3に青少年自体の発達の問題がある。一般に青少年の身体発達は戦後大幅に改善され,体格体位はおおむね向上したが,精神的発達や人格形成面とは著しいアンバランスが生じていると指摘されて久しい。ことに人格形成の過渡期にあたる青年前期としての中学生は自我の芽生えによる反抗期であり,情緒面で不安定になりがちで,青少年犯罪の過半数がこの期に集中している。犯罪の多発傾向は,青少年の年齢別人口比とも関係がある。1949年(昭和24)ごろの第1のベビーブームは,1964年ごろの中学生となっており,図2にみられるように戦後の青少年犯罪の第2のピークを形成し,人口比の推移と平行関係にあって,現在おとずれつつある第2のベビーブームは,戦後の第3の青少年犯罪のピークを形成しつつある。図2を詳細に検討すると,犯罪の第3のピークは実数において著しい増加がみられるものの,当該人口比との関係では第2のピークにおける人口比と比べ幅が小さくなっており,青少年対策と補導の効果が現れつつある。
【対策】青少年を取り巻く環境の浄化については,1949年の政府の要請により,1950年岡山県が不良図書を取り締まり対象とした青少年保護育成条例を初めて制定してから,1971年には31都道府県がこれの制定と取り締まりを行っている。しかし,表現の自由(憲法21条)との関係もあり,十分な効果をあげているとはいえない。今日,社会教育や福祉行政の面からもさまざまな予防対策と地域精神衛生活動による指導と対処法が推進されつつある。青少年の健全育成のためには司法・行政と各種機関の有機的な連繋が重要である。この点からいうと,まず少年警察活動では,少年係警察官や婦人補導員らの警察職員のほか,民間有志による少年補導員と少年警察協助員が全国で5万人あまり委嘱され,少年補導活動・少年相談活動・社会参加による規範意識の啓発活動が行われている。
青少年健全育成の国の施策としては総理府青少年対策本部が中心となって家庭・学校・職場以外での青少年の学習活動の奨励施策,団体・グループ活動の促進,文化活動の奨励,体育・スポーツの普及・振興,各種健全育成施設の整備,青少年指導者の養成など積極的な対策がすすめられている。
〔参考文献〕総理府青少年対策本部編『青少年白書中58年度版』1984,大蔵省印刷局
小林利宣編『教育相談の心理学』1984,有信堂
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