●般若心経 はんにゃしんぎょう
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摩訶般若波羅蜜多心経と称し,略して般若経・心経といい,現行経は玄奘が649年に訳したもの。経名は梵語に漢字音をあてはめたもので,彼岸にいたるための偉大なる智慧の肝要を示す経の意味。経の内容は,観自在菩薩が舎利子のために一切の存在は皆空であると説くのであるが,経中の〈色即是空,空即是色〉の文句はよく人口に膾炙している。また経末に記される呪文「掲帝掲帝 波羅掲帝 波羅僧掲帝 菩提 薩婆訶」もよく知られている。般若(智慧・叡智の意)部経典は大乗の経典で,密教の現れる前の3世紀までに姿を整えたが,その最大のものは「大般若経」1部600巻である。「般若心経」の説くところは,この「大般若経」第403観照品や「大品般若経」第1習応品の所説と類似しているので,上記の大部の経典を抄略してこの小経がつくられたものと考えられる。262字の経文は諸経のなかで最も短いため,暗誦も書写も容易であって古来から多くの人,とくに俗人に愛好された。正倉院には出家をめざす優婆塞40人の教学内容を示す文書が存するが,学習した経典の順位は[1]最勝王経,[2]法華経,[3]般若心経である。[1][2]は出家のさいにその暗誦程度が試験された必修経典であったから,般若心経こそ自発的に学習され愛好された経典であったといえる。孝謙朝の758年(天平宝字2)と光仁朝の774年(宝亀5)に,心経の念誦を奨励する勅が発せられ,その功徳として,天子の場合は武力動乱の災いが国内に入らない,庶人の場合は流行病の災いが家内に入らないとのことがのべられ,当時の人々の心経に対する期待がどこにあったかを知ることができる。心経は現在の各宗派で重んじられ,天台宗・真言宗・曹洞宗では在家勤行の一つとして,また黄檗宗では葬儀のさいの枕頭回向に誦されている。最近各地で写経会が盛んに行われているが,そこでは心経が写される場合が多い。
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